白梅
作文指導で大事なことは、「ほめて伸ばす」ことです。
文章を書くのが得意な先生や保護者が、子供の作文指導をすると、最初はほとんどの人が、「ここは、もっとこうしたらいい」とアドバイスをしてしまいます。
子供は、自分なりにがんばって時間をかけて書いた作文に、そういうアドバイスをされると、「自分の書いた作文はダメだったんだ」と思います。
ここが、教える人と教わる人との感覚の違いです。
そうして、アドバイスをされ続けて、やがて子供は作文が苦手になるのです。
文章を書くのが得意なお母さんや、作文指導が得意な先生に教わると、多くの子が作文嫌いになるのはそのためです。
では、どうしたら作文が上手になるかというと、その方法は三つあります。
第一は、書き続けることです。
長い間、作文を書き続けていれば、時間はかかっても、誰でも少しずつ上達します。
早く上手にさせようと指導して、子供が作文を書くのをやめてしまっては元も子もありません。
だから、褒める指導が大切なのです。
第二は、読書に力を入れることです。
書く力のもとになっているものは、読む力です。
例えば、会話の改行のある本をまだあまり読んでない小学1年生に「会話の改行」のルールを教えるとしたら、それだけで1年近くかかることもあります。
常体と敬体の区別がなかなかできない生徒は、常体で書かれている本をあまり読んでいません。
小学校の教科書は、小4までは敬体中心で書かれていますが、小5からは常体で書かれている文章の方が多くなります。
考える文章は、一般に常体で書かれています。
そういう文章を読む経験の少ない子は、常体と敬体の区別がつきにくいのです。
作文の体験学習のとき、小学校低中学年でも最初から常体で作文を書く子がいる一方、中学生や高校生でも、最初は敬体で書く子がいます。
これは、その子の作文以前の読書のレベルを反映しています。
作文を書く力のもとになっているものは、本を読む力なのです。
第三は、作文の事前指導です。
実は、これが、最も大事です。
例えば、「たとえを使って書こう」とか、「身近な人に取材して、話を立体的にしよう」とか、「結びの思ったことは、自分らしく長く書こう」とか言えば、子供はその方向で努力します。
それは、指導の内容が具体的だからです。
子供が、褒められて嬉しいのは、自分の努力が認められたときです。
ただ単に褒められたから嬉しいのではありません。
褒めることの基本は、事前指導とセットになっていることです。
作文の通信添削の弱点は、ほとんどの場合、指導する人と添削する人が別の人であることです。
すると、添削する人は、事前指導なしに褒めることしかできません。
子供は、自分の努力に基づかない褒め方をされると、最初はうれしく思うものの、やがて褒められることに飽きてきます。
だから、事前指導なしの褒めることが通用するのは、小学校低学年までなのです。
話は変わって、今日の朝日小学生新聞に、作文通信教育講座のブンブンどりむが、カラーの広告を載せていました。
この広告でも、「ほめて伸ばす作文添削」となっています。
確かに、これは、「直して伸ばす作文添削」よりも、ずっといい方法です。
しかし、大事なのは、褒める前提としての事前指導があるかどうかということです。
ブンブンどりむの監修者である齋藤孝さんの「こども文章力」という本は、斉藤さんの作文教育の最新の到達点だと思います。
しかし、この本の中身は、穴埋め作文の解説です。
穴埋め作文は、作文の事前指導とは違います。
これは、斉藤さんが、小中学生の作文指導というものをしたことがないからです。
少なくとも、一人の子の作文を数年にわたって教えた経験はないと思います。
▽参考記事
https://www.mori7.com/as/4864.html
言葉の森の作文指導とは、小1から高3までの継続する指導です。
事前指導があるから、長期間の指導ができます。
同じような「褒めて伸ばす○○」とは言っても、中身は全然違うのです。