今、馬に乗ったり、剣術の練習をしたりする人はいません。しかし、江戸時代はそれらが誰でもできるということが常識でした。
世の中は大きく変化しています。身近なところでは、小売業の世界ではアマゾンの一人勝ちが更に進み、その他のプレーヤーはすべて負け組になりつつあります。(「the four GAFA 四騎士が創り変えた世界」より)
そして、アマゾンの一人勝ちが進むことによって、これまで小売業が吸収して雇用は、急速に失われています。
これと同じことが、社会のあらゆる面で起きてくるというのが、これから来る未来の社会に待っている事態です。
ときどき、生徒のお母さんから、「漢字が苦手なのですがどうしたらいいでしょう」という相談を受けます。漢字の書き取りは、勉強時間に比例します。既に書ける人から見れば簡単に見えることであっても、その習得にはかなり長い時間がかかっています。しかし、それに必要なのはかけた時間だけです。
漢字のテストは毎回満点、計算は人よりも何倍も速く正確にできるという能力を子供が持っていたとしても、その能力が、今後社会に出てから世の中を渡っていく武器になるかというとそういうことはもうありません。できないよりもできた方がいいが、できなくても特に問題はないという程度の能力なのです。
同じことは、今行われている勉強のかなりの部分で言えることです。小中学校の義務教育時代の勉強は、誰でも大体できていればいいのであって、そこで高得点を目指すものではありません。
しかし、実際には、試験に合格するために、80点を90点にしたり、90点を100点にしなければなりません。
それは、時間をかければ誰でもできることですから、そこに時間をかけた分、もっと大事なことに費やすべきだった時間が削られているのです。
では、費やすべきだった時間は何かと言えば、それはこれから来る社会でたくましく生きていく能力を育てるための時間です。
その能力さえ育てておけば、今勉強として行っているようなことで80点を90点にするとか、90点を100点にするとかいうことは、あとからいくらでもできます。
大事なのは、真の学力を育てておくことであって、テストの点数に表れる表面の学力を育てることではありません。テストの学力は、真の学力の結果であって、テストの学力が目的ではないのです。
では、その真の学力は何かと言えば、それは、学校で行われている勉強をもとにした思考力と創造力です。
学校で行われている勉強ができるということは、出発点にすぎません。それは、やればだれでもできるようになることだからです。大事なことは、その出発点から自分なりに考える力と、それを更に創造的に発展させる力を育てていくことです。
しかし、思考力と創造力は、何もないところから生まれるわけではありません。ぼんやりテレビゲームをしながら思考力と創造力を伸ばすということはまずありません。やはり、現在の学問の世界をもとにして伸ばす能力なのです。
言葉の森では、発表学習コースという名称で、子供たちが自分なりの勉強や実践を毎回発表するという勉強を行っています。
発表する素材の中には、理科や社会の勉強もあれば、教科の範囲にない自分の興味の分野もあります。国語や算数数学の分野もあれば、作文や暗唱の分野もあります。また、自分が行ったさまざまな経験の発表もあります。
それぞれ、自分の行った勉強や実践を、自分なりに学問的に深め、それらを創造的に発表しています。
小学校低中学年の場合は、保護者の協力も必要ですが、その保護者との協働や対話の中で、子供たちは学問の面白さや創造の面白さに目を開かれていきます。
そこで行われている勉強は、ただ知識を覚えてテストで百点をとればいいという勉強ではなく、自分なりに考えて表現する勉強です。
こういう勉強を通して身につけた思考力と創造力が、これからの社会で子供たちが生きていくための本当の武器になるのです。
今はまだ多くの人が、理屈では、世の中が大きく変わるらしいとは思っていても、実感としてそう感じているわけではありません。
そのため、とりあえずは学校の成績さえよくしておけば、あるいは、いい学校に入ることさえできれば、それから先は子供が自分でうまくやっていくだろうと考えています。
しかし、時代はもうそういう牧歌的な見通しが通用する社会ではなくなっているのです。
未来の社会は予測できません。ある程度の予定は立てられても、本当のことはわかりません。しかし、どういう時代になっても、思考力と創造力さえ育てておけば、その社会で自分なりに活躍する場を作ることができます。
そして、それは単に試験でいい成績を取るということとは別の、独自に育てていく能力と、そのための生きる姿勢なのです。
発表学習コースの時間割はこちらです。
▽発表学習コースのクラス一覧表
| 月 | 火 | 水 | 木 | 金 |
1700 | ■なね先生[学] | ■なね先生[学] | | | ■なね先生[学] |
| | ちはや 小3 女 | | | |
| | かんたろ 小3 男 | | | |
| | ゆう 小1 女 | | | |
1800 | ■なね先生[学] | ■ゆり先生[学] | ■かなた先生[学] | ■むらた先生[学] | |
| | 花 小2 女 | リンリン 小3 女 | 瑞風 小3 男 | |
| | リリー 小3 女 | なおや 小3 男 | ゆうゆう 小4 男 | |
| | あーちゃ 小4 女 | ねこ 小3 女 | | |
| | | ばら 小3 女 | | |
| | | | ■とおか先生[学] | |
| | | | バレリー 小3 女 | |
| | | ■きら先生[学] | なつ 小3 女 | |
| | | 謙信 小2 男 | ゆり 小4 女 | |
| | | ドラゴン 小4 男 | | |
| | | こうき 小3 男 | | |
| | | ヨーヨ 小3 男 | | |
1900 | | ■つかだ先生[学] | ■おおにし先生[学] | | ■きら先生[学] |
| | 紫式部 小4 女 | リリー 小5 女 | | 金メダル 小3 男 |
| | 毛利元就 小4 男 | あお 小6 男 | | さとしゃ 小4 男 |
| | 信玄 小4 男 | Jupi 小6 女 | | クレヨン 小3 男 |
| | 清正 小5 男 | | | カレー君 小5 男 |
| | 早雲 小5 男 | | | E231 小5 男 |
| | 忠勝 小5 男 | ■とうこ先生[学] | | もりちゃ 小3 男 |
| | 政宗 小6 男 | 四季島 中1 男 | | |
| | | さやさや 中1 女 | | |
| | | さとみ 中1 女 | | |
| | | サーサ 中1 男 | | |
※現在は、言葉の森の生徒であることが受講の条件になっています。それは、勉強の一部が作文の勉強と関連しているからです。
この記事に関するコメント
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発表学習コースは、これまでの勉強の枠に収まらない教育です。
しかし、将来はこれが子供たちの勉強の一つの新しいスタイルになってくると思います。
それはなぜかというと、発表のレベルが高いこともありますが、それ以上に子供たちが自由に生き生きと参加しているからです。
発表学習コースは、普通の勉強らしい勉強ではありませんが、むしろそれよりももっと知的です。それは、子供たちが自分で考えながら発表しているからです。
学校の勉強で余裕のある人はぜひ参加してもらいたいのですが、今はそういう子はあまりいないかもしれません。しかし、もちろん勉強で忙しい人にとっても、将来必ず役に立つ勉強になると思います。
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言葉の森では、現在、寺子屋オンライン作文という、ウェブ会議システムを使った少人数の作文クラスを開いています。
5、6人までの少人数で行うクラスなので、全員が発表をしたり感想を述べたりすることができます。
学校などで少人数学級という場合、その人数は20人から30人ぐらいです。
これぐらいの人数であれば、先生の目もある程度行き渡りますが、一人ひとりが発表するようなことまではできません。
それは、発表に1人3分かかったとしても、20人なら1時間、30人なら1時間半です。質問や感想を述べる時間を確保しようとすれが、すぐに2時間や3時間はたってしまうからです。
だから、20人や30人の少人数というのは、参加型授業ではなく、従来の一斉指導をもとにした少人数なのです。
しかし、人数が少なければいいというのではありません。
最も少ない少人数は、先生1人に生徒1人という関係です。
この場合は、家庭教師のような感じになりますが、じっくり面倒を見てもらえるというプラス面もあると同時に、次のようなマイナス面もあります。
それは第一に、コストがかかりすぎることです。コストというものは、成果との関係で評価できますから、きわめて高い成果を出すのであれば、そのコストはそれに見合って高くなっても問題はありません。
しかし、1対1のコストをカバーできるような成果を上げる教育は、受験期の集中指導やきわめて高度な指導かのいずれかだけで、通常はそういう指導は成り立ちません。
1対1という少人数のマイナス面の第二は、生徒に先生に対する依存心が出ることです。
売りて市場、買い手市場という言葉がありますが、相対的に少ないものの方が多いものよりも優位に立つという関係はどの分野でも成り立ちます。
生徒の数が少ないと、生徒は先生に甘える面が出てくるのです。
例えば、
先生「宿題やってきた?」
生徒「あ、ちょっと忙しくてできなかったんです」
先生「そう。じゃあ、今度はちゃんとやってきてね」
という流れになってしまうことがあるのです。
では、生徒一人ひとりが参加できて、しかも、生徒が先生に依存しないぐらいの少人数はどのくらいかというと、これまでの経験から考えると5人前後です。
しかし、この5人前後の少人数というのは、実はきわめて作りにくい人数なのです。
たまたま5人前後になるということはあっても、意識的に5人前後を維持して授業を行うというのは、普通の学校や塾ではまずできません。
大人数の一斉指導か、1対1の個別指導か、どちらかになるのが普通です。
しかし、もしこの5人前後の少人数を維持できるのであれば、その少人数は、授業に新しい面白さを生み出します。
それは、生徒どうしが交流できるということです。
小学校1、2年生のころは、子供の関心は主に親や先生に向かっています。
友達にどう思われているかということはあまり意識にのぼりません。
ところが、小学4年生以上になると、親や先生にどう思われるかということよりも、友達にどう思われるかということが重要な関心になってきます。
これがいたずらの方向に進めば、ギャングエイジの行動となりますが、勉強の方向に進めば、切磋琢磨という方向に進みます。
言葉の森の寺子屋オンライン作文クラスは、まだ始めたばかりなので、交流を重視しすぎたり、指導を重視しすぎたりという多少試行錯誤の面がありました。
しかし、だんだんと指導と交流の配分がわかってきました。
先生がある程度教えるが、教えるばかりでは生徒は面白くない、しかし、生徒の交流ばかりでは指導が後回しになってしまう、また、生徒の交流でも、小4以上の他人を意識した交流と、小3以下の他人をあまり意識しない交流では、生徒の間でもずれがある、などいろいろな要素を考えなければならないことがわかってきました。
こういうことを一から考えなければならないのは、やはり5人前後の少人数指導で、特に作文指導というものが、まだ世の中にないからです。
この新しい少人数指導が言葉の森でできるようになったのは、第一に独自の項目指導と事前指導という方法があったからで、第二にZoomやgoogleハングアウトというウェブ会議システムの作れるクラウドサービスがあったからです。
だから、ほかの学校や塾の作文講座では、まず同じことはできないと思います。
学校や塾では、従来の一斉指導と、個別添削と、優秀作品の発表というようなある意味でどこでもできる方法で作文指導をせざるを得ません。
ところが、それで子供たちが熱心に作文の勉強に取り組むようになるかというと、それはかなり難しいのです。
作文の勉強は、○×のつく勉強と比べると、手を抜いて書こうと思えばかなり手を抜いて書くことができます。
そのかわり、熱心に書こうと思えば、その子の実力いっぱいの力作も書けます。
こういう熱心さが、作文指導の効果を左右します。
5人程度の少人数の作文指導の意義は、子供たちが互いの交流の中で、自然に熱心に作文を書くようになるというところにあります。
そして、作文の交流以外に、読んでいる本の紹介など、より幅広い交流もできるようになります。
この新しい作文指導の方法をこれから広げていきたいと思っています。
▽現在、寺子屋オンラインの体験授業ができるようになっています。
詳細は、こちらに。
https://www.mori7.com/kform_pre.php?f=tkg201809
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作文が楽しく書けて上達する、というのは言葉の上では簡単に言えますが、実際にはなかなかそういうことはできません。
作文はもともと苦しい勉強ですし、また、もし準備もあまりせずに楽に書いているだけだとしたら今度はなかなか上達しません。
しかし、友達との交流のある作文指導の場合は、楽しく書けて上達するということが起こりうるのです。
それは、少人数クラスでは、ほかの人にどう見られるかという意識が働き、自然によりよいものを書こうと思うようになるからです。
Zoomのウェブ会議教室は、リアルな通学教室よりも、生徒の交流度が高まります。
通学教室では、生徒は横並びですから、互いに話すときは横を向いたり後ろを向いたりして話さなければなりません。
ウェブ会議教室では、みんなが正面を向いて話せます。
だから、よけいに相手のことが身近に感じられるようなるのが早いのです。
これは、ウェブ会議システムの大きな長所です。
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