ログイン ログアウト 登録
 Onlineスクール言葉の森/公式ホームページ
 
記事 3497番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2024/11/22
「『作文下手な日本人』が生まれる歴史的な必然」を読んで as/3497.html
森川林 2019/01/11 07:12 

 東洋経済オンラインの記事に、「『作文下手な日本人』が生まれる歴史的な必然――なぜ、日本人は論理的な文章を書けないのか」が載っているのをたまたま見たので、その感想です。
https://toyokeizai.net/articles/-/259129

 ここに書かれていることは、そのとおりです。

 かつて、木下是雄氏の「理科系の作文技術」という本がありました。81刷100万部のベストセラーだそうです。

 今は、その漫画版も出ています。漫画版の方は、元の本とはかなり印象が違うように思いますから、元の本を読むのがいいと思います。
https://tinyurl.com/yamfplw4

 「理科系の作文技術」のような本がよく読まれたということは、日本の作文教育に疑問を感じている人が多かったからだと思います。
 特に、批判が多いのが読書感想文です。

 読書感想文は、小5以上で、具体的な指導のもとに行えば、とてもいい勉強になります。
 それが、言葉の森で行っている読書感想文指導です。

 しかし、今の学校教育で行われている読書感想文は、小2ぐらいで宿題として出され、しかもほとんどの場合何の指導もありません。
 だから、読書感想文で力がついたとか、楽しく書けたとかいうことがないのです。

 読書感想文の宿題に対する批判が幅広くあるにもかかわらず、この宿題が続くのは、そこに教育利権のようなものがあるからです。
 読書感想文の宿題は、子供の教育のために出されているのではなく、ノルマとして又は惰性として出されているのです。

 言葉の森でも、よく小学校低学年の生徒のお母さんから、読書感想文の宿題が出されているので書き方を教えてほしいという相談が入ることがあります。

 小2の生徒にも、感想文の書き方を教えることはできます。そして、しっかり教えれば入選するような読書感想文も書けます。
 しかし、それでその子の何らかの学力が伸びるということはありません。
 その反対に、面倒なことをやらされたという感覚だけが残り、それがやがて作文嫌いのもとになっていくのです。

 以前、やはり小2ぐらいでよく書ける生徒が、宿題として出した読書感想文を先生に褒められ、いろいろ手直しをさせられて、その結果読書感想文コンクールに入賞したことがあります。
 その生徒が、小6のころに言った言葉は、「あちこち直されて、自分の文章ではなくなったみたいで、そんなに嬉しくなかった」でした。

 言葉の森では、低学年の生徒の保護者から読書感想文の宿題の相談を受けたときは、次のように言っています。
「子供にそんな苦労をさせる必要はないので、お母さんがその宿題を書いてください(笑)。その分、子供には好きな本を読ませてあげてください」
 また、コンクールに応募することになった作品の添削を頼まれたときは、直すのは基本的に誤字だけ、表現をもっと工夫したらいいところは、「ここはもう一工夫」と書くだけです。こちらで、いい表現の仕方を教えることはありません。ところが、「もう一工夫」と書くだけで、ほとんどの子はその部分を上手に書き直してくるのです。

 さて、もとの「『作文下手な日本人』が生まれる歴史的な必然」に戻ると、その内容は、日本では読書感想文と行事作文がほとんどで、説明文のような論理的な文章の指導がないということです。
 これは、日本の作文教育には大体あてはまると思います。

 しかし、言葉の森の作文指導は、論説文を書くことを目標にした意見文と説明文と事実文(生活作文)の指導で、その中に小3からの長文を読んでの感想文指導が入ります。
 だから、感想文や事実中心の行事作文を書く延長に、説明文、意見文の指導があるという構造になっているのです。

 なぜこういうことが可能かというと、それは次のような作文に対する考え方があるからです。
 説明文や意見文的な作文を論理的な作文と呼び、行事作文や生活作文的な作文を描写的な作文と呼ぶとすると、この論理的な作文か、描写的な作文かという対比の先にもっと大事なものがあることがわかります。
 それが、作文を通して育てる個性、知性、感性という理念です。

 説明中心の論理的な作文にしても、事実中心の描写的な作文にしても、共通するのは個性と知性と感性、言い換えれば、創造性と思考力と共感性を育てることが目標なのです。
 そして、その重要な鍵となるのが、小学生の場合は特に、作文の準備における保護者との対話です。作文の課題をもとに親子で体験談や感想を話し合うことが、子供たちの個性、知性、感性を育てる重要な要素となっているのです。

 この親子の対話のほかに重要なのが、読書と音読です。つまり、書く力をつける以前に読む力をつけることです。
 だから、言葉の森では、ただ作文を書いて添削するだけの作文指導ではなく、作文を書く以前の準備、親子の対話、読書、長文の音読と暗唱に力を入れているのです。

この記事に関するコメント
コメントフォームへ。

nane 20190111  
 「理科系の作文技術」をamazonで見ると、「よく一緒に購入されている商品」として、「まんがでわかる 理科系の作文技術」と「【新版】日本語の作文技術」が出ていました。しかし、これらはあまりおすすめしません。
 おすすめするのは、「原稿の書き方」(尾川 正二 講談社現代新書)ですが、中古しかありませんでした。
https://tinyurl.com/y9pmw72w

森川林 20190111  
 小学生の作文で、「数字や名前がわかるように書く」というのは、作文の評価の上ではあまり受けません。
 そういう作文を書いて学校で褒められる子というのはまずいないと思います。
 しかし、数字や名前をしっかり書く子は、中学生以降になるとかえって説明文を上手に書けるようになるのです。
 例えば、「ぼくは、○○に行くために、○時○分に、○番線から「○○」という電車に乗り、途中、○○、○○、○○という駅を通って、○時○分に○○に着きました」というような文章を書く子です(笑)。
 こういう子が、中学生、高校生になり、立派な説明文を書くようになるのです。もちろん、味のある説明文をです。


同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
作文教育(134) 

記事 3496番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2024/11/22
読むだけで作文小論文の受験対策に as/3496.html
森川林 2019/01/10 04:18 

 2月に出版される「小学生のための読解・作文力がしっかり身につく本」(かんき出版)の最後の校正をしていました。

 自分の書いた文章ですが、作文試験問題の解答例と解説を読むと、さすがに参考になることが書かれていると思いました。
 ここに載っている解説を読むだけでも、かなり作文小論文のレベルが上がると思います。

 例えば、その一部を引用すると、
(いいのかなあ。笑)
====
 入試の作文課題には、学問や勉強に対する姿勢が課題として出されることがよくあります。
 学問や勉強のあり方が課題となる場合、意見はその課題に基本的に賛同する立場で書きます。反論する形よりも、賛同する形の方が意見が深まることが多いからです。
 展開部分は、その意見の裏付けとなると自分の体験実例を書くという形になります。
 学問や勉強に関する体験実例には、学校や学習塾で行った勉強の話よりも、自分が自主的に取り組んだ勉強的なものにする方がより深みのある実例になります。
 自分から進んで何かを学んだとか、何かに取り組んだという実例は、その場ですぐに思い出すことが難しいので、あらかじめ自分自身の過去の経験から使えそうなエピソードを思い出して整理しておきます。
 学問や勉強に関する作文のまとめ方は、「学問とは人間にとって……」「勉強とは人間にとって……」という形になることが多くなります。
 この結びの一般化の主題はそれほど多くの種類はないので、自分なりにいくつかの意見を考えておくと、どういう課題が与えられたときでもうまくまとめることができるようになります。
====

 説明ばかりの文章でややわかりにくいかもしれませんが、ここに書いてあることを理解するだけで、文章のレベルがかなり違ってきます。(具体的なことは、解答例として書いてあります。)
 例えばどういうことかというと、「勉強することの大切さ」とか「学ぶことの意義」とかいう課題が出された場合、自分の体験実例として、算数をがんばったとか、英語をがんばったとかいう普通の勉強の話を書いてしまうと、誰も同じような作文になって感動が薄れるということです。

 ここは、夏休みの自由研究でセミの羽化を観察したとか、カブトムシを幼虫から育てたとかいう、学校の教科の勉強には入らないが、自分が自主的に行った話を入れていくといいのです。すると、そこに個性と感動が入るので、作文の内容が一段階レベルアップします。
 同じ意見なら、実例に感動や個性のある文章の方がその意見に説得力が出るからです。

 ところが、こういう話をその場ですぐに思い出すということはまずできません。だから、普段の作文練習の中で、自分らしい実例を見つける練習をしていくということなのです。

 作文には、正解のようなものはありませんが、そのかわりちょっとしたコツのようなものはたくさんあります。

 もうひとつの例として、例えば、志望理由書などにしても、ほとんどの生徒は普通に志望した理由を書きます。
 しかし、それでは、誰が書いても同じような文章になってしまいます。

 志望理由書は、あたりさわりないことを書くものではなく、自分をアピールするために書くものです。
 すると、大事なのは理由ではなく、理由の裏付けとなる実績というところになるのです。
 この志望理由書の書き方も、この本で解答例と解説を載せています。


この記事に関するコメント
コメントフォームへ。

森川林 20190110  
 公立中高一貫校が作文試験を課すようになってから、作文力をつけるという本がいくつか出ていましたが、これらを読んでも受験生は、あまり書き方がわかるようにはならないと思います。
 それはなぜかというと、解答例に、実際の生徒が書いたよく書けた文章というものが使われているからです。
 よく書けたのは、指導によってよく書けたのではなく、その生徒の実力としてたまたまよく書けたのですから、ほかの人が読んでも参考になりません。つまり、実例がよかったとか、いい表現が入ったとかいうことで、よく書けたことになっているからです。
 また、課題の解説の多くは、その課題に対する心構えや準備のようなことが書かれていることが多く、どう書いたらいいかということまでは書かれていません。
 それは、たぶん子供たちの作文を実際に指導した経験のあまりない人が書いているからだと思います。


nane 20190110  
 作文指導における誤解でかなり多いのが、上手に書けた子の作文を見せて、ほかの子を上手にさせようとすることです。
 他人のよく書けた作文を見せるだけで、それで上手に書けるようになる子はまずいません。
 それどころか、かえって自信をなくし、作文嫌いになるだけです。
 だから、お母さんやお父さんも、決して、ほかの子の上手な作文を見せて、「こんなふうに書けたらいいね」などとは言わないことです。
 いつも自分の子供の作文のいいところを見て褒めてあげることなのです。
 どこがいいところかというと、それは指導項目で先生が指導しているところです。
 作文の上達のためには、こういう地道な積み重ねが大事なのです。


同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
メディア(8) 受験作文小論文(89) 
コメント11~20件
……前のコメント
総合学力クラス 森川林
子供は、暇そうにしているのがいちばんです。 年がら年中がん 6/22
記事 5107番
さまざまな勉強 森川林
勉強は、作文と読書と算数数学と歴史を中心にやることです。 6/21
記事 5106番
作文力がこれか 森川林
作文力をつけるために必要なのは読書と対話。 出力の前に入力 6/19
記事 5105番
作文を書くとき 森川林
 接続語と助動詞は、実は重要です。  中学生や高校生で、文 6/18
記事 5104番
国語は、読む力 森川林
国語の力をつけるための音読は、1冊の問題集を繰り返し読むのが 6/16
記事 5103番
国語力は、テク 森川林
国語力をテクニックで身につけようという考えそのものがあさはか 6/14
記事 5100番
本当の勉強は、 森川林
子供は、自然に成長していれば、みんな時期が来ればそれぞれにが 6/12
記事 5098番
これから大学生 森川林
MMさん、ありがとうございます。 これは、10年以上前の記 6/12
記事 820番
これから大学生 MM
先生の書かれていることは今読んでもそのまま通じます。 10 6/11
記事 820番
毎週作文を書く 森川林
作文の勉強というのは、負担の大きい勉強です。 だからこそ、 6/11
記事 5097番
……次のコメント

掲示板の記事1~10件
現在森リンベス 森川林
このあとの予定。 ・森リンベストを直す(直した) ・森リ 11/20
森川林日記
Re: 入会手 言葉の森事務局
 お世話になっております。  弟さんのみご入会が1週間 11/15
森の掲示板
入会手続きにつ やすひろ
お世話になっております。 個別掲示板を開けませんので、ここ 11/15
森の掲示板
Mr. 1
1 11/14
森の掲示板
Mr. 1
1 11/14
森の掲示板
Mr. 1
1 11/14
森の掲示板
Re: 項目の 1
> いつもありがとうございます。 > > こすほ 11/14
森の掲示板
Re: 項目の 1
> いつもありがとうございます。 > > こすほ 11/14
森の掲示板
Re: 項目の 1
> いつもありがとうございます。 > > こすほ 11/14
森の掲示板
Re: 項目の 1
> いつもありがとうございます。 > > こすほ 11/14
森の掲示板

RSS
RSSフィード

QRコード


小・中・高生の作文
小・中・高生の作文

主な記事リンク
主な記事リンク

通学できる作文教室
森林プロジェクトの
作文教室


リンク集
できた君の算数クラブ
代表プロフィール
Zoomサインイン






小学生、中学生、高校生の作文
小学1年生の作文(9) 小学2年生の作文(38) 小学3年生の作文(22) 小学4年生の作文(55)
小学5年生の作文(100) 小学6年生の作文(281) 中学1年生の作文(174) 中学2年生の作文(100)
中学3年生の作文(71) 高校1年生の作文(68) 高校2年生の作文(30) 高校3年生の作文(8)
手書きの作文と講評はここには掲載していません。続きは「作文の丘から」をごらんください。

主な記事リンク
 言葉の森がこれまでに掲載した主な記事のリンクです。
●小1から始める作文と読書
●本当の国語力は作文でつく
●志望校別の受験作文対策

●作文講師の資格を取るには
●国語の勉強法
●父母の声(1)

●学年別作文読書感想文の書き方
●受験作文コース(言葉の森新聞の記事より)
●国語の勉強法(言葉の森新聞の記事より)

●中学受験作文の解説集
●高校受験作文の解説集
●大学受験作文の解説集

●小1からの作文で親子の対話
●絵で見る言葉の森の勉強
●小学1年生の作文

●読書感想文の書き方
●作文教室 比較のための10の基準
●国語力読解力をつける作文の勉強法

●小1から始める楽しい作文――成績をよくするよりも頭をよくすることが勉強の基本
●中学受験国語対策
●父母の声(2)

●最も大事な子供時代の教育――どこに費用と時間をかけるか
●入試の作文・小論文対策
●父母の声(3)

●公立中高一貫校の作文合格対策
●電話通信だから密度濃い作文指導
●作文通信講座の比較―通学教室より続けやすい言葉の森の作文通信

●子や孫に教えられる作文講師資格
●作文教室、比較のための7つの基準
●国語力は低学年の勉強法で決まる

●言葉の森の作文で全教科の学力も
●帰国子女の日本語学習は作文から
●いろいろな質問に答えて

●大切なのは国語力 小学1年生からスタートできる作文と国語の通信教育
●作文教室言葉の森の批評記事を読んで
●父母の声

●言葉の森のオンライン教育関連記事
●作文の通信教育の教材比較 その1
●作文の勉強は毎週やることで力がつく

●国語力をつけるなら読解と作文の学習で
●中高一貫校の作文試験に対応
●作文の通信教育の教材比較 その2

●200字作文の受験作文対策
●受験作文コースの保護者アンケート
●森リンで10人中9人が作文力アップ

●コロナ休校対応 午前中クラス
●国語読解クラスの無料体験学習