子供が勉強している様子を見ると、すぐに気が散ったりぼんやりと考えていたりと、親から見て集中力のない様子が感じられるときがあります。
早く済ませればできるのに、長い時間をかけてやっているというのには、どういう原因があるのでしょうか。
第一は、早く終わると追加の勉強をさせられる可能性があるというケースです。
予定の勉強が早く終わったからといって、一度でもそこで追加する勉強をさせると、子供はそのことをよく覚えていて、なるべく早く終わらせないように時間をかけてやるようになるのです。
特に、作文の勉強は、そのときのテーマによってかかる時間がかなり違います。
しかも、作文は、ほかの勉強と比べるとかなり頭脳を使います。
作文の勉強のあとは、ほかの勉強はしないで、せいぜい読書ぐらいにとどめておくといいのです。
第二は、ページ数などを決めてやらせるのではな、く時間を決めてやらせるような勉強になっていることです。
時間が経てばおしまいという形にすれば、自然にその時間の範囲をなるべく楽に過ごすようになります。
親の立場としては、時間で決めた方が管理しやすいですが、子供にとってはその時間は一種の奴隷状態の時間です。
時間の枠を決められると、自分で工夫して能率よくやろうという気にはなれないのです。
第三は、これがいちばん多い原因だと思いますが、勉強する時間が長すぎるか、勉強する量が多すぎることです。
子供は、すぐに終えられるものだと思えば、早く終わらせて、あとは自由に遊びたいと考えるはずです。
ところが、目の前に膨大な量の勉強があったり、長い時間が待ち受けていたりすると、どうしてもすぐに取りかかる気にはなれないのです。
これも、特に作文の勉強の共通することですが、ひとまとまりの作文を書こうとすれば、大体1時間はかかります。
小学校高学年や中高生で、いい文章を書こうと考える生徒は1時間半かかります。
社会人の方が作文の練習をする初めのころは、大体3時間かかります。
作文の勉強は、今日は30分だけ書いて、明日は続きの30分を書くというわけにはいきません。
だから、作文の勉強を始める前は、多くの子が、ちょっと本を読んだり、ちょっと手遊びをしたりして、心の準備をしてから取りかかるのです。
作文の勉強の場合は、長くかかるのはやむを得ません。
その代わり、続きを翌日に持ち越すようなことはせずに、その日に書き終えるところまで行かなければ、「(つづく)」と書いてそれで終了にした方がいいのです。
この場合、「つづき」を書く必要はありません。
書く見通しを考えたことが勉強の中身ですから、最後まで書き上げられなくてもいいのです。
話は少し飛躍しますが、この書くことに時間がかかる問題を、将来は音声入力でカバーできるようにしたいと思っています。
やり方は、まず作文の構想図を10分か15分で書きます。
この構想図を書く過程が考える勉強ですから、作文の中身のいちばん大事なところです。
そのあと、その構想図をもとに音声入力をします。
音声入力は、考えながらゆっくり話すので、普段の会話の3分の1から5分の1のスピードです。
すると、10分で1000字程度の文章になります。
今は、人工知能で音声がかなり正確にテキスト化されるので、手直しは句読点をつけるぐらいです。
欧米の言語では既に句読点を自動的につける機能があるようですが、日本語にはまだ対応していません。
しかし、これは技術的には簡単なことなので、いずれ日本語の音声入力にも句読点が自動的につくようになると思います。
このようにすれば、考える時間も、手直しの時間も含めて、それまで1時間から1時間半かかっていた作文を30分弱で仕上げることができるようになります。
これは、いずれオンライン講座としてやっていきたいと思っています。
さて、話を戻して。
作文の勉強の場合は、ひとまとまりの作文を書くのに時間がかかるのは、今の段階ではやむをえません。
しかし、他の勉強に関しては、小学生のうちはあまり長時間勉強させないことが大事です。
なぜなら、長時間勉強に取り組む動機が、まだ小学生には自分の中にないからです。
子供が成長して中学3年生の受験期になったり、高校生になり大学入試に取り組む時期になったりすれば、誰でも自然に集中力を発揮するようになります。
その時期の自分の内側から湧き上がった集中力が本当の集中力で、小学生の間はもともとそういう集中力がないのが本来の姿です。
ですから、小学生の間の勉強はなるべく短時間で終わるものにして、親は、子供が勉強などに集中せずに気を散らす方がむしろ自然だと思って、もっと手を抜いた勉強の仕方をしていくといいのです。
ちゃんと育っている子であれば、必要なときには必ず集中力を発揮します。
今集中力がないのは、まだそういう場面やそういう時期でないからなのです。