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未来の学校の夢(その3)―泥棒と警察のいない国 as/1062.html
森川林 2010/11/02 11:29 


 未来の社会では、レジに人がいない店もよくあるので、自分で商品のバーコードを読み込んで、表示された金額を払ってくることも多いようです。

「少なめに払っていくなんて人はいないの」

と、僕が聞くと、

「だって、もし自分がお店をやっていて、少なめに払われたら嫌でしょう」

と、K君は当然のように答えました。「もし、自分が相手だったら」という考え方をみんなが自然にしているようです。

 警察というのも、とっくの昔になくなっているということでした。悪いことをする人がほとんどいないし、いても、みんなで事情を聞いて対処するので、警察の仕事というのがなくなったそうです。

 法律も、常識でわかるくらいのものに簡素化されて、しかも年々減っているようです。

「法律や警察がないなんて、不思議な社会だね」

と、僕が言うと、

「だって、家族の中だってもともとそんなのないじゃない。家族が広がったのが社会だと思えば、不思議なことなんてないさ」

と、K君は言いました。

「こういうのは、世界中で実現しているの」

と、僕が聞くと、これも不思議なことに、こんなふうになっているのは日本だけのようです。

 世界のほとんどの国は、まだ警察もあるし法律も複雑で、しかも争いがなかなか絶えません。だから、治安のいい日本の社会を見学しに、毎年世界中の国から視察団がいくつも来るようです。

 しかし、なぜ日本だけが、このように正直な人が多く、しかも、他人に対する思いやりのある人が多いのかまだよくわからないようでした。(しかし、その後の研究によると、左脳で感情や自然の音を処理する日本語脳にその秘密があるようだということでした)



 家の中に入って、K君としばらくおしゃべりをしているうちに、K君のお父さんやお母さんが帰ってきました。

 みんなが集まると、夕方はテレビなどを見ずに、もっぱらみんなでおしゃべりです。

 子供が小中学生のころは、父親も母親も残業や転勤がなく、いつも早く帰ることができるそうです。社会のルールでそう決まっているということでした。

 子供も、夕方、塾や習い事に通ういうことはありません。そういうのは昼間のうちに行けるからです。

 学校は、勉強を教えてもらいに行くところではなく自分で勉強をしに行くところなので、自分で自由に行く日を決めることができます。

 特別なことを勉強したり習いたいからという理由で塾や習い事に行く人は、学校の中にそういう場所があるので、そこに行きます。

 しかし、子供が自由に何をしてもいいとなると、全体の勉強のバランスがくずれてしまうこともあるので、ときどき勉強全体のコーチのような人が、子供や両親と相談して、数ヶ月のおおまかな勉強のメニューを提案します。子供は、そのメニューを参考にしながら、自分の好きなことを中心に自由に勉強や習い事の予定を組んでいます。

 だから、学校は行きたいときに行けばいいのですが、ほとんどの子供は、毎日決まった時間に学校に通います。友達といる方が楽しいし、毎日同じペースで生活した方が楽だからです。

 ところで、未来の社会の不思議なところは、子供が学校で勉強しているのと同じように、お父さんやお母さんなどの大人も、みんな熱心に勉強や習い事をしていることです。

 実は、これが未来の日本の社会の豊かさを生み出しているひとつの大きな理由なのでした。(つづく)

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未来の学校の夢(その2)―動物や植物との共存 as/1061.html
森川林 2010/11/01 11:51 


 僕は、その日、K君の家に泊まることになりました。

 家に帰る途中の道を歩いていると、街路樹に何か実がなっているようです。

 K君はジャンプしてその実を取ると、一つ僕にくれました。

 街路樹には、どこも実のなる木が植えられていて、誰でも自由に取って食べていいようです。僕はもらったカキの実にガブリとかぶりつきました。

「おなかが空いているときに便利だね」

と、僕が言うと、K君は、

「もう一本隣の道には、ナシがなっているんだ。だから、日によって通る道を変えるんだ」

と言いました。僕は、今度はナシの道を通ろうと思いました。

 K君の家に行く途中に、大きな公園があります。その公園を横切ろうとすると、1匹のヤギがついてきました。

「えー! こんなのいるの」

「うん、いろいろな動物が放し飼いになっているんだ」

 見ると、公園にはニワトリやアヒルやウサギもいます。

 K君は突然近くの草むらに入ると、しばらくして両手に卵を持ってきました。

「この草むらには、よくウズラやニワトリが卵を産むんだよ」

「そんなの、取っていいの」

「まあね」

 K君はにっこり笑いました。この卵は、夕飯のおかずになるようです。

 公園には、シートを広げて食事をしている家族もいました。

「何だかお花見みたいだね」

と、僕は言いました。

 どこの家でも、ときどきそういう外食をすることがあるようです。未来の世界では、外食というのは、ファミリーレストランに行くことではなく、戸外で食べることになっているようでした。

 そうこうしているうちに、家に着きました。

 ドアの前で、「ただいま」と言いましたが、返事がありません。まだほかの家族は帰っていないようです。

 K君は、ドアの横にある大きな木を指さしました。

「この木の枝をつたって窓から入ることもできるけど、今はあまりやらないんだ」

 確かに、大きな枝が二階の窓まで延びています。僕は、ちょっとやってみたい気がしました。

 K君は、すっとドアを開けると、「さあ、入れよ」と言いました。

「あれ、ドアは開いていたの」

「うん、カギはないんだ」

 未来の家は、どこもカギをかける習慣がないようです。

「泥棒なんていないの」

と聞くと、K君は少し考えてから言いました。

「うーん。でも、自分だって人のうちに入って泥棒したいと思わないでしょう」

「確かにそうだけど、お金に困っている人がいたら、泥棒もするんじゃないかなあ」

「それは、困っている人がいるからだよ。困っていたら、そう言えばみんなが助けてくれるから、泥棒するほど困る人はいないんだ」

 僕は、なるほどと納得しました。(つづく)

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暗唱をすると頭が良くなる(その2) as/1060.html
森川林 2010/10/31 11:38 



 では、なぜ暗唱をすると頭が良くなるのでしょうか。それは、頭脳が扱う短期記憶の入れ物が大きくなるからだと思います。

 人間が普通に一度聞いただけで記憶できる分量は、7つまでと言われています。それが短期記憶の容量です。このため、文章で言うと、7文節ぐらいまでなら一度で覚えられますが、それ以上になると一度では覚えられません。新しい文節の単位が一つ入るごとに、古い文節の単位が一つ出ていくからです。

 しかし、暗唱の場合はそうではありません。一つの文節ではなく、いくつかの文節が集まった一つの文自体が記憶の単位になっています。これは、百人一首の短歌を覚えている場合を考えてみるとよくわかります。「ひさかたの」という最初の言葉を聞いた時点で、すぐに全部の「ひかりのどけき春の日にしづ心なく花のちるらむ」までが思い出されます。この場合は35文字が一つのまとまった単位になっているということです。

 文章を理解するということは、ちょうどバケツリレーで、ひとつひとつのバケツに理解できる最小単位の文節が入っていて、それを次々と運んでいくような作業です。理解する単位が大きくなると、バケツリレーという作業自体は変わりませんが、ひとつのバケツのサイズが何倍にも大きくなるのです。

 このため、暗唱をして短期記憶のバケツを大きくしておくと、発想力も理解力も増すのだと思います。

 これは、ちょうど速読の仕組みと似ています。初めて文字が読めるようになった子供は、最初は1文字ずつ文字を読んでいきます。声に出しながら1文字ずつ読んでいき、その自分の声のつながり具合から何を書いてあったのか理解します。

 読むのが速くなると、声に出す必要はなくなり、文字のつながりをひとまとまりに理解しながら読み進めていきます。

 速読の場合は、この理解するひとまとまりが、5文字、10文字と増えていきます。フォトリーディングなど、更に速い読み方では、ひとまとまりの単位がもっと大きくなります。

 速読の場合は、読む単位を広げることですが、暗唱の場合は、理解する単位を広げる練習をしていることになるのだと思います。

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記事 1059番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2026/1/12
暗唱をすると頭が良くなる(その1) as/1059.html
森川林 2010/10/30 10:19 


 タイトルの「暗唱をすると頭が良くなる」というのは私の実感です。実感とは言っても、データの裏づけのある実感です。

 昔から、言葉の森では音読の自習をしていました。しかし、その音読をもっと徹底させたいと思っていました。

 音読は、国語力をつける効果はありますが、続けにくいということと、そして、たまに嫌々やるぐらいでは効果がないことが弱点でした。

 五分でもいいので、毎日同じ文章を繰り返して読むことが大事なのですが、そのやりかたを実行している子は、なかなかいませんでした。

 また、言葉の森で音読をしていると、同じことをほかのところでもやるようになってきました。

 音読を勧める本が出たり、学校の宿題として取り組むところが出てきたりすると、逆に音読のマイナス面も目立つようになってきました。

 それは、「子供が音読を嫌がるので、どうしたら楽に音読を続けさせられるか」というような、音読の意義よりも音読の方法を目的にしたもので、親も子もただ苦労するだけの学習になっていったのです。そのようなやり方では当然大した効果はありません。

 そこで、言葉の森では、音読の意義をさらに徹底させるために、暗唱という学習に取り組むことにしました。

 まず、自分で暗唱をしてみる必要があるので、半年ほど毎日10分の暗唱に取り組みました。

 私はもともと記憶力というものに自信がなく、聞いたことはメモをとらなければどんどん忘れていきます。たぶん、記憶力テストのようなものがあれば、学校のクラスで下から1、2位を争うぐらいだと思っていました。だから、自分にできることなら誰にもできるだろうと思ったのです。

 暗唱の練習をしてしばらくすると、新しい発想が次々とわいてくるようになりました。

 暗唱の時期と前後して、構成図で文章を書く方法や、付箋をつけながら読書をする方法もやるようになっていたので、それらが暗唱と相乗効果を発揮したのかもしれません。何しろ、急にいろいろなことを思いつくようになってきたのです。

 私は、中学生のころから日記をつける習慣があり、大人になってからは、A4サイズのルーズリーフ用紙にナンバーリングでページを入れて日記をつけていました。日記といっても、その日にあった出来事などは書かず、思いついたことをメモのように書くものです。

 毎年、年末になってページ数を見ると、1000ページ弱というのがこれまでのペースでした。しかし、暗唱を始めるようになったときから日記の量が増え、今は年間2000ページ、1日に直すと約5ページ以上も、書く内容が頭からわきでてくるようになったのです。

 また、読書の量もかなり増えたという実感があります。これは冊数を数えていないのでデータの裏づけはありませんが、読むスピードが速くなった感じです。

 たぶん今、毎日の自習をしている生徒の皆さんは、似たような感覚を持っていると思います。物事の理解が早くなり、それに関連して発想が豊かになるという感覚です。つまり、暗唱を始めて半年ぐらいたつと頭が良くなってきたという実感がわいてくるのです。

 しかし、学校の成績というものはもっと直接的なもので、テストの前にどれだけ勉強したかということに左右されます。ですから、暗唱をして急に成績が上がったというようなことはあまりないと思います。

 成績は測定できますが、頭の良さというものは測定するものがないので、目だった結果はまだないかもしれません。しかし、日記の量や読書のスピードに見られるように、発想力や理解力は増大しています。それが、長い期間の中で成績にも反映してくると思います。

 では、なぜ暗唱をすると頭が良くなるのでしょうか、ということはまた明日。(つづく)

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