樹木に年輪があるように、人間も年輪のようなものを形成しながら成長していきます。褒められて伸び伸び成長する時期と、叱られて又は苦しいことに耐えて強くなる時期とが、誰にも交互にあるのです。
子育ての場合、寒い季節と暖かい季節のそれぞれの役割を表すのが厳父慈母という言葉になります。
しかし今の社会では、父は会社からの帰りが遅く、母もまた仕事に出ているために子供に接する時間が限られているので、両親の役割分担が上手く出来ません。そのため母がひとりで甘い役割と辛い役割を兼ねなければならないことも多いのです。
ところが、一人二役はそう簡単なことではありません。
江戸時代の寺子屋では、伸び伸びとした子育てをしていましたが、それでもたまに先生が子供を厳しく叱らなければならない場面がありました。その時に、見るに見兼ねる形で登場するのが、その子に代わって叱られ役となるおばあさんだったのです。
厳しく叱っている先生がしばらくして叱るのを止めて元に戻れば、子供は、どうせ叱られても大したことはないと思ってしまいます。おばあさんが、かろうじて間に入ることによって、子供はおばあさんが来てくれなかったら大変なことになっていたと考えることが出来たのです。
叱ることと許すことの一人二役はこのように本来難しいものなのです。
しかし、現実にはこの一人二役をこなさなければならない場面は数多くあります。親はその子の状況に応じて怖い親と優しい親の両方を演じ分けなければならないのです。
「葉隠」にこんな言葉があります。「刀というものは、たまに抜かなければ錆び付く。しかし抜いてばかりいては人は寄り付かない」。叱ることと褒めることの両立も、この刀のようなものです。
ここで役立つ一人二役の方法が、勉強には甘く、態度には厳しくです。
子供は、学校でも塾でも勉強が出来なければ、叱られるとまではいかなくても否定的な評価をされます。しかし、親はそれに輪をかけて叱ったりはしないのです。
例えば、子供がテストで悪い点数を取って帰り、それを親に見せた場合、親は優しく励ましてあげるだけなのです。
しかし、子供が嘘をついたりずるいことをしたりした時には、それがどんなに小さなことであっても厳しく叱るのです。これが勉強には甘く態度には厳しくです。
では逆に、勉強には厳しく態度には甘くだとどうなるでしょうか。それは厳父慈母の逆の厳しい母と優しい父のような関係です。
この環境では子供はバランスよく成長しません。何故なら勉強に関しては厳しくしようとすれば幾らでも厳しくすることが出来るからです。すると、樹木でいうと年中小言を言われているような長い冬があり、たまに気まぐれの暖かい春がやってくるというような環境になります。
こういう環境では極端に言うと、子供は点数には極度にこだわり、見つからなければカンニングも辞さないという一方、人に注意されてもすぐには言うことを聞かないというような聞き分けの悪い子に育ってしまう可能性があるのです。
日常的に長い時間接する母は優しく、たまに接する父は厳しくというのが子供の成長にとっては、やはりいちばん合っているのです。
そして、それを母親がひとりで実践する方法が、勉強には甘く態度には厳しくという育て方なのです。
雨上がりのシイノキの葉に光っていた雫
言葉の森では、今後、作文指導に加えて、オンエア講座を広げていく予定です。
その理由は、子供たちの真の成長を考えると、作文の勉強のもとになる全教科のバランスのよい学力を高めていく必要があると思ったからです。
しかし、それは言葉の森が、単に学習塾や予備校の二番煎じをやることではありません。
今の教育界を見ると、根本的な問題があり、その問題を解決する方向は見つかっていないように思えます。
それは、一つには、早期化、長期化、高額化する教育にもかかわらず、学力が十分に身についていない子供が増えていることです。もう一つには、成績がよいと言われる子に、本来あるべき創造性、思考力、文化性が伴っていないように見えることです。これは、普通に成績がよい子よりも、特に成績がよい子の方に問題があります。つまり、勉強のし過ぎで成績だけがよくなっている子が増えているのです。
この問題の所在を考えると、これからの教育に次の4つの視点が必要になってくると考えられます。
第一は、受験の教育から、実力の教育へです。
第二は、学校・塾の教育から、家庭・地域の教育へです。
第三は、点数の教育から、(点数の見えない)文化の教育へです。例えば、思いやりとか勇気とかいうものが点数として見えないものです。
第四は、競争の教育から、創造の教育へです。これは、将来の仕事にもあてはまります。人よりよいところに就職しようという考えから、今後は新しい仕事を自分で作ろうという方向が徐々に増えてくると思います。
こういう教育を行う際に、今大きな制約になっているものが従来の教育観です。
従来の教育観とは、教室があり、教材があり、先生がいるという教育観でした。
よい教育を受けようとすれば、よい教室、よい教材、よい先生が必要になり、そのよい教育を受けるためには、高い競争率と高い月謝が必要だと考えられていたのです。
しかし、どの塾や学校を見てもわかるように、それらの条件は決して決定的なものではないのです。三拍子そろった「よい教育」を受けても落ちこぼれていく子はいます。また三拍子がそろっていない「悪い教育」を受けても立派に成長する子もいます。むしろ、そういう子の方がずっと多いのです。
では、その違いはどこから来ているかと言えば、家庭の文化と両親の姿勢と本人の意識から来ているのです。
大昔は、教室に行って勉強を教えてもらうのでなければ、場所も、教材も、先生も手に入りませんでした。今でも、途上国の教育は、こういう学校・教材・先生を必要とする教育です。
しかし、現代の日本では、家庭で、自由な教材を使って、親子で又は独学で、十分に優れた教育を受けることができます。そして、同じ学校や塾に通っているのに差が出るというのは、この家庭での生活のスタイルが違うからなのです。
そこで、言葉の森では、オンエア講座として、教室も、教材も、先生ももっと後景に退き、家庭と両親と本人が前面に出るような教育をしようと考えたのです。
これを、無料のクラウドサービスであるgoogleハングアウトを使って行います。今のパソコンの多くはカメラ内蔵なので、ハードの準備は必要ありません。また、パソコンでなくスマホやタブレットで参加することもできます。
しかも、ネットを使った教育ですから、どんな遠方からでも参加できます。
まず、小1~小3は、読書実験クラブという名称で、次のようなことを行います。
(1)読んでいる本の紹介
(2)説明文の本や文章の読み聞かせ
(3)その読み聞かせをもとに構想図(構成図)を書く
(4)その構想図をもとに子供が後日両親に読み聞かせの内容を説明
(5)両親が似た話を話す形で子供と対話
(6)その構想図をアップロード
(7)説明文の内容をもとに実験や観察を行った家庭があればそれを記録したアップロード
(8)次の週は、読んでいる本の紹介以外に、それぞれの構想図や実験観察の記録を紹介
これを7、8人の少人数で、保護者も参加できる形で行います。また、参加できない日があった場合も、あとで動画の記録が見られるようにしています。
そして、週1回の参加だけでなく、週の途中に、自由に読書チェックなどの希望日を入れることができるようにします。
小学校1~3年生は、勉強は学校だけで十分です。学校だけでは練習が不足する場合でも、家庭学習で勉強する教材を決めておけばそれで十分に対応できます。この時期に、更に勉強の成績を上げるような試みは、かえって子供の学力も創造力も低下させます。
この時期の真の学力の伸長は、読書と経験と対話によって決まってくるのです。
小1から小3の時期に、このような家庭学習のスタイルが作れれば、その後の家庭学習は更にスムーズに進んでいきます。
次に、小4~小6です。この学年は、思考国算講座という名称で、公立中高一貫校受験に対応できる、考える力をつける国語と算数の勉強をしていきます。
(1)読んでいる本の紹介
(2)公立中高一貫校入試の作文試験の問題文を読み構想図(構成図)を書く
(3)その構想図をもとに子供が後日両親に問題文の内容を説明
(4)両親が似た体験談を話す形で子供と対話(公立中高一貫校入試の作文は体験をもとにという条件が多いので、両親の体験をもとに自分の体験を広げる)
(5)その構想図をアップロード
(6)公立中高一貫校入試の算数の問題を解き、答え合わせをし、解法を読み理解する
(7)小4~小5でまだ習っていない単元になる場合は、入試問題は解かずに、算数の学習の学年先取りを行う
(8)算数の問題をもとに、自分で似た問題を作った場合はその問題・解答・解法をアップロード
(9)次の週は、読んでいる本の紹介以外に、それぞれの構想図や似た問題の記録を紹介
今の公立中高一貫校入試は、初期のころと比べると、考える問題が出尽くしてきた面があり、考える問題から次第に解法を身につける知識の問題になりつつあります。したがって、成績を上げるためには知識の詰め込みを行わなければなりませんが、詰め込み勉強では、かえって本当の学力は低下します。
受験に勝つコツはまた別に説明しますが、ここでは受験を超えて真の学力をつける学習を目的としていきたいと思います。
小4~小6は、親子の共同学習がうまく行かなくなり始める時期です。しかし、この時期に、勉強と対話の面で親子の協力ができれば、それはその後の中学生以降の家庭学習にも生かしていくことができます。
この思考国算講座も、週1回の参加だけでなく、週の途中に、自由に勉強チェックなどの希望日を入れることができるようにします。
中1~中3は、計画先行学習講座という名称で、中学生の定期テスト対策をするとともに、学校の成績を超えたより高度な国語、数学、英語の学習の先取りをしていきます。
(1)読んでいる本の紹介(中学生の時期こそ読書に力を入れる時期だからです)
(2)定期テストの勉強計画、テストの結果、今後の方針などを入力する
(3)それぞれの勉強計画についてのアドバイス
(4)難度の高い国語問題の演習で、国語問題の解き方のコツを学ぶ
(5)自主学習として、国語の問題集読書、数学の先取り学習、英語の先取り学習を行う
(6)先取り学習の状態のチェック
中学生のテストの成績を上げるコツは簡単です。要するに計画を立てて勉強をすればいいだけです。しかし、現在は多くの中学生が、塾に言われたままの勉強をしたり、無計画にその場の思いつきで勉強したりしています。その勉強計画を自覚的に立てれば成績はすぐに向上します。
しかし同時に、学校の定期テストを勉強の目標にしてしまうと、学習内容はかなり薄まります。高校に進んだときにも役立つような考える学習と、1学年分の先取り学習を独自に進めていく必要があります。
私立中高一貫校が大学入試で高い実績を上げているのは、公立高校に比べて数学で約1年から2年の先取りを行っているからです。数学は、かけた時間によって差がつく教科なので、1年間早く受験数学の勉強をできるかできないかは、入試に大きな影響を与えます。だから、この数学を、公立高校であっても独学形式で先取りしておけばいいのです。わからないときの質問コーナーさえあれば、高校生はどの教科も独学でやっていくことができます。
この計画先行学習講座も、週1回の参加だけでなく、週の途中に、勉強チェックなどの希望日を入れることができるようにします。
以上のオンエア講座の資料を現在編集中です。
資料を希望される方は、言葉の森までお電話でご連絡ください。お送りします。
電話0120-22-3987(045-830-1177)平日9:00~20:00(この時間帯以外は留守電になっています)
なお、これらのオンエア講座講座はいずれも、言葉の森の生徒以外の方も受講できます。