今年は、迫り来る社会変動の予感の中で、日本と私たちがどのような未来を目指すべきかということを中心に言葉の森の運営を考えてきました。
そのために、昨年に引き続きさまざまな企画を行いました。それは、プレゼン作文発表会、自習検定、自然寺子屋合宿、幼児作文コース、寺子屋オンエアなどです。
その中で、今後の大きな方向は、かなりはっきりしてきました。
第一は、日本は文化的大国になり、その文化を自立した個人が支えるという構図です。
第二は、その文化の中心となるものは、創造的な教育だということです。
第三は、創造教育の前提として、本質教育、実力教育、文化教育を進める必要があるということです。
第四は、それらの教育は、ネットを媒介として家庭と地域によって担われるものになるということです。
そして、この新しい教育を進めるために、言葉の森の作文指導と寺子屋オンエアの全教科指導を結びつけ、それを将来森林プロジェクトに結びつけていくという展望を考えています。
日本は幸いなことに、この未来の理想の社会に近い姿を、既に江戸時代に実現していました。
江戸時代に日本に来た西洋人が一様に驚いたことは、子供たちがどこでも喜びあふれる様子で遊んでいる姿でした。しかも、この時代の日本の教育は、識字率の普及に見られるように、当時の西洋の教育よりもはるかに進んだものでした。
そして、教育だけでなく、社会も文化も、当時の日本はヨーロッパよりも多くの点で進んでいたのです。
しかし、この江戸時代の社会は、科学技術と政治体制の分野に関してヨーロッパに大きく後れを取っていたため、いったん否定されなければなりませんでした。
そして、明治維新で西洋の文化を取り入れて再出発した日本は、先の戦争で再度その文化を否定されました。
しかし、この二度の否定と再出発によって、現在の日本は、欧米の文化を自身の文化と同じように消化できるようになっています。
だから、これから行われる日本文化の復活は、欧米の文化を包み込む、よりグローバルなものになると考えられるのです。
現在の西洋の先進国は、政治も経済も文化も教育も、多くの点で行き詰まりを見せています。しかし、新興国や途上国は、その先進国の後を追っているだけですから、経済の発展以外に新しいビジョンはありません。
日本も今は西洋の先進国の一員ですから、西洋の抱えている問題と同じ問題を抱えています。しかし、日本には西洋にはない過去の日本文化の遺産があります。
この日本文化の遺産を、現代の科学技術の中で再発見することが、これからの日本の、そしてたぶん世界の進む道になります。
言葉の森も、この大きな歴史の流れの中で、その流れを進める一助となるような仕事を進めていきたいと思っています。
この一年間、皆様いろいろありがとうございました。