保護者の方から、自習の暗唱がなかなか進まないという相談を受けました。
3.4週と4.1週の低学年の長文に関しては、文章が難しかったので、読みにくかった面もあります。難しくてなかなか読めない場合は、1週間で300字という字数の目標をもっと短くしてもかまいません。
暗唱ができない理由の一つに、家族の協力がない、意義がわからない、などもあるようです。
お母さんが毎日子供たちに暗唱させようとしても、お父さんがあまり協力的でないと、毎日続けるのが難しくなることもあります。また、お父さんが熱心でもお母さんがあまり熱心でないという逆の場合もあります。今のお父さんお母さんの世代は、子供時代に暗唱という形の勉強をあまりしていないので、子供が同じ文章繰り返し読むというスタイルの勉強していると、違和感を感じることもあると思います。
そこで大事なことは、暗唱の形にあまりとらわれず、やりやすい方法で暗唱できるようにしていくということです。そのためには、お父さんやお母さん自身も、自分で何度か100字10分間、又は1週間で300字の暗唱の練習をしてみるといいと思います。そうすると、暗唱の練習でどこか難しくどこか面白いのかということが実感として分かってきます。そうすれば、子供に対する働きかけも、実態に合ったものになっていくと思います。
暗唱の仕方は、多少弾力性があっても構いません。毎日暗唱するのが原則ですが、土日は遅く起きてくるので暗唱ができないということであれば、あらかじめ土日は暗唱ではなく読書をすると決めておいてもいいのです。また、子供によっては、100字を10分間暗唱するよりも、最初から300字を全部暗唱する方がやりやすいという子もいると思います。そのようにある程度臨機応変に取り組んでいってください。
暗唱はゆっくり読むよりも早口で読んだ方が回数が増えるので覚えやすくなります。極端に言うと、聞き取れないような早口で読んでもかまいません。そして、そのような早口で読んでいても、その結果すっかり覚えてしまえば、それからは普通の速度で読んでいけばいいのです。このように、形にとらわれず内容本位の暗唱をするためにも、お父さんやお母さんが何度か自分で暗唱の経験をしてみるといいと思います。
俳優がセリフ覚えるときは、声を出さずに覚えると言われています。しかしそれは、セリフの内容を覚えて場面に合ったセリフを言うことが目的だからです。暗唱は、内容を覚えるものではなく表現を覚えるものですから、音読で覚えていくのが原則です。
文章を数回読むだけの音読の勉強は、一般につまらない勉強になりがちで、どうしても反復する回数が減ります。それに対して、暗唱の勉強は、暗唱ができたときに達成感があるので、反復の回数が増えます。ここで、大事なことは、暗唱は覚えることだけが目的ではないということです。覚えることを目標にして反復して読むということで、実は反復することが本当の目的です。ですから覚えたらおしまいというのではなく、覚えても10分間は読み続けて、覚えたものをさらに楽々と空で読めるようにしてください。
暗唱によって右脳が開発されるという理論があります。短い文章は左脳で理解しながら読むのに対し、長い文章は大量に読むと左脳では処理しきれなくなるので右脳の方に直接入るというのです。しかしこの理論は、実際に確かめられているわけではありません。私は、この考え方よりももっと単純に、長い文章を何度も読むことによって、処理できる文章の単位自体が大きくなるのではないかと考えています。つまり、短い文章をつなげて理解するのではなく、長い文章を長い文章のまま理解する力がついてくるのだと思います。
そろばんなどは慣れてくると、超人的なスピードで計算することができるようになります。暗唱も同じです。最初は、誰が読んでも同じぐらいの量を同じぐらいの時間でしか暗唱できませんが、暗唱の勉強を重ねるにつれて、数回読めば数十ページ暗唱できるというような力が育ってくるようです。
現在、記憶術という方法がはやっています。これは、記憶する技術を利用して物を覚える方法です。しかし、記憶術で記憶力がよくなるのではありません。暗唱の勉強はこの記憶術のような勉強ではなく、記憶力を育てる勉強です。逆説的ですが、記憶力を育てるためには、覚えることを目的にするのではなく、何度も繰り返して読んで、読み取る文章のひとまとまりを長くすることに慣れていくことです。
暗唱がなかなかできないという子は、覚えることを目的にしているために、かえって読む回数が少なくなっていると思います。覚えようと思わずに、100字の文章をただ10分間、又は30回繰り返して読めば、ほとんどの子はいつの間にかその文章を覚えてしまいます。暗唱は、そのような単純な勉強として取り組んでいってください。
(この文章は、構成図をもとに音声入力した原稿をamivoiceでテキスト化したものです)
マインドマップ風構成図
記事のもととなった構成図です。
(急いで書いたのでうまくありません)