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言葉の森のクラウド論2 as/1263.html
森川林 2011/05/05 14:38 



 初めに、昔の話です。



 私が最初に使ったワープロは、発売されたばかりの東芝トスワードJW-10で、たぶん数十万円でした。日本語ワープロの国産第1号機だったようです。モニターは24ドットで2行、カーボンリボンでジジジジと打っていくのですが、動きはかなり遅く、当時でも表を書くときは時間がかかるのでほかの仕事をしているほどでした。更に、その消耗品が横浜関内の東芝の会社まで行かないと手に入りませんでした。個人でこの機械を買った客は、あまりいなかったのでしょう。

 ちなみに、その前に使っていたものは、機械式のひらがなタイプと英文タイプと和文タイプでした。だから、最初に覚えたのは、ローマ字入力とひらがな入力の両方でした。



 そのあと、ワープロの機種がだんだんそろってきて、仕事用に本格的に使ったのがキャノンの業務用ワープロで、最高機種がハードディスク20MB、次の機種が10MBで、かなりの価格差がありました。

 その後、一太郎、ワードなどのパソコン用ワープロソフトが、ワープロのハードに負けないぐらい高性能になってきたので、富士通のFMWを購入。ワードで文書作成をすることにしました。当時のFMWは故障だらけで、あとで聞くと、最初のころの製品はほとんど不良品だったそうです。



 当時、一太郎とワードの両方で文書を作っていましたが、ワードは、表計算のエクセルとデータベースのアクセスとを統合した、今で言うオフィス製品の方向に進んでいました。一太郎も同じ路線に取り組んでいましたが、総合力では、ややマイクロソフトの方がまさっていたので、ワードに一本化することにしました。(本当は、一太郎にがんばってほしかったところですが仕方がありません)

 当時のワードは、アメリカの英文作成ソフトをそのまま日本語に移し替えただけで全く使いにくく、日本語ではありえないようなミスが随所にありました。その点では、一太郎の方がずっと洗練されていました。しかし、時代はやはり総合力の方に進み、やがてワードが一太郎のシェアを上回るようになりました。



 ワード文書をたくさん作り始めたとき、こんなに文章が次々とたまっていくとどうなるだろうかと考えました。そして、当時、データベースで情報を管理する方向があることを知り、早速、すべての情報をマイクロソフトのアクセスというデータベースで作り直す方向に切り替えました。

 つまり、ワードで文書を作るのではなく、データベースのレコードの中にテキストデータを入れ、それを必要に応じて印刷レイアウトに変えるというやり方です。これが、印刷レイアウトだけでなく、HTMLレイアウトにもできる機能があったので、子供たちの作文を毎週、大量にHTML文書にしてウェブアップロードしました。それは、今でも「作文小論文の花」というページで見られます。こういうことをしているところはほかにありませんでしたが、インターネットに接続している家庭自体が少なかったので話題にもなりませんでした。



 さて、ここからがクラウド論の本題です。



 最初にあったのは、個々のワード文書でした。

 それが、ひとつのデータベースの中に統合されたというのが、文書情報のクラウド化-3(マイナス3)でした。



 しかし、その情報は、会社のパソコンのデータベースの中にあるのですから、ウェブには手動でアップロードしなければなりません。HTMLファイルを作ってFTPでアップロードするという作業を毎日やるとしても、情報のタイムラグは当然出てきます。しかし、タイムラグは多少あっても、インターネットにアップロードすれば、全世界の人がその情報にアクセスできるという点で、これはクラウド化-2とも言えるものでした。



 情報のタイムラグを克服するため、あるとき、データベースを会社のパソコンから、ウェブサーバーの中に移すことにしました。使ったのは、MySQLというフリーのウェブデータベースと、PHPというやはりフリーのプログラミング言語です。

 データベースがウェブにあるので、情報はリアルタイムで反映されます。また、全国の講師がその情報をリアルタイムで見たり書き込んだり削除したりすることができます。こうしてクラウドは、個々の家庭や会社のパソコンを出て、ワールドワイドに広がっていきました。これがクラウド化-1でした。



 ところが、このデータベースが存在するのは、個々の会社のサーバーの中です。会社の中では整合性がとれた処理ができますが、他のサーバーとのつながりはありませんでした。

 情報量は、最初のころは、メガバイトのレベルでしたが、やがてギガバイトになりました。このまま行けばテラバイトレベルになるのは時間の問題です。情報量に応じて、サーバーのスペックを上げていくのでは、コスト的にもパフォーマンス的にもすぐに限界が出てきます。

 ここでgoogleが採用した情報処理システムが、複数のサーバーにデータを分散させて、それらをクラウドとして管理する方法でした。これが、現在言われているクラウド化です。



 個々の企業では、googleのように大量の情報を扱うわけではないので、ここしばらくは、自社サーバーに何もかも入れて運用する状態が続くでしょう。しかし、やがて自社サーバーの中のデータと、外部のデータがつながっていないことがネックになる事態がやってきます。

 例えば、個人の生活は、mixiやブログやtwitterやfacebookに見られるように、外部とのデータのつながりをますます深く持つようになってきます。言葉の森の講師のプロフィールも、これまで「先生の里」という自社サーバーの中に作ったページで見られるようにしていましたが、インターネットの技術革新に応じてこういうページを改良する仕事など、いつまでも続けているわけにはいきません。それよりも、それぞれの講師が自分のブログにプロフィールをアップロードし、そこで最新の情報を更新する方が、講師にとっても、保護者や生徒にとっても、言葉の森にとっても最もいい方法です。

 しかし、そうなると、自社サーバーにある講師の情報と、そのブログとのつながりが作れません。



 そこで今考えているのは、自社サーバーには最小限の情報を入れるだけにして、それ以外の情報のほとんどは、言葉の森の持つコンテンツ自体も、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の中に移していくということです。ソーシャルサービスは、例えば、facebookがtwitterの情報と連携をとれるように、サーバーの境界を超えたつながりをアプリケーションで作ることができます。

 この流れは、やがて、facebookとamazonとgoogleとyahoo!と楽天を横断するような情報連携の雲となっていくでしょう。これは、インターネット企業の大きな地殻変動を予想させます。例えば、情報のクラウド化が進むと、楽天とヤフーショッピングとアマゾンと、どこがシェアが多いかということ自体が無意味になっていきます。(それはまだ先の話でしょうが)



 ここからは、想像力で考えていくしかありませんが、言葉の森は、このクラウド化の流れを生かしたサイト作りをし、そして更に、今後は、クラウド化+1(プラス1)の流れのひとつを作っていきたいと思っています。

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言葉の森のクラウド論 as/1262.html
森川林 2011/05/04 21:36 



 クラウドの定義は、次第に広がっています。

 クラウドは、最初は情報の雲でした。企業や情報発信の技能を持つ個人が、自分の持っている価値ある情報を世界中に発信しはじめたのが出発点です。インターネットさえあれば、世界のどこでもその雲の中に入れるようになったというのが最初のクラウドです。

 その情報の雲に対応したのが、ポータルサイトです。ヤフーなどのポータルサイトは、世界中から発信される膨大な情報をわかりやすく整理して、クールボタンなどをつけて利用しやすくしました。しかし、そういう情報のポータルが人力の作業で運営できたのは、膨大とはいってもまだその情報の広がりが見渡せるほどだったからです。

 言葉の森が最初にインターネットを利用したのは、1996年ですから、この情報の雲が広がり出したころです。そのころ、日本全国で学習塾のカテゴリーに入るサイトは、ほんの数えるほどでした。



 このときの情報を提供する方法は、自分のパソコンにあるさまざまなデータをhtml化して、FTPソフトでアップロードするというやり方が主流でした。しかし、これでは、ウェブに表示される情報と実際の生の情報の間にタイムラグが出てしまいます。

 そこで、言葉の森では、それまでアクセスというパソコンのデータベースソフトで管理していたデータを、MySQLというウェブデータベースに移し変え、そのウェブデータベースをPHPというプログラミングソフトでhtml化して表示するというサイト作りに切り替えました。当時、こういうウェブ作りをしていた日本のサイトは、ほとんどなかったと思います。

 このように、同じ情報でも、タイムラグのある情報からリアルな情報へと情報の質が変化することによって、情報の量自体も爆発的に増えました。何しろ、データベースにある情報をすべてプログラムで必要に応じて表示できるので、FTPソフトでアップロードする情報に比べて桁違いに多くの情報が提供できるようになったのです。

 そこで、ポータルサイトに代わって出てきたのが検索エンジンです。googleに代表される検索サービスは、膨大な量の情報を独自のアルゴリズムで正確に評価することができました。クラウドが、単なる情報の雲から、リアルなデータの雲に変化することによって、検索サービスの時代がやってきたのです。



 しかし、検索サービスは、次第に行き詰まるようになってきました。それは、検索エンジンの裏をかくさまざまなSEO対策が登場するようになったからです。例えば、自分のサイトが検索の上位に来るように、アフィリエートなどを利用して多くのブログからリンクされるようにしたとします。検索エンジンは、そのSEO対策に対応するために、リンクの質に偏りがあるサイトの評価を下げるとします。すると、そういうSEO対策など何もせずに地道に身近な人からのリンクを受けていた高品質なサイトが下位になるという事態が生まれてくるのです。

 この結果、今では、googleの検索サービスで上位に表示されるサイトは、必ずしも質の高いサイトではなくなっています。ひとことで言えば、良質のサイトよりも、やり方のうまいサイトが上位に来ているという面の方が強くなっているのです。



 情報のクラウド、リアルなデータのクラウドの次に来たのは、ブログやmixiなどに代表される個人の情報発信のクラウドでした。それまでのインターネットは、主に情報を取りに行くところで、情報を発信できるのはある程度の技能を持つ人に限られていました。その技能というのは、htmlを書くこと、FTPを操作することぐらいですから特に難しいことではありませんが、だれもが情報発信するというところまではなかなかいかなかったのです。

 ところが、ブログやmixiなどのソーシャル・ネットワーク・サービスは、情報発信の敷居を大きく引き下げました。だれもが自宅で気軽に毎日情報発信できる状態になってから登場してきたのが、コミュニケーションのクラウドです。情報は、検索するものから、交流するものへと質的に変化していったのです。

 そして、その多様なコミュニケーションの必要性に合わせてブログなどのRSS技術が発達していきました。言葉の森のサイトも、ブログが出はじめたころに、すぐにホームページをブログ化しました。今、ホームページが更新されるたびにRSSを配信しているサイトは、情報発信を専門とするサイト以外はそれほどないと思います。

 このコミュニケーション、つまり、交流の雲に対応しているものが、今のfacebookに代表されるソーシャルサービスです。



 クラウドが登場して、身の回りがクラウドに包まれる前まで、世界はばらばらに存在していました。ばらばらな世界で人間生活に大きな影響を与えるものは差異でした。これまでのビジネスの多くは、社会に存在する差に基づいて成り立っていました。情報の差、技術の差、資源の差、立地の差、価格の差などが、ビジネスの成立の大前提でした。

 しかし、クラウドに包まれることによって、差は次々に埋められていくようになりました。



 今、私たちが直面しているのは、クラウドによって差がなくなりつつある社会です。それは、ある意味で、自然の中に生きる動物たちの生活に似た社会です。人間の英知が、自然に制約された動物の世界を抜け出て大きく一回りをして、また自然の中に生きる動物たちの世界により高い次元で戻ってきたというのが現代なのです。



 では、現在生まれつつある交流のクラウドの次に来るものは何でしょうか。それは、ひとことでは言いにくいのですが、敢えてひとことで言えば創造のクラウドです。しかし、その創造のクラウドに行く手前にもうワンクッション、別のクラウドが待っています。



 言葉の森のサイトは、今、このクラウド論をもとにして新たに大きく作り直していこうと思っています。

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ソーシャルネットワークの魅力 as/1253.html
森川林 2011/05/03 14:34 


 facebook(フェイスブック)というソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)が広がりを見せています。



 facebookには、登録に実名を使うという原則があります。これが実は、プライバシーの安全を保障しています。

 ひとつには、ほかの人も実名なので、自分が相手を確実に友人や知人だと知ることができ、その中でつながりを持ちたい人とだけつながりを持つことができるからです。

 そして、自分のプライバシー設定を何段階にも分けて設定することができるので、自分の名前以外は、友達関係も、趣味も、経歴も、投稿欄も、すべてプライバシーを保つ状態にしておくことができます。

 ただし、逆にあまりプライバシー設定を強固にすると、ほかの人とつながりを持ちにくいということも出てきます。



 このfacebookのような新しいSNSによって、インターネットの役割は大きく変化しようとしています。

 これまでのインターネットは、交流という要素もありましたが、検索や情報発信という要素の方が主に利用されていました。

 検索の精度を保証するものは優れたアルゴリズム(数式)と大きなシェアですから、これまでは、googleやYahoo!がインターネットの代表企業でした。

 「検索のインターネット」に対応して、情報発信する企業や個人は、SEO対策(いかに自分のページがgoogleやYahoo!で上位に表示されるようにするかという対策)に力を入れていました。その結果、検索の上位に来るものは、次第に、本来上位に来るような中身のあるサイトから、資金力と営業力にたけたサイトになっていきました。



 今後のインターネットは、検索から交流へ、ソフトから人間へ、アルゴリズムからクチコミへ移行すると考えられます。しかし、これまでのソーシャル(社会的なつながりの)サービスは、技術的な限界からまだその役割を十分には果たしていませんでした。

 ところが、ここに来て、facebookなどのソーシャルサービスが、「ソフトから人間へ」という役割を担えるようなプラットフォームになってきました。これからのインターネットは、「検索のインターネット」から「交流のインターネット」へと大きく変化していくと思われます。



 メールや掲示板に見られるこれまでのソーシャルサービスと、新しいfacebookなどとの簡単な比較をしてみました。

メール、掲示板facebook
相手の返事や反応に時間がかかるリアルタイムで反応があることが多い
アプリを起動して件名を入れて、と手間がかかるいつでもすぐに操作できる
文字中心のやりとり文字中心だが動画なども簡単に利用できる
屋外で大声で叫ぶ形のコミュニケーション室内で静かに対話する形のコミュニケーション


 日本を代表するソーシャルサービスであるmixiは、相手のページを訪問すると足あとが残るとか、自分が受けたコメントに関しては律儀に返信するような文化があるとか、比較的ウェットな人間関係が特徴でした。一方、facebookは足あとも残らないし、コメントも簡単なものや「いいね!」ボタンで済むなど、比較的ドライな点が特徴になっています。

 匿名で参加できるSNSは、コミュティの参加者の間でやりとりが激しくなって炎上することもありますが、facebookは実名で段階的なプライバシー設定ができるので、そういう可能性はあまりありません。



 facebookに代表される新しいSNSの利用によって、今後、言葉の森の勉強の仕方も大きく変わっていきます。ひとことで言うと、作文の勉強がより容易になるとともに、より充実するだろうということです。なぜかというと、言葉の森の行っている作文の勉強は、ほかの教科の通信教育に比べると、教材を渡しただけでは済まない人間的な工夫が必要だったからです。

 作文の勉強というものは、教材がどれだけ充実していても、教材だけで子供に勉強をさせることはできません。教材だけで勉強できるのは、作文の勉強に入る前段階の国語的な勉強までです。このため、言葉の森の勉強は、活用すれば大きな成果がありますが、実際には使いこなせない場合もあったのです。

 家庭によっては、子供にとっても親にとっても負担が大きく、なかなか力がつかないように見えるというところもあれば、逆に、毎日楽しく勉強できて、ぐんぐん力がついているというところもありました。同じ教材で勉強する同じ学力の子供であっても、大きな差が出てくることがあるのが作文の勉強でした。

 この大きな差を生み出す微妙な人間的な工夫が、新しいソーシャルサービスによって実現できるようになります。ソーシャルサービスを使った新しい通信指導は、従来の通信教育や通学教育ではできなかったきわめて細やかな対応を実現すると思います。



 現在、書店では、facebookに関する本が多数発行されていますが、下記の本がビジュアルでわかりやすいと思います。

「これ1冊で完全理解facebook」(日経BP社2011年3月19日発行)980円
(facebookは変化が速いので、用語など一部変わっているところもあります。例えば、ファンページ→facebookページなど)


 言葉の森ネットワーク(言葉の森facebookページ)
http://www.facebook.com/kotobanomori

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