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森リンによって評価される作文のうまさとは(その3) as/1086.html
森川林 2010/11/26 11:36 



 森リンの利点は、一つには作文の進歩というわかりにくいものを数値化したことです。

 もう一つは、高速大量に作文の採点ができるようになったことです。

 例えば、1000人の生徒の1200字程度の作文の採点を頼まれたとします。もしこれを人間が行うとすれば、1人の作文を2分で読むとしても30時間以上かかります。しかも、それらの作文に点数をつけるとなると、読んでいるうちに点数が甘くなったり辛くなったりしてきます。

 更に、この採点を複数の人間が分担するとなると、甘い採点の人と辛い採点の人との差がでてきます。それらを調整して一応客観的な点数を出したとしても、同じ作文を同じように別の日に採点すれば、また違った点数が出てくるはずです。

 ところが、森リンで採点を行えば、ゆっくり採点しても1人の採点にかかる時間は数秒です。文字どおりあっという間に採点が終了します。採点の妥当性を見るために、人間があとからその作文を読んで作品と森リンの点数の対応をチェックしてもいいと思います。

 これがどういうところで役に立つかというと、学校教育の中で作文の時間を大幅に増やすことができるということです。

 現在の作文教育の最大の問題は、書く機会がないことです。森リンで採点をすれば、中学生、高校生でも毎日1時間作文を書くというような授業が可能になります。



 よく、字の間違いや書き方のおかしいところも自動採点ソフトでチェックしてくれるのかという質問があります。

 実は、アメリカのソフトはその方向に進んでいるようです。それは、アメリカが多数の移民を前提にして、最低限の英語力の底上げを図ることを教育の主な目的としているからです。

 森リンにも、そういう間違いチェックの機能を取り入れることはできますが、それは教育の本来のあり方ではありません。

 正しい表記は、優れた文章を、暗唱や暗写などの方法で徹底して読むことによって身につけるというのが本道です。

 そういう教育本来の仕事をしないまま、ただ間違い探しのテストをして点数をつけ、肝心の勉強の中身は個人の努力に任せるというスタイルが今の教育にはあると思います。

 森リンは、下手な作文のどこが下手かという評価をするために作ったのではなくありません。そういうやり方であれば、中学生や高校生や大学生を何年間も継続して指導することはできません。間違いを直すというような指導ではレベルが低すぎるので、みんながすぐに退屈するようになるからです。

 森リンは、下手な作文の下手なところを見つけるためではなく、うまい作文をよりうまくするためにどうしたらいいかというもっと前向きな評価のために作ったのです。(つづく)

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森リン(103) 

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森リンによって評価される作文のうまさとは(その2) as/1085.html
森川林 2010/11/25 12:42 



 森リンの開発の動機は、作文に対する客観的な評価を行いたいということでした。

 現在の言葉の森の指導でも、項目指導という客観的な評価のできる勉強の仕方を中心にしています。しかし、項目指導では、表現の形を中心とした評価になり、中身についての評価まではできません。

 例えば、「たとえ」という項目でも、個性的なたとえを使える子と、ありきたりのたとえしか使えない子がいます。「怒った」だったら、「鬼のように怒った」、「寒かった」だったら、「南極のように寒かった」という表現です。それはそれでいいのですが、やはり少し物足りない感じがします。

 個性的なたとえを使える子は、たとえ以外のほかの文章も、自分なりに考えた表現を使って書きます。ありきたりのたとえしか書かない子は、たとえ以外のほかの文章も、やはりありきたりの表現になることが多いのです。

 そして、個性的な表現を使う子は、内容も個性的であり、平凡な表現を使う子は、内容も平凡なものになりがちです。遠足に行った話でも、「遠足に行きました。とても楽しかったです。また行きたいと思いました。」というような表現が次々と出てくる作文です。これももちろん全く書けないよりははるかにいいのですが、やはり物足りない感じがします。


 ところが、小学校低中学の作文では、この個性と平凡の差は人間が見てもはっきりしていますが、小学校高学年や中学生、高校生の作文になると、個性と平凡の表現の差は、人間の目ではわかりにくくなります。

 実際に二つの文章を読むと、一方は漠然と中身が濃いような感じがし、他方は漠然と中身が薄いような感じがします。しかし、それは漠然とした印象で、どこがその箇所なのかということは言えません。

 ですから、小学校高学年以上の文章では、上手な作文と上手でない作文の評価は漠然とした印象では言えるが、それを指導に生かすことができないという事情があったのです。指導するとしても、上手な作文を見せて、「みんなも、こういうふうに書いてみよう」というのがせいぜいでした。

 ところが、それが、森リンにかけると、はっきりとした数値としての差になって出てきます。


 子供たちの作文の森リンの点数のグラフを数年間にわたって見てみると、個々の作品の出来不出来による点数の上限はあるものの、どの子も平均して1年間で数ポイントずつ点数が上昇しています。これは、それだけその子が新しい語彙を吸収し、それを作文に生かせるようになったということです。

 もちろん、一方には、森リンの点数がほとんど変化しない子もいます。これは、学校に通って勉強は進んでいても、本当の意味での学力が向上していないということになると思います。

 このように、森リンは、作文の評価という微妙な分野をはっきりと客観的な数値として表せる方法になっています。(つづく)

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