ログイン ログアウト 登録
 日本語が学力の中心――帰国子女の日本語教育と暗唱学習 Onlineスクール言葉の森/公式ホームページ
 
Onlineスクール言葉の森・サイト Onlineスクール言葉の森
記事 2469番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2024/11/22
日本語が学力の中心――帰国子女の日本語教育と暗唱学習 as/2469.html
森川林 2015/11/16 11:08 


 海外で暮らす日本人のいちばんの悩みは、子供の日本語教育だと思います。
 多くの家庭は、両親と話すときは日本語を話すとか、できるだけ日本語のyoutubeなどの番組を見るとか、日本語の本を読むとかの工夫をしているようです。
 近くに日本語学校がないようなところほど、家庭での取り組みは意識的で、それがかえって好結果を生んでいるようです。

 親は普通に日本語の読み書きができるので、言葉というものは自然に身につくものだと思いがちですが、子供時代の言語習得は環境に左右されています。
 特に、小学校1年生から3年生の時期は、言語脳が決定される時期で、その時期に日本で暮らしている子は日本語脳になり、海外で暮らしている子はその現地の言語脳になると言われています。

 この小学1年生から3年生の時期に、現地の言葉とは異なる言語脳を形成することができるかどうかということはまだ研究も実践も行われてていませんが、私は、日本語の音読暗唱教育がその鍵を握っているのではないかと思います。

 語学を意識的に学べるのは、小学校4年生から6年生にかけてで、この時期の言語習得は、既に言語脳が決定されているために、より小さい時期の言語習得よりも苦労はありますが、その代わり読み書きも含めた使える言語力が身につくようです。

 日本では、以前中学1年生からの英語教育が行われていましたが、中学1年生になるとその言語の感覚を身につけることが難しくなるので、その点で英語の小学校高学年からの導入は合理的な政策だと言えます。
 しかし、幼児期や小学校1~3年生の英語教育は、これに対して、弊害の方が圧倒的に多いので、この時期の違いを明確にした英語教育を行うことが必要です。

 日本語脳とその他の言語脳の違いは、端的に言えば、虫の声や波の音などの自然音を左脳で言葉として聞けるか、右脳で雑音として処理してしまうかの違いです。
 この違いが、将来どのように影響するかという研究はまだ進んでいませんが、私は、自然との共感のしやすさというところに差が出てくるのではないかと思います。
 例えば、枕草子に、「春はあけぼの。やうやうしろくなりゆく山ぎは、すこしあかりて、紫だちたる雲のほそくたなびきたる……」という文がありますが、このように自然の情景をそれだけで取り上げて文学にするという伝統は日本にしかないようです。

 この自然への共感は、動植物や人間への共感にも及んでいます。
 日本人が、一般に、争いの嫌いな穏やかな民族であるのは、他人との共感度が高いからです。他人を自分とは無関係な物のような他人として見ずに、自分と同じ感情を持った人間として見てしまうのです。
 日本では、例えばペットの犬を断尾又は断耳する習慣がなかったのは、動物や植物や昆虫などに対してもその共感が働いていたからです。

 この共感力は、更に学問に対しても発揮されます。
 日本以外の国では、物事は対立の中から発展すると考えられています。対立と競争と勝敗を経て、より優れたものが生まれるというのが、諸外国のものの考え方の基本です。
 日本では、この反対に、調和の中でものごとが発展すると考えられています。異なる二つのものが遭遇した場合、互いに相手の長所を認め合い、自分の中にその足りないもの作り出すことが創造の基本になっているのです。
 日本が多くの外来文化を自国の文化の中に取り入れることができたのは、この共感と調和の考え方が日本文化の土台になっていたからです。

 ここから、日本人が科学技術の世界でも優れた業績を残している秘密が明らかになると思います。
 日本人は、科学や技術の対象となる物理的実体に対しても、人間に対するのと同じような共感力を持って接するようなのです。
 オリンピックで使用された世界一の砲丸の球は、日本の町工場で作られていましたが、その作る技術の基本は、音や手触りのような共感の感覚にありました。
 日本の霊長類研究が世界に先駆けて進んだのは、対象となるサルに名前をつけて呼ぶという発想があったからです。欧米では、サルは単なる物としての対象で、名前をつけて呼ぶということは考えられなかったのです。

 この共感力は、勉強に対しても発揮されていると思います。
 言語というものは、一人の人間の中で比較することはできないので、そういう研究はまだ進んでいませんが、日本人の学力が高いのは、日本語の力による面がかなりあると思われます。

 この意味で、海外で暮らす日本の子供たち、特に小学1年生から3年生にかけての子供たちの日本語教育は、きわめて重要だと思います。
 言語の習得の基本となる場は、地域と家庭であって、学校ではありません。現地という地域で日本語が使えないのであれば、その分を家庭で補っていく必要があります。
 そのひとつの方法が、日本語の毎日の音読暗唱学習になると思います。

 今、言葉の森では、幼長から高3にかけての暗唱長文集を全面的に作りなおしています。
 また、暗唱チェックの方法も、電話だけでなくskypeやgoogleハングアウトを使って確実に行っていきたいと思っています。その理由は、電話ではつい元の文章を見て言ってしまうということもあると思うからです。
 更に、暗唱の文章の分量も、900字だけでなく、その5倍の4500字を目標にしていこうと考えています。900字の暗唱は約2分でできますから、4500字の暗唱にかかる時間は約10分です。これは、決して難しいことではなく、むしろ慣れてくれば楽しい勉強になるはずです。



コメント欄

touko 2016年11月28日 21時33分 77 
「日本語もしっかり身につけてほしい。」
海外在住の日本人家庭にも、現地で暮らすミックスのママorパパたちにも。
毎日少しずつできる勉強法です。

コメントフォーム
日本語が学力の中心――帰国子女の日本語教育と暗唱学習 森川林 20151116 に対するコメント

▼コメントはどなたでも自由にお書きください。
つてとな (スパム投稿を防ぐために五十音表の「つてとな」の続く1文字を入れてください。)
 ハンドルネーム又はコード:

 (za=森友メール用コード
 フォームに直接書くよりも、別に書いたものをコピーする方が便利です。
同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
暗唱(121) 帰国子女(12) 日本語脳(15) 
コメント1~10件
読解問題の解き Wind
面白かった 10/11
記事 4027番
長文の暗唱のた たろー
この世で一番参考になる 9/30
記事 616番
「桃太郎」を例 匿名
役に立った 8/15
記事 1314番
日本人の対話と 森川林
ヨーロッパの対話は、正反合という弁証法の考え方を前提にしてい 8/6
記事 1226番
日本人の対話と よろしく
日本人は上に都合がよい対話と言う名のいいくるめ、現状維持、そ 8/5
記事 1226番
夢のない子供た 森川林
「宇宙戦艦ヤマトの真実」(豊田有恒)を読んだ。これは面白い。 7/17
記事 5099番
日本人の対話と 森川林
 ディベートは、役に立つと思います。  ただ、相手への共感 7/13
記事 1226番
日本人の対話と RIO
ディベートは方法論なので、それを学ぶ価値はあります。確かに、 7/11
記事 1226番
英語力よりも日 森川林
AIテクノロジーの時代には、英語も、中国語も、つまり外国語の 6/28
記事 5112番
創造発表クラス 森川林
単に、資料を調べて発表するだけの探究学習であれば、AIでもで 6/27
記事 5111番
……次のコメント

掲示板の記事1~10件
2024年11 森川林
●サーバー移転に伴うトラブル  本当に、いろいろご 11/22
森の掲示板
現在森リンベス 森川林
このあとの予定。 ・森リンベストを直す(直した) ・森リ 11/20
森川林日記
Re: 入会手 言葉の森事務局
 お世話になっております。  弟さんのみご入会が1週間 11/15
森の掲示板
入会手続きにつ やすひろ
お世話になっております。 個別掲示板を開けませんので、ここ 11/15
森の掲示板
Mr. 1
1 11/14
森の掲示板
Mr. 1
1 11/14
森の掲示板
Mr. 1
1 11/14
森の掲示板
Re: 項目の 1
> いつもありがとうございます。 > > こすほ 11/14
森の掲示板
Re: 項目の 1
> いつもありがとうございます。 > > こすほ 11/14
森の掲示板
Re: 項目の 1
> いつもありがとうございます。 > > こすほ 11/14
森の掲示板

RSS
RSSフィード

QRコード


小・中・高生の作文
小・中・高生の作文

主な記事リンク
主な記事リンク

通学できる作文教室
森林プロジェクトの
作文教室


リンク集
できた君の算数クラブ
代表プロフィール
Zoomサインイン