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小中学生の受験小論文対策 as/190.html
森川林 2007/10/30 11:01 
 入試で作文や小論文の試験を出すところが増えています。
 今日は、小中学生の作文試験対策について書きたいと思います。
 大事なことは、全部で5つあります。
 第一は、何しろいろいろなテーマで最低10本は書いてみるということです。出そうなテーマで、10種類の作文を書いておけば、実際の試験でも使えそうな実例や意見が準備できます。
 第二は、誤字を徹底してなくすことと、時間内に字数を埋める練習をすることです。誤字は、実際に書いて見つけるしかありません。時間と字数については、いろいろなコツがありますが、これも最終的には慣れるしかありません。
 第三は、挑戦実例を見つけるということです。10種類の作文を書くときに、自分がこれまで何かに挑戦したという体験をできるだけ思い出して入れていきましょう。体験実例に価値があると、作文の印象そのものがよくなります。
 第四は、家族で対話をすることです。特に、普段あまり話すことのない父親が登場して、出そうなテーマについて父親の体験を交えながら話しておくと、その対話実例がほかのテーマのときにも使えるようになります。両親との味のある対話が入っていると、挑戦実例と同じで作文の印象がよくなります。
 第五は、光る表現を入れる練習です。しかし、これは、試験直前に練習すれば十分です。
 これら5つの取り組みの中で、最も効果の高いのが、第四の「家庭での対話」です。時事問題集などを読んで身につけた知識は、表面的なものなので試験には生かせませんが、両親の肉声を通して聞いた実例は生きた実例として子供の記憶の中に残ります。

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先生の役割 as/189.html
森川林 2007/10/19 10:50 
 ここのところ、何人かの保護者の方から、「もっと厳しい指導をしてほしい」というご要望をいただきました。それは、先生の指導に対して期待をしているということだと思いますが、私は、子供の教育における先生や親、つまり大人の役割はあまり大きくしない方がよいと考えています。それは、次のような理由からです。

 勉強をするのは、子供です。勉強を山にたとえれば、子供はひとりで山を登っていきます。先生や親が先導して引っ張って登らせるのではありません。
 大人は、その山の先がどのようになっているか、おおまかな予測がつきます。場合によっては、その山を先回りして危ない場所がないかどうか確かめることもあります。しかし、山を登るのは子供自身です。
 先生や親は、後ろの方にいて、子供にときどき声をかけてあげます。その声かけのほとんどは、明るく単純な励ましと賞賛です。そして、ごくたまに、子供が危ない場所に迷い込みそうになったときに、大声で注意をします。また、子供が失敗して落ち込んでいるときは、近くによってじっくり話をしてあげます。
 教育における大人の子供に対する関わり方は、そのようなものではないかと思います。

 具体的な教室での指導の場面は、こうです。(私の場合)
 子供たちが作文を書いているときには、ときどき声をかけます。「おっ、うまいなあ」とか「たくさん書いているね」などという単純な声かけです。
 勉強以外でも、いいところはどんどん褒めます。「元気そうだなあ」とか「いいあいさつだね」などという声かけです。言葉に出さないときでも、常にそういう目で子供を見るようにしています。そうすると、雰囲気が自然に明るくなってきます。
 たまにルールに反したことをわざとやった子については、ぶっとばすこともあります(笑)。しかし、暗い叱り方はせずに明るく強く叱るだけで、すぐに切り換えるので尾を引きません。
 作文の指導については、ほとんど、よいところを褒めるだけです。個々の作品や表現について、「ここをこう直したらもっとよくなる」というような細かい指導はあまりしません。ここが、一般に期待されている先生像と違うところだと思います。
 しかし、よくがんばっている子に対しては、たまに、これからの勉強の大きな方向をアドバイスします。実は、ここも一般に期待されている先生の役割とは違うところだと思います。
 先生が先導して子供を引っ張って山を登っていくような指導ではなく、先生は後ろからついていって、たまに重要なポイントに来たときだけしっかりアドバイスをするという指導です。(つづく)

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知能を高める教育(その9) as/188.html
森川林 2007/10/11 11:26 
 知能を高めるためには、(1)パラダイムのある本を読む、(2)本をパラダイム的に読む、の二つが大切だと書きました。
 パラダイムのある本とは、いわゆる昔から読みつがれている古典です。
 本をパラダイム的に読むとは、大人と子供が共通に読んでいる本をもとに、大人がパラダイム的な読み方を生活の中で実践することです。
 例えば、大人にも子供にもよく知られている本「桃太郎」を例として説明しましょう。
子:「ぼくのところのサッカーチーム、A君は足が速いけどパワーがないし、B君はうまいけど自分ひとりでやっているし、C君は明るいけどスピードがないし……、何とかならないかなあ」
父:「うーん、そうだね。『桃太郎』は、犬や猿やキジの欠点を直して戦ったのではなく、それぞれが自分の持ち味を出して戦ったんだろう。そう考えれば、何か別の見方ができるんじゃないかなあ」
子:「あ、そうか。A君はかみつき、B君はひっかき、C君は相手の目をつつけばいいんだ」
父:「違うだろ」
 一度、こういう読み方に気づいた子供にとって、「桃太郎」という本は、単なる表面的な物語ではなく、現実を読み取る道具となります。
 パラダイム的に読むための前提は、大人と子供に共通に読める本があることです。そういう本がたくさんあることがその国の読書文化の豊かさです。決して新しい本が次々と出版されることではありません。
 しかし、親が昔読んだ本をそのままの形で出版しても、子供は読みたがりません。そこで、日本の伝統である換骨奪胎や本歌取りが生きてくるのです。
 日本の長い歴史的伝統の中には、きわめて優れた書物があります。しかし、それらの古典の多くは、岩波文庫などで博物館的に保存されていることが多く、現代に活用される形にはなっていません。それらの本を現代の言葉で復活させることが今後の読書文化の大きな柱になると思います。
 歴史的な伝統を受け継いでいないという点では、現代の親の世代もまた、日本の読書文化の伝統から切り離された浮き草のような読書を続けてきた世代です。欧米に匹敵するかそれ以上に深い伝統を持つ日本の文化を現代に生かすことが、これからの私たちの課題になると思います。

 以上、頭をよくする方法をまとめると、
1、親が昔読んだ本を子供にも読ませること
2、親子の共通の読書文化を背景に親と子が対話をすること
3、子供に、日本や世界の古典を読ませること
4、親自身も、日本の古典を新たに読むこと
となると思います。

 試験で他の人よりもよい点数を取って、成績を上げたりどこかに合格したりすることは、もちろん重要なことですが、単なる手段です。この手段を達成するために必要なことは、二次元的で量的な勉強です。
 しかし、勉強の本当の目的は、三次元的で質的な頭のよさを育てることです。そのためには読書が必要で、その読書は、小学校低学年のころはたくさん読む多読、学年が上がるにつれて、親の世代が読んだものと同じような古典を読む古読と、親子の対話で読書を生かす対読、更に、パラダイムの創造に役立つ難読、やがてもっと成長したら自分の未知の分野を広げるための新読、という方向で進めていく必要があると思います。(おわり)

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