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本物の教育(2) as/370.html
森川林 2009/01/27 21:00 
 「本物の教育」と「成績のための教育」は、二つの点で違っています。
 第一に、本物の教育は学ぶことを楽しんで行われるという点です。例えば、子供が何かに興味を持ったとき、その興味を知的に伸ばしていくのが本物の教育です。成績のための教育は、子供の興味よりも、成績に結びつくようなところに知的な好奇心を誘導しようとします。形は似ているかもしれませんが、中身は大きく異なります。知る喜びという動機に立脚しているものは、心から楽しむことができます。しかし、成績のためという動機に根差しているものは、心から楽しめない面もあるので、どうしても周囲が頑張らせて無理をさせるという状態にしがちです。
 第二の違いは、競争の有無です。本物の教育は、自分に学力がつくことが嬉しいように、相手に学力がつくことも同じように喜べます。なぜかというと、自分が相手に新しいことを教えてあげられるように、相手からも自分の知らない新しいことを教えてもらえるからです。つまり、創造的な人が多ければ多いほど、世界も自分も相手も豊かになるということです。これに対して、成績のための教育は、相手との競争を前提としています。ですから、自分の成績が良いことは嬉しいことですが、相手の成績が良いことは必ずしも嬉しいことではありません。このような競争状態は、やはり人間の本来の姿としてはゆがんだものです。

 本物の教育を行う一つの方法として、言葉の森の長文を活用することができます。
 例えば、小学校の低学年の子供が長文を呼んでいるとします。長文の内容は科学的なものが多いので、子供は必ず途中で疑問を感じたり、よりくわしい知識に興味を持ったりしてきます。そのときに、お父さんやお母さんがその長文の内容に関連した面白い話をあらかじめ勉強しておいて、子供と一緒に実験をしたり、旅行したり、話し合いをしたりするのです。低学年のころであれば、お父さんやお母さんが、子供たちの知的好奇心を刺激することは比較的簡単にできます。家庭で行う簡単な理科実験ができれば、わざわざ理科実験教室に通う必要はありません。もちろん通える人は、通っていいのですが。
 小学校低学年のころに、そのような知的対話の文化を家庭の中に作っておけば、親子の対話が少なくなる小学校高学年や中学生の時期になってからも、親子の対話を継続できます。なぜ小学校高学年から親子の対話がなくなるかというと、親と子の間に共通の話題がなくなるので、親が子供に対して言う言葉が成績の話だけになってしまうからです。また、中学生や高校生になってから、子供の知的好奇心を刺激するような面白い話を親が準備するのはかなり大変です。
 アインシュタインは、学校も習い事も嫌いでしたが、家庭での家族との話の中で自分の知的好奇心を豊かに育てていきました。
 エジソンは、学校に通いませんでしたが、図書館の本と母親の用意してくれた理科の実験器具で自分の知的生活を豊かにしていきました。
 アインシュタインやエジソンとは全然違いますが、私の家の例です。子供が小学生のころ、何かの本を読んで、忍者の使っていた干し飯(ほしいい)を自分でも作りたいと言い出しました。早速、干し飯作るために、ご飯を薄く広げて屋根の上で乾かしました。しばらくたって見に行くと、家にすみついていた野良猫がそのご飯をほとんど食べていました。こうして干し飯作りは失敗しましたが、興味のあることがあったら実験してみるという気持ちは子供の中で育っていったと思います。こういうことをしていても、学校の成績は上がりません。しかし、成績よりも大事な生きる姿勢のようなものができていくと思うのです。

 本物の教育を行うもう一つの方法は、作文です。作文の課題の中には、準備した方がよく書けるというものがあります。例えば、題名課題です。「玉子焼きを作ったこと」とか「虫をつかまえたこと」などという題名があったときに、その題名に合わせて、家庭で日曜日のイベントを計画します。
 現実には、いろいろと面白い体験をさせても、子供はそのことを上手に作文に書くわけではありません。逆に、親が拍子抜けするほどあっさりとしか書かないのが普通です。しかし、その体験は、確実に子供の心を成長させていきます。
 また、言葉の森の課題の多くに、「家族に聞いたこと」や「調べたこと」という項目があります。例えば、「私の好きな遊び」という題名で作文を書くときに、子供が、お父さんやお母さんや、又は、田舎のおじいちゃんおばあちゃんに、子供のころどういう遊びが好きだったかを取材するのです。遠くに住んでいるおじいちゃんやおばあちゃんであれば、電話で取材してもいいでしょう。子供は、身近な人から話を聞く方が、本を読んで勉強するよりもずっと深くその内容を記憶に定着させます。
 これらのことが具体的にテストの成績にどのように生かせるかと言えば、それはほとんど意味がないでしょう。しかし、子供が将来、自分らしい創造的な考え方をしようとするときに、それらの経験がじわじわと生きてくるのです。

 現在のテストのほとんどは、成績の差をつけることを目標として作られています。したがって、テストに合わせた勉強は、差をつけることを目標とした勉強になりがちです。それは、本来の勉強とは、やはりかなり違ったものです。そのことを、人生経験豊富な親が深く理解して、子供の勉強の方向を修正していく必要があります。
 学習塾は善意でみんなの成績を引き上げようとしています。特に小さい学習塾では、教える先生が情熱をもって子供たちの成績を上げることに取り組んでいます。ですから、塾の批判をすることが本意ではありませんが、学習塾の時間が長くなればなるほど、家庭での文化的な生活は少なくなっていくのです。塾で長時間勉強するよりも、家庭で自分のペースで勉強して、食事のときに、両親と知的で面白い会話を楽しむという余裕のある方が、子供たちの本当の学力にとっては大きなプラスになると思います。
(この文章は歩きながらICレコーダーに録音したものをamivoiceでテキスト化したものです)

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本物の教育 as/369.html
森川林 2009/01/27 05:04 
 文部科学省は1月21日、全国の小学5年生と中学2年生を対象に実施した「全国体力運動能力運動習慣等調査(全国体力テスト)」の結果を公表しました。
 これを見ると体力上位県は、秋田県、石川県、福井県などとなっています。また、言い方はよくありませんが、下位県は、北海道、東京都、大阪府、福岡県などとなっています。福井県や秋田県は学力テストでも上位の成績でした。体力テストの下位の県と学力テストの下位の県も比較的共通しています。
 学校教育における教員の力量の差は、たぶんほとんどないと思います。逆に、学習塾などの充実度は、都市部の方が高いはずです。原因が学校でも塾でもないとすると、帰するところは家庭の教育力になるのではないかと思います。
 これは、小中学校にとどまらず、もっと上の高校や大学でも、同じようなことが言えるようです。聞くところによると、地方の公立高校出身者を高く評価する大学の先生が多いということです。
 首都圏の私立高校の出身者とまとめていうと語弊があるかもしれませんが、受験のコツを知っているために、そのコツの延長で勉強に取り組んでしまっているのではないかと思うのです。そこでの勉強の目的は、点数を上げることであって、学力を深めることではないことが多いのです。
 例えば、塾などでは、テストの成績を上げるために、時間切れになりそうなときや問題がよくわからないときは、とりあえず空欄を埋めておけという指導をします。しかし、わからないところは空欄のままにして×にしてもらった方が本当の実力がつきます。同じように、できない問題は飛ばしてできる問題から取りかかるという指導もよく行われています。しかし、長い人生では、できない問題に取り組むことこそが本当に価値のあることで、それがその人の実力につながことが多いのです。また数学の問題では、解法のパターンを理解することで成績が上がります。しかし、本当の学問の世界は、自分で創造的に考えるという姿勢が必要とされます。
 本当は、この点数を上げるためのテクニックと、学力を高めるための勉強を、両方使えることが理想なのでしょう。少なくとも、テストの成績を上げるテクニックだけの勉強は空しいと思う感覚が必要です。塾におけるテストのための教育という偏りを是正するのが、家庭教育の役割になると思います。
 これは推測ですが、学力テストや体力テストの上位の県では、家庭の中で、決まったことを毎日同じようにきちんとやるという文化があるのではないかと思います。そういう家庭では親子の間にちゃんとした対話があり、家庭における生活時間の流れも安定したものになっているでしょう。
 私自身、これまでいろいろな子の成長を見てきました。その中には、小学生のころ成績がよくて、中学高校と上がるにつれてだんだん平凡になっていく子もいました。逆に、小学生のころはマイペースで、自分の好きなことばかりしていて成績はあまりよくないのに、中学高校と上がるにつれて、ぐんぐんと力をつけていった子もました。もちろん、人生は長いので、それらの子供たちはこれからの自覚と努力でまたいろいろな形に大きく変化していくと思います。
 大事なことは家庭の中で、常に本物の教育ということを考えて子供たちを育てていくことだと思います。
(この文章は、構成図をもとに音声入力した原稿をamivoiceでテキスト化したものです)

マインドマップ風構成図
 記事のもととなった構成図です。

(急いで書いたのでうまくありません)

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