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作文の書き出しの工夫は、情景の書き出しで as/3486.html
森川林 2019/01/02 07:34 

「燃えるような夕焼けが空と海を一杯にしていた。今しも水平線に沈む太陽を右に、船は南へ南へと進んでいた。」(「九つの空」(團伊玖磨著)より)

 作文の長さは、600字から1200字ぐらいのことが多いので、書き出しや結びの書き方が重要になってきます。
 書き出しや結びによって、全体がまとまった印象になったり、そうならなかったりします。

 書き出しで大事なことは、読み手が読んでみたくなるような、すぐにクライマックスに入るような書き方をすることです。
 その工夫のあとで、「いつ、どこで、何をしたか」という説明に入っていくのです。

 その書き出しの工夫として、会話で始めたり、情景で始めたり、名言で始めたりという練習があります。
 この中で、最も簡単なのは、会話の書き出しですが、これは誰でもすぐにできる分、かえって印象に残らない書き出しになってしまうことがあります。
 もちろん、小学校中学年の最初の練習のころは、会話の書き出しに慣れていくだけでいいのです。

 しかし、学年が上がって、小学校高学年や中学生になっても、いつも同じように会話の書き出しで始めてしまうと、それはかえって工夫のない書き出しになってしまいます。

 では、どうしたらよいかというと、そのときの情景で書き出しを始めるのです。
 以前、同じようなことを書いたと思って、「言葉の森新聞」を調べてみるとありました。

 小学校高学年以上の生徒のみなさんは、また、小学校中学年でも表現をもっと工夫したいと思うみなさんは、情景の書き出しの練習をしてみてください。

▽言葉の森新聞 第922号より
■書き出しの工夫
 先日、高校生の生徒から、「会話の書き出しってよくないんですか」と質問されました。
 朝日新聞の「炎の作文塾」というコラムで、「会話文から始めないで」という記事があったそうです。その記事では、「文章講座の講師の中に、『文章は会話文から始めなさい』と教える人がいるらしい。そういう講師を信用してはいけない。」「会話文で始めると、独りよがりの文章になりがちだ。文章によほど習熟してくれば別だが、会話文で始めるのは、やめた方がいい。」「○○さんはヘンな講師に習ったのだろうか。」などと書いてあったそうです。思わず、本多勝一氏の「中学生の作文技術」を連想してしまいました。(笑)こういう記事を書く人の視野の狭さは、読み手にも伝染するようで、このようなコラムを読んでいるとつい、「○○をしてはいけない」「○○しかない」という発想をしてしまいがちです。

 文章でいちばん大事なものは中身です。表現は、中身をスムーズに伝えるためにあります。
 私がこれまでに読んだ本で最も難しかったものは、ヘーゲルの「精神現象学」と「大論理学」でした。それは、訳者の訳し方にもよりますが、すべて文末が「である。」で終わっていました。しかも、それぞれの一文が長く、「……である。……である。……である。」という感じで延々と最後まで書かれていました。しかし、中身があるので、その文末の単調さは決して欠点のようには見えませんでした。表現よりも中身が大事という考え方の見本がここにあります。
 ですから、本当は、書き出しの工夫は二次的なことなのです。しかし、もし同じ中身の文章があった場合、読みやすい面白い表現と単調で堅苦しい表現とでは、もちろん読みやすく面白い方に価値があります。特に、現代のように、多くの人が文章を書く時代では、表現の工夫は文章の重要な要素となります。

 表現の工夫の一つとして、書き出しの工夫があります。
 私が、書き出しの工夫として参考としたいと思っているものに、團伊玖磨(だんいくま)氏のエッセイがあります。「九つの空」(朝日新聞社)からいくつか引用してみると、こういう書き出しです。
 「燃えるような夕焼けが空と海を一杯にしていた。今しも水平線に沈む太陽を右に、船は南へ南へと進んでいた。」
 「黄昏(たそがれ)の銀座通りには、一日の勤めを終った人の波が流れていた。夏の残照が、僅かに暮れ残っている天頂近くの数片の鰯雲を紅に染めていて……」
 「夏だと言うのに何処迄も続く鉛色の空を、十五世紀に出来た古い大学の塔が黒い針のように突き刺していて、その針の先だけが……」
 エッセイなのでこういう工夫がしやすいとも言えますが、実は小論文でもこのような書き出しをすることができるのです。
 高校生に書き出しの工夫を説明すると、実力のある生徒は、内容もあり書き出しの表現も工夫した文章を書いてきます。中身と表現を兼ね備えた文章を書くことが小論文指導の一つの目標です。

 しかし、書き出しの工夫には、書きにくいものと書きやすいものとがあります。情景の書き出しなどは、比較的書きにくい書き出しです。情景の書き出しがしにくい場合は、会話の書き出しなどで書きやすく工夫することがあります。
 ところが、表現の工夫には両刃の剣の面があり、ありきたりの工夫では、かえってしない方がいい場合も出てきます。会話の書き出しなどは、特にありきたりになりやすいので、かえって工夫が逆効果になることもあります。
 そこで、その工夫を批判するのは批評家です。教育の観点からは、不充分な工夫であってもその将来の可能性を生かす方向に指導していくのが正しいやり方です。
 今、小中学生で会話の書き出しを練習している人は、この工夫が終点ではなく、今後の工夫の準備であると考えて練習していってください。


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森川林 20190102  
 作文で大事なのは、内容の創造性です。
 しかし、作文の評価をする人の多くは、内容よりも表現の見た目を重視します。
 例えば、「字がへただ」「漢字を使っていない」「字の間違いがある」などなど。
 同じような批評に、「会話の書き出しがパターン化している」というのもあります。
 会話の書き出しは、書きやすい分だけ、かえってありきたりの表現になりがちなのです。
 では、書き出しの工夫をどうしたらいいかというと、そのひとつが情景の書き出しです。
 しかし、本当は、書き出しよりも中身の方が大事なのです。

nane 20190102  
 小学校低学年の子が会話の書き出しを使えば、それは書き出しの工夫です。
 しかし、高学年の子がいつまでも同じ会話の書き出しをしていたらそれは工夫の不足です。
 同じように、高学年の子がことわざの引用をしたら、それは工夫です。
 しかし、高校生の子が、あいかわらずことわざの引用だけで済ませていたらそれは工夫の不足です。
 高校生は、ことわざを加工して引用するところまで要求されるのです。


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森川林 2019/01/01 00:01 

●創造する教育
 言葉の森の2019年のテーマは、「創造する教育」です。
 点数や順位に還元されない個人の創造性を生かす教育を目指していきます。

 これまで、創造性という曖昧なものを育てる方法論はないと思われていました。
 しかし、オンラインの少人数クラスを運営する中で、その可能性が見えてきました。

 人間には、もともと誰にも創造性があります。
 しかし、それが発揮できないのは、答えが次々に与えられるからです。

 答えのある世界から一歩離れて、答えのない世界を進む時間を確保する必要があります。
 そのときに、同じように創造する仲間がいれば、創造の中身は違ってもその楽しさを共有できます。
 この「創造を楽しむ教育」を、小学1年生から始めて、高校生、大学生になるまで続けられるようにしたいと思っています。

●寺子屋オンラインの作文クラス・発表クラス・自習クラス
 「創造する教育」の進め方は、具体的には、寺子屋オンラインのクラス数を増やし、学年別の少人数制の作文学習、発表学習、自習学習を広げていくことです。
 このオンラインの少人数制の学習によって、生徒の学習意欲は今以上に高まると思います。
 点数のつかない教育では、この学習意欲が学力向上の重要な条件になるからです。

●森林プロジェクトの作文講師資格講座・寺オン講師育成講座
 そのために、森林プロジェクトの作文講師資格講座と寺オン講師育成講座で、作文指導のできる講師を増やしていく予定です。
 なお、初めての方でも、この寺オン講師育成講座に参加しやすいように、インターンシップ制を取り入れていきます。

●作文検定、作文発表会などの企画の定例化
 また、言葉の森は、民間団体としては日本で最も古くから作文教育を行ってきた教室です。
 したがって、作文指導に関連する学習分野のさまざまな指導の蓄積があります。
 この蓄積を生かして、今年は、作文検や作文発表会などの企画を定例化し内部の充実を図っていきます(年間予定後掲)。

●「読解力・作文力の本」の出版、国語読解指導
 2月5日に、かんき出版から、「小学生のための読解・作文力がしっかり身につく本」という本が出版されます。
 これは、大学入試を目指す高校生にも役立つ内容で、多くの人は読んですぐに国語読解の成績が上がるはずです。
 しかし、小学生がひとりで読むのは難しいので、保護者の方も一緒に読み、内容理解の手助けをしてくださるといいと思います。

 言葉の森は、これまでは、作文指導に加えて読解指導も行うと生徒の負担が大きいと考え、読解問題などの教材は一部だけを配布してきました。
 しかし、今後希望する人には、この本をテキストにして、読解指導をすることを考えています。

 以上、盛りだくさんの内容になりますが、すべて前向きに進めていきたいと思います。

●言葉の森の企画の年間予定
 作文テスト作文検定保護者懇談会作文発表大会寺オン発表会学力テスト読書作文合宿
1月4週寺オン発表会1月
2月4週作文検定本試験1週保護者懇談会4週寺オン発表会2月
3月1週作文実力テスト1週保護者懇談会4週作文発表大会春合宿/30.31横浜3月
4月4週寺オン発表会4月
5月4週作文検定追試4週寺オン発表会5月
6月1週作文実力テスト1週保護者懇談会4週寺オン発表会4週学力テスト/育伸社6月
7月1週保護者懇談会4週寺オン発表会夏合宿/21-27那須7月
8月4週寺オン発表会8月
9月1週作文実力テスト4週作文発表大会9月
10月4週作文検定追試1週保護者懇談会4週寺オン発表会4週学力テスト/育伸社秋合宿/12.13横浜10月
11月1週保護者懇談会4週寺オン発表会11月
12月1週作文実力テスト1週保護者懇談会4週寺オン発表会12月

●保護者懇談会の主なテーマは、2月新学年、3月家庭学習、5月低学年、6月オンライン学習、7月全般、10月受験、11月家庭学習、12月オンライン学習です。
●寺子屋オンラインクラスの発表会は、毎月4週に行います。この発表会には、言葉の森の生徒は誰でも参加できます。
●担当講師による父母面談は、原則として毎月4週に行います。
●春と秋の合宿は横浜港南台教室(JR根岸線港南台駅徒歩4分。一泊二日)、夏の合宿は那須合宿所(新幹線那須塩原駅から車30分。東京駅集合解散。三泊四日)の予定です。

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