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赤ペン添削よりも事前の電話指導(その1のつづき)  as/1233.html
森川林 2011/04/14 09:28 
 言葉の森ももうひとつの特徴は、先生が生徒に個別に対応する以外に、生徒が、お父さんやお母さんと対話をする形の勉強を重視していることです。

 例えば、作文の課題の中に、「似た話を聞いてくる」というものがあります。小学校中学年では、「いたずらをしたこと」「初めてできたこと」「大笑いをしたこと」などの題名で書く課題がありますが、ここで、自分の話だけでなく、家族に取材して話題を広げてくるのです。多くの生徒は、身近なお母さんに取材してきますが、お父さんに取材したり、田舎のおじいちゃんおばあちゃんに取材してくる子もいます。

 この家族との対話の中で、子供の認識力が育っていきます。本を読んだりテレビを見たりすることによって知識として学んだことは、すぐ忘れてしまうことも多いものですが、自分が体験の中で学んだことはその子の血や肉となります。これと同じように、身近な家族から聞く話も、子供自身の体験と似た意味をもっています。

 家族からの取材は、感想文を書く場合は更に重要になります。感想文の主題となっているものの中には、子供にとって頭で理解はできても、体験を通して学ぶことのなかったものがかなりあります。しかし、人生経験の長い親は、実生活の中で似たような経験を何度か繰り返しています。

 例えば、芥川龍之介の「蜘蛛(くも)の糸」はだれでも知っていますし、そこに書かれている内容は小学生でも十分に理解できます。しかし、小学生の子供は、たとえ自分に似た話があったとしても、それを似た話として思い出すことはなかなかできません。ところが、親が同じテーマの広い意味での似た話を聞かせてあげると、子供は親の経験を通して、そのテーマを実例としてとらえることができるようになるのです。

 これが、対話を通して学ぶということです。

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中学生のころに読む本で、意外と見落とされがちな「面白い本のよさ」 as/1232.html
森川林 2011/04/13 02:02 


 中学受験で多忙な勉強の1年間が終わると、ほとんどの子が読書の習慣をなくしてしまいます。

 本を読むのが好きな子は、中学生になってから本を読み始めますが、中学生時代というのは、部活があったり定期試験があったり意外と忙しい時期です。

 読書は、毎日の習慣で読み続けていけるものですから、テストなどで何日か本を読まない日が続くと、すぐに読書の習慣は途絶えてしまいます。

 しかし、この中学生の時期にも、しっかりと本を読み続ける子がいます。そういう子は、ほぼ例外なく国語の力があります。そして、国語の力がある子は、やる気になるとすぐにどの教科の成績も上げることができます。(ただし、読書好きな子は、退屈な勉強を嫌う子も多いので、受験勉強のスタートなどは遅れ気味になることも多いようです)



 さて、中学生になっても読書を続ける子は、どういう本を読んでいるのでしょうか。意外なことに、それは親の目から見ると、一見程度の低い内容に見える本なのです。

 教育関係者と呼ばれるような人の多くは、本を選ぶときにまずその内容に注目します。内容に感動があり、読みやすい本であれば、それを良書と考えがちです。しかし、読みやすい本というのは、易しい語彙しか使われていないために読みやすいということも多いのです。

 その反対に、一見くだらない内容に見える本の中に豊富な語彙が盛り込まれていることがあります。

 以下の例は、どちらがよいか悪いかということではなく、表現の仕方の例として見てください。

 まず、森絵都さんの「アーモンド入りチョコレートのワルツ」という本の表現の一部です。

====(引用はじめ)

 ぼくは一瞬、どうすればいいのかわからなくなって、とっさに海へ目をやった。暗い暗い夜の海。遠い岸辺に灯台の光が見える。その光がぐるりとひとまわりしても、ぼくにはまだどうすればいいのかわからなかった。

====(引用おわり)

 情景と心情の描写が工夫されていますが、使われているのは平易な語彙で、小学生でも十分に読めます。

 次は、中村うさぎさんの「極道くん漫遊記」という、著者名と書名からして良書には選ばれることのなさそうな本です。^^;

====(引用はじめ)

 やがて俺たちは、鋼鉄製の柵に囲まれた瀟洒(しょうしゃ)な屋敷にたどり着いた。ドラゴンは、門の前まで押し寄せてきた群衆を蒸気の鼻息で威嚇すると、そのまま番犬のようにうずくまる。

====(引用おわり)

 こういうちょっと難しい表現で書かれた文章とともに、冒険物の本らしいテンポの速い会話が続きます。

====(引用はじめ)

 だが、フールーは、すました顔で言葉を続ける。
「わたしたちは、美しいモノが好きなの。……(略)……皆、美少女ばかりでしょ?」
「自分で自分を美少女とか言うなっつーの!」
「あら、ホントのコトだもん」
「…………」
 誰か、このバカ娘に、謙遜(けんそん)ってモノを教えてやれぇーーっ……て、まぁ、俺も教わったコトねーけどな。ははは。」
 だが……ちょっと待てよ? よくよく考えてみりゃ、……(略)……

====(引用おわり)

 登場人物が極道くんなので、品の悪い言葉で書かれていますが、言葉と実感がよく結びついている表現です。



 読書で大事なことは、いろいろありますが、いちばん重要なことは、毎日読むということです。だから、面白く読めるということが最優先です。そして、そのうえに、難しい語彙が盛り込まれていれば申し分ありません。たとえ内容的に優れた本であっても、子供がその本を薬でも飲むように決められたページまで義務感でやっと読むというような本では読書力はつきません。そして、この読書力が、読解力の土台になっているのです。

 ときどき、「読書をしても国語の成績は上がらない」と言う人がいますが、それは半分は正しく半分は間違っています。どこが間違っているかというと、「読書をしないのに国語の成績のいい子はいない」ということも言えるからです。読書力は、そのまま読解力ではありませんが、読解力の土台となっています。

 国語の問題で物語文を読むときに、読書力のある子は、文章を実感をこめて、あたかもその物語の中の世界を自分が経験しているように読むことができます。そういう読み方ができれば、選択問題でも記述問題でも、問題を見たあとにすぐに答えることができます。しかし、読書力のない子は、まず読み取ること自体に時間がかかりますが、それ以上に、問題を見たときに、もう一度もとの問題文の該当箇所の周辺を読まないと答えが出てきません。ここで出てくるスピードの差が読書力の差なのです。

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