●現代に復活させる寺子屋教育の方法(2)家庭教室と寺子屋オンエア
第二は、家庭教室と寺子屋オンエアです。
家庭での自習を、地域で複数の子供たちを集めて行う場が家庭教室です。この家庭教室を、週1回の作文指導を行う森林プロジェクトの教室と結びつける形で広げていく予定です。
地域の子供たちを集めるような家庭教室を作れないところでは、通信で家庭教室を行うことができます。それが寺子屋オンエアという企画です。
オンラインで互いの勉強の様子がわかる状態を作り、先生1人に生徒数人という単位で、生徒がそれぞれの家庭でそれぞれの自習に取り組むという形です。
●現代に復活させる寺子屋教育の方法(3)自習検定試験
第三は、自習検定試験です。
家庭での自習にも、評価という目標は必要です。それが毎月の勉強の範囲を決めた自習検定試験です。
自習検定試験は、ウェブで問題表示、解答、採点ができるようにしています。
検定試験の問題は、自習を普通にやっていればできるような基本的なものを中心にします。また、できなかったときは同じ範囲をもう一度取り組みます。できる子は学年を超えて先に進むことができます。
この自習検定試験も、オープン教育で作成していきます。
●ネットを利用した教育と教育の個性化が創造文化の裾野に
効率教育によって子供たちの学力を確実につけるとともに、余裕のある子どもらしい生活を送れるようにすれば、それが、作文を中心とした創造教育を広げる前提になります。
しかも、ウェブを利用した効率教育には、教育の内容も個性化できるという利点があります。例えば、ウェブの講座として、ロボットプログラミングなどもこれから普及するでしょう。
既に、アメリカでは、教育にインターネットを利用するさまざまな新しい試みが行われています。この点で、日本のネット利用教育はまだ立ち遅れています。しかし、教育の正否を決めるものは、教育の方法ではなく内容です。
ネット教育というインフラが普及したあとに重要になるのは、教育の中身です。その中身は、効率教育を更に効率化することではなく、教育の個性化を進めていくことです。この個性化した教育が、将来の創造文化の裾野を形成します。
人間の創造性を価値の源泉とする社会は、一方で創造教育によって、もう一方で創造文化によって、人間の生活の中に根をおろしていくのです。
●現代に復活させる寺子屋教育の方法(1)家庭での自習
では、現代に復活させる寺子屋教育とは、どのようなものになるのでしょうか。
言葉の森では、寺子屋式の効率教育を進めるために、次のような計画を立てています。
第一は、家庭における自習です。
1番めの自習は、漢字の読みの先取りです。
現在の国語教育のように、学年別に配当された漢字の読みだけを学習していては、子供たちは学年別の本までしか読めません。現代の国語教育は、子供たちの読書の世界を児童図書に限定させています。
言葉の森は、新しい漢字学習のために、教育漢字約1000字と常用漢字約1000字の暗唱用の漢字集を作成しています。この漢字集で漢字の読みだけを先取りしたあとに、漢字の書き取りについては学年相当のものに取り組んでいきます。
2番めの自習は、英語の長文暗唱です。
語学は、小学校4年生から6年生の時期に、その言語で書かれた文章を丸ごと暗唱することによって土台が形成されます。
小学校3年生以下の外国語教育は、子供の母語である日本語能力の形成を阻害するおそれがあります。
中学生以降の教科書的な外国語教育は、知識を先行させる点で、その外国語の感覚を作る面での弱点があります。
小学校4年生から6年生は、外国語学習の最適期ですが、その学習法は、この時期に中学生以降の知識的英語を先取りすることではありません。英語を丸ごと聴き、読み、暗唱することによって、英語の感覚を作っていくことが大事です。
3番めの自習は、算数数学の問題演習です。
算数数学の勉強で重要なことのひとつは、計算の正確さと速さです。もうひとつは、問題の解法の理解です。
算数数学の勉強は、基本的な学力をつけることを目的にし、その学力をある程度まで先取りしていくという方法で取り組みます。
受験勉強的な意味で差のつく、間違えやすい、読み取りにくい文章題などの問題を、学年の早い時期から解く必要はありません。そういう難問は、基礎学力さえついていれば、受験の前の1年間の取り組みで十分に間に合うからです。
また、律儀に学年で定められた範囲までの勉強にとどめておく必要もありません。基本的な学力をつけるだけであれば、学年を超えた先取りは自然に行えます。しかし、それは先取り学習を目的としたものではなく、算数数学の世界を楽しむために自然に先まで進みたくなるという勉強にしていく必要があります。
この算数数学の勉強の教材は、市販の手に入りやすい問題集や参考書です。教科書は、教える先生の解説がないと使えない仕組みになっているので、教科書ではなく教科書レベルの詳しい問題集や参考書が必要になるのです。
4番めの自習は、日本語の長文の音読と暗唱です。
音読する長文の基準は、現代の日本語で書かれた美しくわかりやすい説明文です。
科学や社会や人生について考えを深められるような構造的な内容を持ち、リズミカルな文体で、時に明るい笑いがあり、勇気と知性と愛と日本文化を感じさせる文章の長文を教材にしていく必要があります。
こういう長文を、オープン教育でオリジナルに作成し、子供たちの理解力、思考力、表現力の基礎を作ります。
そのほかの自習には、読書、問題集読書などもあります。
また、将来は、理科、社会、音楽、体育、ロボットプログラミングなどの多様な文化的自習も行えるようになるでしょう。