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激動の時代に子供たちをどう育てるか 3 as/1564.html
森川林 2012/06/21 20:23 
(春咲きコスモス)

●本当の学力

 塾によっては、中学受験でいいところに入らなければ、高校ではますます差がつき、その結果いい大学に入れず、いい職業にもありつけなくなると脅して早めの受験をあおっているところもあります。そして更に、小5小6になってからでは間に合わないから小3や小4で受験のための勉強をスタートする必要があると脅し、更に、小1や小2まで受験勉強の流れに巻き込もうとしているところもあります。そして更に、幼児教育もそうなりつつあります。

 確かに子供の意欲は周囲の友達によって影響されますから、いい学校に入った子はいい大学を受験することが当然と思いやすいということはあります。逆に、学力の低い学校にいると、周囲の低い志に影響されて、自分だけより上の大学を目指すという意識にはなかなかなりにくいところもあります。しかし、実際には、早めの受験勉強のために、読書や自由時間が不足し本当の学力が育たないまま中学に入り、その後成績が伸びないという子もかなりいるのです。

 子供たちの生活の本文は勉強ですから、勉強を生活の中心にするのは当然ですが、勉強をしすぎたために、子供時代にもう一方の重要な要素である読書や遊びや自由な時間を削ってしまうと、本当の思考力や創造性が育たなくなるのです。

 ところで、そういう本当の学力は小中学生のころはなかなか表面には現れず、高校生や大学生になってから顕在化します。だから、親は今の成績に目を奪われるのではなく、もっと先のことを考え、創造力をたくましくして子育てを行っていく必要があります。

●想像力の必要な時代

 特にその想像力が重要なのは、今が大きな変化の時代だからです。かつては、いい大学に入ればいい会社に就職でき、一生安定した生活ができ、そして会社の成長とともに仕事も拡大し自分自身も成長するという世の中の仕組みが日本にはありました。今も多くの会社では、最終学歴が採用の大きな基準になっています。しかし、日本の社会は高度成長期のような時代を過ぎ、今、経済成長の中心は次々と新興国に移っています。日本が新しい産業を作り出さないかぎり、日本の会社は古くからある有名なところほど、これから衰退に向かう傾向になります。それはちょうどアメリカでGMやフォードが衰退していったようにです。

 特に工業時代に大衆消費財のチャンピオンだった企業は、リストラや派遣社員や外国人労働者や海外移転などによって人件費のコストを下げなければ生き残れないようになってきています。そして、そのほかの産業においても、次々と小さなヒット商品が入れ替わる経済のもとでは、会社の寿命も年々短くなっています。

 いい大学を出たからといっていい生活を送れる保証はなく、更に親の世代よりも子の世代の方がほぼ確実に貧しくなるという夢のない世界に日本の社会は突入しています。そして、この衰退する一本道から抜け出るほかの選択肢はない(海外の発展する国に行くという手はありますが)というのが現実です。しかし、この状態を、新しい産業社会が日本に生まれる直前の過渡的な時代だと認識する必要があります。(つづく)

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激動の時代に子供たちをどう育てるか 2 as/1563.html
森川林 2012/06/20 16:54 



●我が家の例

 私(森川林)の家では、子供たち2人は、小中高と塾や予備校には行かなかったので(中3の一時期だけ下の子は短期間通ったことがありますが)、家庭での時間の余裕はたっぷりありました。しかし、そういう子は、ほかにはほとんどいなかったらしく、子供が保育園に通っていたころ、友達が「もう足し算を習っている」というのを聞いて、「そういう世界があるんだ」と思ったそうです。小学校の低学年のころ、近所の友達と遊ぶと、「もう、何の計算を習った」「もう、何という漢字を書ける」という話題になることがあり、学校でしか勉強していないうちの子供たちは、ただ感心するだけだったようです。

 ただ、私自身が、小中と自由に遊んで暮らして成長し、それで何も問題なかったと思っているので、子供たちも読書さえしていれば、小さいころから特にどこかに通って勉強する必要はないと思っていました。だから、子供たちは、結局勉強は言葉の森以外何もしませんでした。ただ、そのために小学生のときは、算数などでたまにひどい点数を取ってくることがありました。

 子供の学力というのは、話していれば大体わかります。普段の会話で普通に理解力があると思っていたので、算数のそのひどい点数を見たとき、学校は教育力がなくなったのだと思いました。もちろん、それは先生のせいではなく、学校の中で一斉授業ができないくらい、子供たちの学力格差が進みつつあったせいだと思います。

 私は、自分自身が中3のころ、高校受験をきっかけに勉強に目覚めたので、子供たちもそうだと思っていました。すると、その予想どおり、中3で自覚的に勉強を始めるとぐんぐん成績が上がりだしました。それまで余裕のある生活でたっぷり遊んでいたから勉強に飽きていないので、かえって中3から勉強に気合いが入り出したようです。

 比較するのはよくありませんが、小学校低学年のころから塾で先取り勉強をしすぎた子は、勉強に飽きてしまうせいか、肝心の高校生あたりになると、勉強に燃えなくなるようでした。

 たぶん、勉強の理想は、小中とたっぷり遊んで勉強は中の上くらいを維持し、受験期の1年間でぐんと伸ばすことだと思います。これは高校生も同じで、1、2年のときはたっぷり高校生活を楽しみ、成績は上の下ぐらいを維持し(微妙ですが)、受験期の1年間でぐんと伸ばすことだと思います。小さいころから成績がよいというのは悪くはありませんが、そのために勉強のしすぎと自由時間の不足が続くのは、長い目で見るとかえってマイナスになると思います。

●いい大学とは言っても

 保護者からの電話相談でよく感じるのは、親が子供の今の成績の上下に振り回されすぎていることです。5年後、10年後の子供たちの学力を考えれば、小中学生のころは読書に力を入れていく方がいいのに、読書の時間を削ってまで勉強させ、今の成績を上げることに追われているように感じるのです。なぜそういう状況が生まれているかというと、受験勉強の中身が科挙化しているからです。今の受験勉強は、本来の学力を測る面ももちろんありますが、それ以上に受験勉強のノウハウを知っているかどうかで合否が左右される面が大きいのです。そして、塾や予備校の広がりの結果、そのノウハウで左右される部分は、年々大きくなっています。

 例えば、こういう例があります。同じ学力の子がいて、一方は塾で、「易しい問題で確実に点を取り、難しい問題は後回しにする」というノウハウを教えてもらっていたとします。他方の子は、そういうノウハウを知らずに1問目から順に解いていこうとします。すると、ノウハウを知っている子の方が常に成績はいいはずです。そしてまた、試験を出す学校の側も、そういうノウハウを知っていることを前提に、だれもがつまずくような難問を最初の方で出すようになるのです。こういうノウハウのやりとりが増える結果、学力はそれほどでもないのに、ノウハウの力で難関校に合格する子が増えています。それが最も典型的に表れているのが東大の入試です。

 確かに、東大などに受かる子の中には、学力もあり、思考力もあり、音楽やスポーツにも秀で、性格もよく、人間性豊かな子も多くいます。(言葉の森に来ている子はなぜかそういう子たちばかりでしたが)。しかし、その一方、学力は普通で記憶力だけが優れ、あとはノウハウの力で合格した子や、勉強しかすることがないような面白味のない子がただ長時間かけて成績を上げた結果合格したというような子もいるのです。そして、そういう記憶力とノウハウと長時間だけの子が、近年じわじわと増えている感じがします。本当の学力とは、理解力と思考力と創造性だと思いますが、。特に、思考力と創造性のない子が多くなっている感じがするのです。そのことが、3.11をきっかけに東大話法などという言葉で普通の人にも直感的に感じ取られるようになっているのだと思います。

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ちゃくちゃく 20120621  
 こどもとしての時間を大切に過ごすというのは、小さな大人になるのを強要されないことでしょうか?心身の発達にあった充実した時間を過ごすといえば簡単ですが、情報や誘惑の多い現代、また東大話法のような誤謬がまかり通る世の中では難しいのが現実です。それでも、親が毎日を楽しそうに過ごす姿を見せること、今の時点のわが子が大好きだと伝えることはできます。多少不自由なこども時代をすごし、早く大きくなりたいと思うことが成長の原動力となると思います。

森川林 20120622  
 ちゃくちゃくさん、こんにちは。
 確かに、今の子供にとって、魅力的に生きる大人の姿を見せることは大切ですね。
 子育ての前提は、まず親が楽しく生き生きと生活していることだと思います。

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