ベネッセ教育総合研究所の「小中学生の学びに関する実態調査」によると、「上手な勉強のやり方がわからない」という子供が、小学生で40%、中学生で55%もいるということです。(調査対象の小学生は小4~小5、中学生は中1~中2)
「上手な勉強のやり方がわからない」から、「やる気がおきない(小40%中56%)」し、「勉強に集中できない(小33%中44%)」し、「勉強したことをすぐ忘れてしまう(小28%中40%)」し、「テストでよい点数がとれない(小25%中53%」ということなのです。
では、なぜ、上手な勉強のやり方がわからないのでしょうか。
それには、小学校低学年からの勉強のやり方が影響しています。
勉強とは、教科書に載っている知識や技能を身につけることです。だから、教科書あるいは教科書的な参考書を何度も繰り返して自分のものにすればよいのです。
ところが、今の社会では、勉強の結果がテストとして評価されます。その最終的な形が受験というテストの評価です。
こういうテストによる評価を目にしていると、親も子も、ついテストの点数をよくすることが勉強の目的だと思ってしまうのです。
テストの点数というのは、勉強の目的ではなく勉強の結果です。勉強がしっかりできていれば、テストも自然によい結果になります。
だから、勉強に力を入れればよいのですが、テストを勉強の目的のように考えてしまうと、本当の勉強ではなくテスト的な勉強をしてしまうのです。
テスト的な勉強というのは、問題集の問題を解く勉強です。
問題を解く勉強というのは、形がはっきりしているので、子供に取り組ませやすいという事情があります。そして、解いたあとがやはり形として残るので、勉強をしたという実感がわきます。
こういう勉強法は、小学校低学年のときにはうまく行きます。低学年のころは、身につける勉強の中身がまだ単純なので、問題を解けばそれがほとんどそのまま身につきます。
その結果、この小学校低学年のときにうまく行った「問題を解く」という勉強がその後も続いてしまうのです。
しかし、やがて、いくら勉強をしても、そのわりに成績が伸びないという時期がやってきます。同じように勉強しているつもりなのに、その勉強をしている子供どうしの間で成績の差が出てくるのです。
これが、その後の「上手な勉強のやり方がわからない」という調査結果につながります。(つづく)
入学時の偏差値より、卒業時の偏差値を確実に上げている学校があります。
その学校の勉強のさせ方のコツは、「毎日の」「復習」だそうです。
復習というのは、学校で習ったことを家でもう一度復習するということです。
要するに、同じ教材を何度も定着するまでやるということです。
難しいのは、それを「毎日」やらせることだそうです。
小中学生のほとんどは、勉強に対する自覚はありません。親や先生に言われているからやっているだけで、自分の内面から勉強をするという動機は出てきません。
だから、毎日勉強させるというのは、実はかなり難しいことなのです。
多くの子供子は、宿題があるからやる、テストがあるからやる、やらないと叱られるからやる、という勉強の仕方をしています。
それは、逆に言えば、宿題がなければ、テストがなければ、叱られる心配がなければやらないという勉強の仕方です。
テストの前などにたまにがんばって長時間勉強するというのは、テストには役立ちますが、実力をつけるのには役立ちません。
だから、結局長い目で見ればテストにも役立ちません。
毎日の勉強の習慣は、低学年のうちに作られます。低学年のうちに、毎日の勉強の習慣をつけておくのです。
毎日ですから、平日も土日も同じように毎日やることが大切です。
大人の世界では、平日は仕事をするから土日は休みという発想になりがちですが、子供の勉強生活はそうではありません。
子供のころは、1日の例外もなく毎日同じようにやっていく方が楽にできるのです。
家族で旅行に行くときも、毎日の勉強の教材のうち幾つかは持っていきます。
そして、旅行先でも、たとえ分量は少なくしても同じ勉強を同じようにしていきます。
こういう毎日の必須の勉強として取り組みやすいのは、長文音読と読書です。ただ開いて読むだけですから、どこでも気軽にできます。
この音読と読書を軸にして、毎日の勉強の習慣をつけておくとよいのです。
子供たちの毎日の勉強を支援する仕組みとして、言葉の森が今考えているのは、寺子屋オンエアのシステムを普及させることです。
これは、子供たちが自宅にいながら、都合のよい時間帯にインターネットにアクセスして、先生に自習を見てもらうという仕組みです。
こういう勉強の仕方をしていると、学力がつくだけでなく、勉強をするということに対して自覚が出てくるのです。