ログイン ログアウト 登録
 これからの世の中と子供の教育 その3 Onlineスクール言葉の森/公式ホームページ
 
Onlineスクール言葉の森・サイト Onlineスクール言葉の森
記事 2397番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2025/11/14
これからの世の中と子供の教育 その3 as/2397.html
森川林 2015/08/06 18:07 


●創造的な小船の時代に対応する教育

 これからは、大きい船に無理をして乗る必要はありません。むしろ大きい船ほど今後リストラの風雨にさらされる可能性があります。
 中ぐらいの船であっても、地域のリアルなニーズに結びついた、簡単には沈没しないものであれば、その方が安全で楽な航海ができます。
 しかし、ベンチャーという小船は、乗るようなものではありません。むしろ、自分でその小船を作る時代になってきます。
 自分で作った小船を、地域と人間とのつながりの中で安定したものにしていくと、それは家業になります。また、自分の小船の個性を磨き、誰もが真似できないものにまで高めていけば、それはひとつの道になり、その小船を作った人は、宗家や家元と呼ばれるようになります。
 大きな船が工業製品で世界の経済を牽引していた時代のあとに続く時代は、このように小さな船が無数に創造を生み出していく時代なのです。
 海を渡る大きな船の時代から、川を上り支流に分け入る創造的な小船の時代へという変化の中で、子供たちの教育もまた小船に対応していく必要があります。大事なことは、単に小さいことが目標なのではなく、創造的であることが目標だということです。

●野生の植物から繊維を取る話

 先日、面白い話を聞きました。野生の植物から繊維を取り、それを編んで、カゴなどを作っている人の話です。栽培されていない自然のさまざまな植物から、その植物と対話をしながら繊維を取っているのだそうです。
 カゴなら百円ショップでいくらでも手に入ると考えるのは、物の時代の発想の名残りです。今はまだ物の発想で考える人の方が多い時代ですが、広い世の中には、植物との対話や自分で取った繊維で自分の好きなカゴを作るということに心を動かされる人がいます。そういう少数の人のニーズとうまく組み合わせる工夫をすれば、そこにひとつの小船が生まれます。更に、植物との対話という不思議な世界を追求していけば、それはやがてこれまでの華道や茶道や俳句や短歌の世界のように、草道として成り立つような道の文化になる可能性があります。
 こういう流れの根底にあるものは、自分の興味関心です。今の世の中で何が売れるかとか、どういうニーズがあるかというマーケティングが先にあるのではなく、自分が何を好きで何に心を奪われるかという自分自身のシーズが先にあるのです。
 そのシーズを掘り下げていくと、同じように自分のシーズを掘り下げている他の人々と出会い、そこに新しいマーケットが生まれるという社会になりつつあるのです。

●東大の推薦入試の背景にあるもの

 東京大学の2016年度の推薦入試は、100名の募集で、全国の高校から男女各1名までの推薦を受け、秋からレポートや面接で個性のある若者を選抜していくという仕組みです。肝心の学力は、センター試験8割の得点で担保するということになっています。これは、大学がこれまでの入試ではやっていけないという危機感を持ったから生まれた新しい入試システムです。
 大企業、官僚、医師、弁護士などいわゆる大きな船に乗る手前に、東大などの有名大学があります。だから、そういう大学もまた大きな船です。
 その船に乗るための橋は1本で、そこに多くの乗船希望者が集まるので、必然的に競争が生まれます。適度な競争は人間の向上に役立つので、受験という競争は基本的に肯定されるものです。しかし、その競争に大人が関わり、塾や予備校が関わり、さまざまな受験テクニックが関わってくると、競争は本来の学力の向上からはずれ、科挙化した競争に変わっていきます。
 受験というものは、もともと答えのある世界ですから、正しい方法で取り組めば誰でも合格できるようになるものです。あとは、そこにかけた時間に比例して点数の差がついてきます。
 今のように塾や予備校に管理された受験体制になると、人に言われたことを言われたとおり忠実に実行する人の成績が最も上がります。その結果、東大などの有名大学に、勉強しかできない人が入るようになってきたのです。
 勉強以外の個性的なものはあまり育っていないので、答えのあるテストはできるが、答えのないところで自ら創造することができないという学生が次第に増えてきたために、推薦入試という新しい入試選抜制度を試みざるを得なくなったのです。

●センター試験8割の勉強の先にあるものは個性

 もちろん、何をするにも学力は必要です。勉強は人間生活のすべての基本ですが、それはセンター試験の8割で担保される学力で十分なのです。
 これまでは、この8割を9割や9割5分にすることが勝敗の基準となっていました。しかし、8割を達成するのに必要な時間が、仮にわかりやすく80だとすると、それを9割にまで持っていくための合計時間は90ではなく、100にも150にも200にもふくらんでいくのです。これが受験の弊害です。
 もちろん、現在の子供たちの多くは、8割まで達成していないので、受験の弊害どころかもっと受験のような真剣味のある勉強を強化する必要があります。しかし、その8割の勉強の先にあるものは、9割や9割5分ではなく、8割の上に成り立たせる個性なのです。


日本語作文検定
英検、漢検、数検に続く第四の検定試験 日本語作文検定。
全国初、小1から高3までの系統的な作文指導と客観的評価。
 

コメント欄

コメントフォーム
これからの世の中と子供の教育 その3 森川林 20150806 に対するコメント

▼コメントはどなたでも自由にお書きください。
となにぬ (スパム投稿を防ぐために五十音表の「となにぬ」の続く1文字を入れてください。)
 ハンドルネーム又はコード:

 (za=森友メール用コード
 フォームに直接書くよりも、別に書いたものをコピーする方が便利です。
同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
未来の教育(31) 言葉の森のビジョン(51) 
コメント1~10件
森リン大賞9月 森川林
 従来の作文評価は、小学校低学年では「正しい表記ができている 11/9
記事 5382番
作文の学習で大 森川林
 「何でも自由に書いてごらん。いつでも褒めてあげるから」とい 11/7
記事 5381番
【合格速報】日 森川林
K.Aくん、おめでとう!! 小学生のときから、時どき脱線を 11/6
記事 5380番
ゆとり教育、フ 森川林
今はやりの探究学習も、生徒のレベルが高いところではうまく行く 10/20
記事 5372番
「この世」と「 匿名
温かいコメントをありがとうございます。 ゆめもあの世で読ん 8/21
記事 5359番
「この世」と「 かささぎ
ゆめちゃん 亡くなられたのですね。 ゆめ日記好きでした。お 8/18
記事 5359番
昔テレビで一億 森川林
最近の研究では、ゲームは頭をよくするということが言われていま 7/17
記事 2968番
昔テレビで一億 匿名
最新の医学研究でYouTubeを筆頭としたスマホコンテンツが 7/10
記事 2968番
掛け声だけでな 森川林
 あおさん、ありがとう。  読書会、確かにいいですね。 6/12
記事 5344番
掛け声だけでな あお
読書会っていいと思います。私は2年ほど前から地域の読書会に入 6/10
記事 5344番
……次のコメント

掲示板の記事1~10件
画像送信テスト 森川林
回回回 11/2
森川林日記
Thunder 森川林
https://www.thunderbird.net/ja 10/29
森川林日記
この忙しいとき 森川林
この忙しいときに、というかいつも忙しいけど、今は特にというと 10/28
森川林日記
もう二度とGm 森川林
 Gmailが突然、大量のPOP3は受信できないようにした。 10/28
森川林日記
2025年10 森川林
△ミズヒキグサ ●紙ベースの勉強が基本。デジタルの 10/22
森の掲示板
3I/Atla 森川林
それは、いい結果になるだろう。 10/2
森川林日記
SDGsとかL 森川林
SDGsとかLGBTQとかいう新しい言葉を使う人は、考えの浅 9/27
森川林日記
千葉県立千葉中 森川林
受験生に点数の差をつけるためだけのテスト。 横浜市立南 9/25
森川林日記
2025年9月 森川林
●家庭学習の習慣を  小学生のうちから家庭学習 9/22
森の掲示板
OCRのオシロ 森川林
今からOCRのオシロンの作り直し。 これまでgoogl 9/20
森川林日記

RSS
RSSフィード

QRコード


小・中・高生の作文
小・中・高生の作文

主な記事リンク
主な記事リンク

通学できる作文教室
森林プロジェクトの
作文教室


リンク集
できた君の算数クラブ
代表プロフィール
Zoomサインイン