今の試験は、基本的に記憶力の試験です。考える問題もあると言う人がいるかもしれませんが、考える問題というのも、結局は考え方や解き方を記憶して知っている者だけが時間内に解けるという試験です。
だから、記憶力のあるなしが試験勉強に大きく影響します。
もちろん、記憶力の試験だとはいっても、単純に特定の知識を覚えているかどうかを見るような試験ではありません。
複数の解き方を記憶して、更にその解き方の組み合わせ方を記憶するというようなより複雑な試験です。
しかし、基本は記憶力の試験なのです。
その記憶力を高める勉強として最も効果のあるのが暗唱です。
小学校低学年から暗唱の練習をしていると、文章のリズム感がついてきたり、難しい語彙を読み取る力がついてきたり、毎日一定の時間(10分程度ですが)勉強する習慣がついてきたりと、いろいろな効果があります。
それらの効果の中でも、特に重要なのが、覚えることが苦にならなくなるということです。
試験の準備などで覚えることが多いと、普通、ほとんどの子は嫌がるものですが、暗唱に慣れている子は、それを特に負担だとは思いません。むしろ、覚えることが楽しいという感じになることも多いのです。
それは、読んだことがすぐに頭に入るという脳の仕組みになっているからだと思います。
日本では、江戸時代まで四書五経の素読の教育が行われていました。
明治、大正時代以降も、家庭によっては、湯川秀樹氏の家のように六歳からの素読の教育が行なわれていました。
しかし、戦後の教育の中で、素読や暗唱は、理解する勉強の妨げになるとして排除されてしまったのです。
そのために、かえって日本の子供たちの総体的な学力が低下しました。
理解する勉強には、落ちこぼれになる子がいます。
しかし、素読の勉強には、落ちこぼれになる子はいません。
誰でもそれぞれに自分のできることができ、しかも、中には極めて高いレベルまで進む子もいるのです。
今の大人は、すべて戦後の理解を先行させる教育の中で育ってきたので、音読を繰り返すとか、何かを記憶するとかいう勉強を一段低いもののように見る傾向があります。
しかし、九九の暗唱が日本人の計算力の基礎となっているように、低学年からの暗唱の勉強は実は学力全体のきわめて広範囲な土台となっているのです。
言葉の森の暗唱長文集は、ホームページのリンクにあります。
どなたでもごらんになれます。