都立の日比谷高校の2018年の東大合格者は48人でした。
その他の都立高校も、国立高校26人、西高校19人、戸山高校11人と、進学実績を大きく伸ばしています。
この都立高校の復権という現象を支えているものは、それまでの学校群制度が廃止されて、東京都全域が一学区になったことによるものです。
2000年代以降は、全国的に公立高校の学区が拡大される傾向にあります。
ところで、言葉の森の課題の長文の中に、「島の動物と大陸の動物」の話があります。
小さい島では、競争相手が少ないので、ネズミは大きくなり、ゾウは小さくなります。
その反対に、競争相手が多い大陸では、ネズミは小さくなり、ゾウは大きくなるというのです。
もともと大きかった動物が、更に大きくなるというのが、広い大陸に棲む動物の特徴です。
公立高校の復権は、学区が拡大されたことにより、広い範囲の優秀な生徒が少数の学校に集まったことによるものです。
母集団が大きくなれば、それだけよくできる生徒も、よくできない生徒も人数が増えます。
そのよくできる生徒が、一つの学校に集まれば、その学校のレベルが上がるのは当然です。
この大きな学区ということから考えてみると、言葉の森の生徒は全国から来ていますから全国一学区です。
今は、海外からの生徒も多いので、全世界一学区とも言えます。
そのため、作文が好きで得意だから来たという、もともと作文がよく書ける生徒もかなりの割合でいます。
その反対に、作文が苦手で全く書けないから来たという生徒も、同じようにいます。
すごく得意な子も、すごく苦手な子も、どちらも言葉の森の生徒になっているのです。
これまでは、この全国一学区制をうまく生かすことができませんでした。
それは、言葉の森の通信指導が、担当する先生と生徒との一対一の個別指導だったからです。
だから、どういう実力の生徒にも対応できるのですが、生徒どうしの交流のようなものはほとんどありませんでした。
ところが、言葉の森では、数年前に寺子屋オンラインという少人数クラスを始めました。
まだ年数の浅い、多少実験的なクラスですが、このクラスの中で、参加する子供たちが活発に交流できることがわかってきました。
中には、学力も発想力もある優秀な生徒がたまたま集まったというクラスもあります。
その反対に、苦手な子の割合が比較的多くなったというクラスもあります。
そして、そのいずれの場合も、生徒どうしが互いの影響を受けて、意欲的に勉強に取り組むようになっているのです。
これは、先生と生徒の一対一の個別指導ではできない、少人数クラスならではの長所です。
寺子屋オンラインに参加している生徒はまだ60名ほどですから、言葉の森の生徒のごく一部です。
そのために、クラス分けなどが十分にできていませんが、今後参加生徒が増えれば、同じような実力の子が集まるクラスを作ることができます。
また、勉強する教科も、その子の得意分野や苦手分野に合わせたクラスとして作ることができます。
この大きな可能性のある寺子屋オンラインクラスをまだ本格的に募集していないのは、1時間の枠を指導できる講師が不足しているからです。
というのは、言葉の森の講師は、すでに個別指導でいろいろな時間帯の生徒を教えているので、1時間のまとまった枠を取ることが難しいからです。
いずれ、今教えている生徒も、寺子屋オンラインクラスに移行するようになると思いますが、まだすぐには難しいところがあります。
そのために、森林プロジェクトで、寺子屋オンライン講師育成講座を行うことにしました。
少人数クラスを教える講師が増えれば、生徒も同じように増やすことができます。
そうすれば全国一学区制の長所を生かして、同じ学年、同じ興味や関心、同じ実力の子供たちが5、6人で切磋琢磨しながら勉強する環境が作れます。
5、6人というのは、全員が話に参加できる人数ですが、その少人数クラスを横断するもっと大人数の企画も当然できます。
4週目に行っている発表交流会は、普段の少人数クラスの枠を超えて交流できるようにするための企画です。
言葉の森では、今後、全国一学区制の通信教育という条件を生かして、寺子屋オンラインの少人数クラスを広げていきたいと思っています。
寺子屋オンラインの本格的募集を始めようとしていた矢先、これまで生徒の作品発表に使っていたGoogle+のコミュニティが廃止されることになってしまいました。
そこで、今考えているのは、ワークプレイスなどの参加者を限定できるSNSの利用です。
また、ちょうど言葉の森の通学教室の引越しも決まりそうなので、新しい通学教室では、通学でありながらオンラインで授業を受けるクラスもスタートしたいと思っています。
ひらがなばかりで漢字を書く子がいます。
男の子に多いのですが、漢字で書けないわけではなく、漢字で書くのに時間がかかり面倒だからひらがなで書くということです。
これを、「習ってる漢字は全部使って書くように」とか、「辞書を引きながら書くように」とかいう形で指導すると、書くスピードが落ちるので嫌がります。
どうしたらよいかと言うと、漢字で書けそうなところはふりがなを振るような形で小さい字でマス目の横に書いておくといいのです。
作文を一通り書き終えた段階で、その原稿をgoogleドキュメントの音声入力で読み上げます、。
すると、ほとんどのふりがなの部分は正しい漢字に直るので、それを見ながら作文を漢字の部分を書き直すのです。
このように、作文を書く作業と漢字を書く作業を分けて行えば負担はなくなります。
両方を一度にやろうとするから、面倒に思ってしまうのです。
作文だけを先に書き、漢字に直す作業をあとでまとめてやるようにすると、次第に最初から書けそうな漢字は漢字で書くようになります。
子供の勉強をしやすくするために、ITの技術をどんどん利用していくと良いと思います。