欠点を直しても、いいものはできない。
いいものは、おのずからできる。
おのずからできるようになるためには、
何度も繰り返すことだ。
赤ちゃんが立ち上がって歩き始めるときのように、人間はおのずからうまく歩けるようにできています。
それをころぶたびに、「ほら、そこで右足を早く出さないからじゃない」などと注意していては、かえって歩く気をなくしてしまうでしょう。
人間には、けがをしたときに自然に治る力があるように、よりよくなろうとする自然の力がもともと備わっているのです。
その自然の力を引き出すコツは、いい見本を見せて繰り返すことです。
子供の作文を大人が見ると、熱心な人ほど欠点を直したくなってきます。
しかし、欠点を次から次へと直していって、すっかり欠点がなくなったときにいい作文になるかというと、そういうことはありません。
いいものは、おのずから生まれてくるのです。
そのための条件は、読書と対話と作文を繰り返すことです。(できれば音読、暗唱も)
作文は、直すことによってうまくなるのではなく、書くことによってうまくなるのです。
そこで、今日のテーマは、おのずから。
1、おのずからについてひとこと、
又は、
2、「おの、ず、から」で五七五、
又は、
3、何でも自由にどうぞ。
読書、対話、作文、音読、暗唱を繰り返すことか。なあんだ。単純。芸がない、と言われそうです。
ところが、子供は、というか人間は、単純な繰り返しがいちばん苦手です。
その理由はただひとつ。つまらないから。
といって、目先の新しいことを複雑にやっても、面白い気がするだけであまり実力はつきません。
単純なことを飽きずに続けさせる工夫が大事なのです。
そして、毎日続けているうちに、ある日ふと、おのずから上手になっていることに気づくのです。
それでは、今日も単純な基本を思い出して、おのずからいい一日になるようにお過ごしください。
補足説明
正確に言うと、直すことは、自分が直したいと思ったことの一部にとどめておき、褒めることは、自分が褒めたいと思ったことの何倍にもするということです。
そして、子供が向上心に燃えているときは、直す量はそれに比例して増やしていってもかまいません。
だから、受験コースの子供の作文などは、ばんばん直していいいのです。
しかし、受験の直前になったら、もう直さずに褒めるだけです。
そして、受験が終わったら、その結果がどうであれ、それまでの努力をただ褒めてあげるだけです。
ブレーキとアクセルを踏み間違えないようにね(笑)。
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雨の日も、
風の日も、
雪の日も、
スズメたちはえさを待っている。
自然の生き物たちは、小さな体で十分にたくましく生きています。
それに比べると、人間は、やれ寒いだの、あれが足りないだの、これが足りないだの、文句が多い(笑)。
与えられた境遇を当然のように受け止めて、その中でベストを尽くすスズメたちの姿を見習いたい。
ということで、今日のテーマは、スズメのベスト(何だか羽毛ふとんみたい)
1、スズメやベストについてひとこと、
又は、
2、「す、ず、め」「べ、す、と」で五七五、
又は、
3、何でも自由にどうぞ。
と書いているうちに、雪が雨になっていました。
今日はえさをやるのが遅れたので、スズメたちはほかの場所を探しに行ったようです。
屋上の手すりにまだ雨に濡れたご飯粒が残っています。
でも、たぶんお昼にはすっかりなくなっているでしょう。
それでは、今日は、久々の雨を味わいながら、いい一日をお過ごしください。
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勉強の面白さは、
テストでいい点を取る面白さではなく、
新しいことを発見したり、
創造したりする面白さだ。
そういういちばんの前提を、まず大人が確認しておくことが大事です。
勉強とか、テストとかいう言葉を聞くと、多くの子供は、「えー、やだー」などと言いますが(笑)、勉強やテストをそういうものにしているのは、今の社会です。
テストとは、見方を変えれば、クイズやパズルのようなものです。
「今日はどんな面白いパズルが出るのかなあ。わくわく」という感じでテストを待つことができればいいのです。
そして、勉強の本質は、ゲームと似ています。
「この条件Aとこの条件をBを組み合わせると……、あ、わかった。Cになるんだ!」というような感動が、勉強の面白さです。
だから、大人が、点数で差をつけることを目的にするのではなく、子供たちに勉強の面白さを伝えることを目的にして勉強を教えれば、勉強嫌いになる子はひとりもいなくなるでしょう。
差をつけて比較してがんばらせるのではなく、面白さを味わえるようにして自然に熱中できる工夫をするのが本当の教育です。
そこで、今日のテーマは、勉強。
1、勉強についてひとこと、
又は、
2、「べん、きょ、う」又は「す、た、でぃ」で五七五、
又は、
3、何でも自由にどうぞ。
勉強をつまらないものにしている原因のひとつは、大人が勉強をつまらないが我慢して取り組む苦しい作業のように考えているところにあります。
そういう考えで自分自身が勉強してきたので、子供にもそういう考えで接してしまうのです。
まず、大人が、勉強や仕事を楽しい発見や創造だと考えることが必要です。
もちろん、途中には、時間のかかるだけの面倒な作業もありますが、それは、いい料理を作るために道具を磨いているような時間と考えればいいのです。
まだ寒い日が続きますが、だんだん春が近づいてくるのがわかるような毎日です。
道ばたに咲いている水仙のつぼみが、もう開きそうなほどにふくらんできました。
それでは、今日も、発見と創造のあるいい一日をお過ごしください。
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情報のやりとりの時代から、
物のやりとりの時代へ。
その新しい流れが、
ディジタル化の進行とともに起きている。
例えば、読書は今後、ディジタルブック化が進行していくでしょう。日本の家屋は狭いので、本を買っていると、人の住むスペースがなくなってしまうのです(笑)。
しかし、その一方で、文章を書く作業は、手書きからキーボードへ、そして今また、部分的に手書きに戻っています。
手書きの方がしっくり来るのは、考え事をするようなときです。(言葉の森の作文の勉強では、構成図を書くとき)
これからの学校では、プログラミング技術が必須の教養のようになるでしょう。
しかし、それと並行して、物作りが新しい形で復活してきます。
切ったり、折ったり、曲げたり、叩いたりという作業の価値が見直されてくるのです。
どちらも本物の流れなので、その波の乗り方にその人の個性が現れます。
この流れにうまく乗れば、合理的でありながら人間的である生活ができます。
現代は、そういう不思議で混沌とした時代なのだと思います。
ということで、今日のテーマは、波の不思議。(何だか科学の絵本みたい)
1、波についてひとこと、
又は、
2、「な、み、のり」又は「ふ、し、ぎ」で五七五、
又は、
3、何でも自由にどうぞ。
今日は久しぶりの青空です。
やはり太陽がさんさんと照っていると、気分も更に明るくなります。
世界の情勢もまだ混沌としていますが、どういう波が来てもうまく乗れるように、気持ちはいつも明るく持ち続けていきましょう。
それでは、今日も乗りのいい一日をお過ごしください。
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現在、「学習の手引」を改訂中です。
「学習の手引」の記事を簡素化するために、「暗唱に関するQ&A」はホームページの方に掲載します。
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暗唱は、文章に書かれている内容を言葉の意味として理解する方法ではなく、文章に書かれている内容をその表現ごと反復によって理解する方法です。
小学校1、2年生のうちは、どの子も反復による暗唱ができますが、小学校3年生ごろから、反復よりも記憶に頼ろうとする意識が強くなりかえって暗唱しにくくなります。また、学年が上がると文章が事実文から説明文に変わってくるため文脈の流れがつかみにくくなり、更に暗唱しにくくなります。暗唱しにくい文章を暗唱するコツは、反復の回数を増やすことです。
暗唱のコツは、できるだけ同じ読み方で声を出して読むとです。回数を決めると音読を繰り返しやすいので、できるだけ暗唱用紙を折って音読するようにします。
暗唱は、途中でつっかえずに1文字の間違いもなく滑らかに読めるようになることが目標です。滑らかに読めないうちは、更に反復を繰り返してください。
暗唱は、毎日続けることが大事です。朝ご飯の前など、毎日必ずできる時間帯(10分程度)を確保して続けてください。毎日はできないという場合は、不完全に暗唱の練習を続けるよりも、暗唱の練習はやめて、長文の音読(2、3分)だけをするようにしてください。
小学校中学年以上で、暗唱をしたがらない場合は、子供だけにさせるのではなく、お父さんやお母さんも別の長文で一緒に暗唱の練習をしてください。
暗唱を続けていると、文章の理解力だけでなく、発想力、記憶力、勉強力、表現力も身につきます。暗唱はやり慣れると楽しい勉強で、大人でも続けていくことができます。
日本語での暗唱のコツがわかると、英語の勉強のときも同じように暗唱で英語力をつけていくことができます。
暗唱すると
1、頭がよくなる
思考力の骨組みとなる語彙や考え方が自分のものになるからです。
2、作文がうまくなる
語彙や文のリズム感などの表現力が自分のものになるからです。
3、勉強ができるようになる
複雑なものを覚えることが苦にならなくなるからです。
暗唱の成果はどんなところに
1、江戸時代の寺子屋教育の基本は暗唱
寺子屋教育の基本は、百字の文章を百回読むことでした。この勉強法によって日本は当時世界一の識字率を達成していました。
(江戸時代の日本の識字率70?80%、同時代のヨーロッパの先進国の識字率20?30%)
2、ノーベル賞の湯川秀樹も小1から暗唱
湯川秀樹と3人の兄弟は、それぞれ5、6歳から四書五経の素読をさせられました。そして、全員が学者になりました。
そのときの勉強法は、論語を漢字のまま意味もわからないまま音読し暗唱するという方法でした。
(芳樹(兄、冶金学者、東大教授)、茂樹(兄、歴史学者、京大教授)、環樹(弟、中国文学者、京大名誉教授))
しかし、湯川秀樹は後年、素読は役に立ったが、読めないし意味も分からない文章を読むのは苦痛だったと述べています。
3、暗唱を生かした著名人
暗唱を自分の実際の勉強に生かした著名人には次のような人がいます。
□貝原益軒(1630-1714)……81歳のときに著した「和俗童子訓」で四書五経を毎日百字百回暗唱するという勉強法を提唱しました。益軒の影響は日本全国々に及び、江戸時代の日本の教育の大きな方向を決定しました。暗唱は子供だけでなく、大人にとっても価値があると述べています。
□塙保己一(1746-1821)……盲目でありながら当時日本全国に散らばっていた600冊以上の学術書を編纂するという偉業を成し遂げました。その伝記は、ヘレン・ケラーにも大きな影響を与えました。18歳のとき般若心経を毎日100回1000日間暗唱するという誓いを立て実行しました。また、晩年まで折に触れて暗唱をしていました。
□シュリーマン(1822-1890)……独学で十ヶ国語以上をマスターしトロイアの都を発掘しました。そのときの勉強法が、外国語を辞書にも文法書にも頼らず大声で音読し暗唱するという方法でした。生まれつき弱かった記憶力が、この勉強法で改善したと述べています。
□本多静六(1866-1952)……林学博士。暗唱の勉強法で東京農林学校(今の東大農学部)を首席で卒業しミュンヘン大学経済学博士号を取得しました。大学1年生のとき数学で赤点を取りましたが、一念発起し数学も丸ごと暗唱するという方法で学年トップになりました。子供時代、家の仕事を手伝いながら文章を暗唱するという勉強法をしていました。大学には作文の点数がよくて合格できたと述べています。
□野口悠紀雄(1940-)……経済学者。自身の中学高校時代の経験から英語の勉強法として音読暗唱を提唱しています。高校時代、英語は教科書をただ音読するだけで好成績を維持し東大工学部に合格しました。しかし、そのように単純な方法なのに実践する人が少ないと述べています。
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現在、「学習の手引」を改訂中です。
「学習の手引」の記事を簡素化するために、「暗唱に関するQ&A」はホームページの方に掲載します。
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Q 学校での音読の宿題と重なるので、子供が嫌がってしまいます。
A 学校の宿題は夕方の家庭学習の時間にやり、言葉の森の自習は早朝にやるようにしてください。時間が離れていれば負担に感じません。
Q 低学年なので、100字でも読むのにすごく時間がかかります。
A 時間はかかってもかまいません。気長に決めた回数だけ音読してください。
Q 決められた回数まで音読しても覚えられません。
A 覚えることが目的ではありません。決められた回数だけ音読できればそれでよしとしてください。
Q 「している」を「してる」などと間違って自分なりに読んでいます。
A 注意のしすぎにならない程度に、ときどき正しい読み方を教えてあげてください。
Q 声を出さずに読んでいます。
A 声を出した方が頭に残りやすいと教えてあげてください。自分にだけ聞こえる小さい声でかまいません。
Q ふざけて早口で読んでいます。
A ふざけるのも早口も一向にかまいません。楽しく読んでください。
Q 子供にとって意味がわからない難しい言葉があります。
A 何度も読んでいるうちに子供自身から質問が出てきますから、そのときはお父さんやお母さんが手短に教えてあげてください。自分で辞書を引いて調べさせるという考え方もありますが、暗唱の定着を目的としているときはできるだけほかの作業はさせない方が続けやすくなります。
Q つっかえながら読むので、とても近くで聞いていられません。
A そういうときこそ、読み終えたときに、「じょうずに読めるようになってきたね」と褒めてあげてください。
Q 数回読むと簡単に覚えてしまうので、それ以上続けて読む気になりません。
A 覚えることが目的ではありません。スポーツの準備運動で行うランニングと同じものでくりかえすことで体力がついてきます。
Q 長いので、とても覚えられるようになるという気がしません。
A 歌を覚えるのと同じです。かなり長い歌詞でも歌なら自然に覚えてしまいます。
Q 暗記よりも考える力が大事だと聞いたことがあります。
A 弊害があるのは、中途半端な暗記や低レベルの暗記です。本格的な暗唱は考える力を高めます。
Q 暗唱だけして、課題の長文の音読をしていません。
A できれば、毎週の課題の長文を中心に長文を1編音読し、そのあと暗唱の長文で暗唱をしてください。しかし、両方できない場合は、とりあえず暗唱だけをしっかりできるようにしてください。
Q 録音したものを聴く形で、暗唱の代わりになりますか。
A ある程度はなります。しかし、録音には機器や準備が必要ですが、音読には不要です。また、自分で声に出したものの方が定着しやすくなります。
Q 1日のうちに朝、昼、晩と何回も暗唱をして、先に進みたいのですが。
A いい心がけです。どんどんやってください。ただし、何かを新しく始めたとき子供は飛ばしすぎる傾向がありますから、親の方でコントロールしてあげてください。
Q 英語や社会や古文で暗唱の宿題がありますが、同じようにできますか。
A 同じやり方で簡単にできます。
Q 寝る前に覚えた方が記憶に残ると聞きましたが。
A 寝る前に覚えた方が定着します。しかし、大事なのは毎日の継続です。生活の中で毎日確保できる時間帯でやってください。その意味で朝食前の時間帯をすすめています。
Q 文章が長くなると、最初に覚えたものを忘れてしまいます。
A イメージ記憶を使えば忘れにくくなります。
Q 1回覚えた900字の文章は、ずっと覚えていた方がいいのですか。
A 自分の好きな文章であればそうしてください。しかし、普通は、次の900字の文章を覚えるときは、前の文章はもう忘れてかまいません。
Q 暗唱を親の私もやってみたいのですが。
A 大人では、更に発想が豊かになるという効果があります。しかし、子供と一緒に始めると親が先に挫折したときに説得力がなくなりますから、続けられる自信がつくまではひとりでやってください。
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現在、「学習の手引」を改訂中です。
「学習の手引」の記事を簡素化するために、「思考力を育てる暗唱」はホームページの方に掲載します。
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記憶や反復や音読や暗唱が、理解や思考と相反するという考えを持つ人がいます。例えば、丸暗記という言葉には、自分で考えない、表面的な知識だけ、というニュアンスがあります。暗唱も、この丸暗記と同じようなものだと考えている人もいます。
しかし、記憶が、思考に対して弊害になるのは、その記憶が徹底していないときです。つまり生兵法の記憶、一夜漬けの記憶のときに記憶が弊害になるのです。消化され自分のものになった記憶は、思考を深める役割があります。
例えば、九九というものを考えてみるとわかるように、ほとんどの人は、九九を消化しているので記憶による弊害というものを感じません。しかし、九九を覚えかけているときは、九九を使うことによって実感よりも劣る面が出ていたこともあったのです。
お菓子を分ける
(九九もうろ覚えのときは、体験のブレーキとなることがあります)
同様に、言葉も、覚えかけのときの言葉は、実感よりも劣る面があります。未消化の言葉によって、体験がかえって浅くなる時期があるのです。しかし、言葉が消化されたあとは、体験は言葉によって深くなります。
暗唱は、言葉による物の見方感じ方考え方を蓄積することです。
しかしもちろん、暗唱以外にも、言葉を蓄積する方法はあります。例えば、たくさんの話を聞くこと、たくさんの本を読むことです。多くの話を聞いたり多くの本を読んだりすることによって同じ文章に触れる機会を増やすことができます。つまり、同じ文章や同じ文脈に何度も触れることによって、理解するための言葉が表現するための言葉になっていくのです。
この表現語彙と理解語彙には、大きな違いがあります。例えば、英語を読む力を10とすると、ほとんどの人の英語を書く力は1程度のはずです。誰でも名作を読んで感動することができますが、同じような名作を書ける人はほとんどいません。理解語彙のレベルと表現語彙のレベルは大きく異なるのです。
消化された表現語彙を蓄積する方法として、日本人は暗唱というやり方があることを知っていました。九九、百人一首、いろはガルタ、素読などは、日本人が開発した教育の方法でした。
しかし、この百人一首などに見られるような記憶反復の伝統は、戦後急速に失われ、それまでの記憶や反復の学習に取って代わったものは理解と思考の教育でした。ところが、理解と思考の教育は、一斉指導と結びついていたために教える側の負担が大きく基礎学力の低下を生み出しました。その学力低下を補うものとして、公文式や百ます計算のような記憶反復の方法が登場したのです。しかし、新しい記憶反復の方法は歴史が浅かったために、その方法が万能であるかのような行き過ぎも生み出しました。
この記憶反復の方法と理解思考の方法を統合するのが、読書、作文、暗唱を結びつけた学習です。
暗唱の本当の目的は、記憶ではありません。勉強を進めるための目安として覚えることを目標にしていますが、覚えることそのものは決して重要なことではありません。記憶力を高めることや記憶量を増やすことは、暗唱の副産物にすぎません。
この記憶の副産物に関して、世間では、暗記や暗唱を役立つ知識や文化的な伝統に結びつけようとする傾向があります。例えば、「○○の首都は□□」というような知識を増やすような暗記や、平家物語や枕草子の一部を覚えるような暗唱です。
暗唱を表現語彙として役立てようとするのであれば、自分がこれから書く作文に結びつくような現代文の事実文、説明文、意見文を中心に暗唱していく必要があります。
暗唱の真の目的は、反復練習によって物事を把握する力をつけることです。塙保己一が般若心経約300字を毎日100回ずつ1000日間暗唱し、しかも晩年にいたるまで折に触れて暗唱を続けたということを見てもわかるように、宗教的な面を抜きにすれば、これは決して単なる記憶の練習だったのではありません。将来この暗唱の仕組みが脳科学的に解明されるようになると思いますが、当面は暗唱の目的は、記憶よりも理解や思考の方にあると考えておくことが大事です。事実、大人の人が暗唱を始めると、記憶力がよくなるということよりも、発想が豊かになるという感覚を持つことが多いと思います。
ただし、どの学習にもバランスは必要です。言語と経験の間にもバランスというものがあります。ルソーは、子供時代に本を読みすぎて自分が言語先行型の人間になったことへの反省から、自然教育の「エミール」を著しました。体験が伴わない時期に言語を吸収しすぎると、やはりバランスが崩れる場合があります。もちろん体験ばかり広がって言語が伴わない生活はあまり人間的とは言えませんが、言語が経験よりも大きくなることもやはり人間的な成長とは言えません。
言葉の森の暗唱の自習は1日10分程度ですから、このようなアンバランスを生み出す心配はありませんが、日常生活の心がけとして、言語的な学習と並行して家の手伝いや自然との触れ合いなど経験の時間を増やしていくことは大事です。
さわやかな朝
(言葉は体験の内容を豊かにしますが、体験が不足していると言葉が先行してしまうこともあります)
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現在、「学習の手引」を改訂中です。
「学習の手引」の記事を簡素化するために、「暗唱フォンの作り方」はホームページの方に掲載します。
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教室で一斉に暗唱するときや、狭い家で兄弟一緒に暗唱するとき、大きい声は出せないが、自分の声はしっかり聴きたいということがよくあります。
暗唱の仕方の中には、聴いて覚える方法もあります。高速聴読がその方法ですが、人によっては聴くだけでは覚えにくいようです。耳栓をして周囲の雑音が入らないようにしながら、内耳で聴く方法もあります。しかし、これも人によっては覚えにくいようです。
一方、先人の例を見てみると、シュリーマン、本多静六、貝原益軒、湯川秀樹など、みんな声を出して暗唱する方法でした。人間は、いったん自分の声として出した言葉を、聴くときにも言葉として認識します。声を出すことによって二重にその言葉が自分のものになるのです。
●暗唱フォンシングル型A4の紙を1枚用意します。 | 1枚を二つに折ります。 |
二つに折った線を基準に三つに折ります。 | 裏返してまた三つに折ります。 |
片側の端を箱を作るように折り立ててホッチキスで止めます。 | 両側の端を同じように止めて長い箱を作ります。 |
箱の真ん中あたりを折って120度ぐらいの角度にしてホッチキスで止めてできあがり。 | |
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