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記事 398番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2025/1/1
読解力語彙力の男女別苦手克服法(質問に答えて) as/398.html
森川林 2009/02/24 03:50 
 昔テレビで、連想ゲームというものがありました。女性は、聞いてわかるというのが男性よりも得意です。男性は、書かないとわからないという傾向があります。
 例えば、日常生活の場面でも、説明を聞くときに、聞くだけで理解できるのが女性です。男性は、説明書を読んだり、又は、聞いた説明を自分なりに書いてみないと理解できないということが多いと思います。
 これはなぜかというと、女性は、いろいろな現象を並列的につなげて丸ごと理解するのが得意だからです。男性は、現象のつながりだけでなく、その現象が内部でどういう関連になっているかということが見えないと現象どうしを結びつけることが難しくなるようです。国語の問題でも、理詰めで解くような解き方を教えると男の子は点数が上がります。
 聞いてわかるというのは、見てわかることよりも、より直感的な理解であり、印象を丸ごと実感して把握するするというような理解の仕方です。このような理解の仕方が得意なのは一般に女性です。また、物事を実感的に把握することが得意な人は、一般に国語という教科が得意です。女性と国語は、相性がいいのです。
 しかしこういう女性の特徴、又は国語の得意な人の特徴は、同時に他の勉強に対する弱点にもつながっています。
 女性や国語の得意な人は、自分の感覚をもとにして物事を考えるという傾向があります。ですから、何かを考える場合でも、身体的な実感を感じられるような理解の仕方をします。そこで、理数系が苦手になることが多いのです。
 理数系は実感の世界ではなく、どちらかといえば操作の世界です。実感で理解しようとするとかえってわかりにくくなるというのが理数系の特徴です。例えば、「3分の2を2分の1で割る」というような問題があった場合、実感的に考える子は、3つあるうちの2つのリンゴを2分の1で割るなどと考えるので、かえって理解できなくなります。
 また、二乗して負になる虚数というのも、実感として理解することはできません。これは単純に、実数の世界で説明しにくいものを説明する理屈として操作的に導入した概念だと考えればいいのです。
 4次元というのも同じです。縦・横・高さという3次元の実感の世界にもう一つ別の次元があるということを実感で考えようとすると、時間のようなものが思いつきます。しかし、3次元に加わるもう一つの次元は、別に時間でなくてもいいのです。明暗でも大小でも寒暖でも、要するに縦・横・高さ以外の別の区分が別の次元になります。もっと言えば、世の中にA的なものをB的なものがあると考えるとABが一つの次元となります。と考えると、5次元、6次元、n次元といくらでも操作的に多次元を考えることができます。しかし、実感の延長で考えると、縦・横・高さ・時間の次に来る具体的なものを思いつかなくなるので、より高い次元というものを理解しにくくなってしまうのです。
 国語の得意な子が、中学生高校生になって数学や物理が苦手になるのは、二つの分野の学問の性格の違いが、実感と操作の違いであるということがよくわからないからです。ですから、勉強の内容を教える前に、本当は、教える人がそういう性格の違いを説明してあげればいいのだと思います。
 今西錦司は、学生時代、文系の仲間の中でひとりだけ数学が得意でした。友人が、どうして数学が得意なのか聞いたところ、要するに数学は覚えてしまえばいいのだと答えたそうです。文系的な発想をする人は数学を実感として把握しながら解こうとしがちです。ところが操作的に割り切れる人は、実感がない世界でもそのままそういうものだと思って解いていくのです。今西錦司は、数学が操作の世界だと早めにわかっていたのです。
 いったん学問の分野によって要求される発想の性格が違うことを理解したら、そのあとは、自分の得意な発想に結び付けて苦手な分野を克服していくことになります。理屈の得意な人が、実感の世界を理屈で理解しようとするとよくわからなくなります。しかし、その二つの世界の性格が違うのだということをふまえた上で、実感の世界を理屈の世界に還元(換言)して理解していくとスムーズに理解できるようになります。
 例えば、「閑さや岩にしみ入る蝉の声(しずかさやいわにしみいるせみのこえ)」という句をそのまま理屈で理解しようとすると、「しずかさ」と「せみ」がうまく結びつきません。しかし、これは実感の世界の話だと割り切った上で、おしるこでも塩を少し入れるとより深く甘みが感じられるようになるのと同じことだと理屈的に理解すればすんなりと理解できます。実感をそのまま感じられる人は最初からそのように感じればいいのですが、実感が苦手な人は得意な理屈に還元して理解するということです。
 逆に、「分数の割り算はひっくり返してかける」という算数の世界についていけない子は、それが操作の世界だと思わずに実感の世界の出来事だと考えているから理解できなくなっています。日常生活の中で分数で割るというような経験はないからです。二つの世界が違うことを理解した上で、「分数ちゃんは『割る』のが苦手なので、すぐひっくりかえって『かける』になる」などと実感的に理解しなおせばいいのです。
 論説文と物語文の得手不得手や語彙力の得意分野についても同様のことが言えます。基本になるのは勉強の量ですが、量だけではカバーできない苦手分野は、自分の得意分野に結び付けて理解するのが苦手を克服するコツです。

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記事 397番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2025/1/1
男の子と女の子の読解力の差(質問に答えて) as/397.html
森川林 2009/02/23 05:34 
 一般の印象として、男脳と女脳を分けて考えた場合、男の人は、狩猟時代の昔から、獲物をとるために遠くを見るのが得意だという傾向があったようです。従って、近くのものにはあまり関心がありません。例えば何かを探すときのことを考えてみましょう。身近な例ですが、男の子がたんすの引き出しを開けて、「僕のパンツどこ?」と聞くと、横からお母さんが、「そこにあるじゃない」と男の子の目の前を指さします。男の子は身近にあるものを、見分けることがあまり得意ではないのです。
 このため、身近なところにある微妙な違いに気がつかないのが男の子の特徴です。作文を書いたあと読み返しても誤字を見落としてしまうのが男の子です。男の子は近いところにある微妙な差にはあまり注意が向かないのです。
 これに対して、女の人は、近くの微妙な差がよくわかります。ときに、それは、必要以上にわかるというところがあります。ですから、母親は、子供の欠点に対しても、すぐ目につくので直したがります。男の先生と女の先生とを比べると、男の先生は細かいことにはあまりこだわりません。関心もないし得意でもないからです。女の先生は細かいことにもよく気が付きます。関心があるし得意でもあるからです。
 女の人は、しかし逆に、本質論や「どうあるべきか」ということにはあまり興味がないようです。むしろ、現実的にプラスになるかどうかということの方に関心があるように思います。
 現在の受験勉強では、テストの性格は女の子に有利にできています。目の前にある現象面での違いに気がつく方が、点数が上がるようになっている仕組みの問題が多いからです。しかし、これは女の子の方が男の子よりも頭がよいということではなく、現代のテストは、女の子の方が向ているということです。社会に出れば、男の子女の子はそれぞれの得意の分野を生かして優劣ということではなく、それぞれに活躍していくと思います。
 語彙力についても同じようなことがあります。女性は、表面的なことを長くしゃべることができます。男性は、考えないとしゃべれないという面があります。ですから一般に男の子と女の子が口げんかをした場合、勝つのは大体女の子の方です。
 しかし、男女の差よりも大事なのは、やはり読む力の差で、読む力があればそれぞれの得意を生かして、読解力がついていくと思います。

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記事 396番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2025/1/1
日本の国語教育のつづき as/396.html
森川林 2009/02/22 20:55 
 昨日の記事を読まれた方から、日本と外国での国語教育の違いが参考になったというお便りをいただきました。
 お便り、アリガチョーク! ( -ω-)ノ-=≡≡≡☆−(>。<) イタイ! なんてことをやっている場合じゃなくて。

 続きを少し書きます。
 大岡昇平の「野火」に感銘を受けたという方も多いと思います。
 それはそれでいいのですが、私は、日本の文学の弱点がある意味で典型的に表れているような気がします。
 戦争中でやむをえず人の肉を食べたという話ですが、私は、食べたくなければ食べるな、食べたのだったら、もう済んだことなのだから、ああおいしかったでいいだろ、という考えです。
 現実世界を生きている健康な人は、だれもこのように考えて世の中を渡っていると思います。解決のつく問題なら考えなければなりません。しかし、解決のつかない問題なら問題そのものを保留にして生きていくのが普通の人間です。解決のつかない問題を、解決する気もないままにいつまでも眺めているというのが文学であるとすれば、それは読む人を後ろ向きにする役割しか持たないでしょう。
 ところが、国語の選択問題は、こういう解決のつかない問題をいつまでもこねくりまわしている心理を問うようなものが多いのです。
 太宰治の短編の「トカトントン」なども、インターネットで探して読んでみるとわかりますが、人間性を低めることによって成立している真実です。文学者は、高い真実を追求する仕事をするべきです。低い真実を伝えることなどは、2ちゃんねるなどでも十分にやられていることで、わざわざ文学を志す人間がやるほどのことではありません。
====参考までに「トカトントン」の一部
 私は寝不足の眼を細くして、それでも何だかひどく得意な満足の気持で、労働は神聖なり、という言葉などを思い出し、ほっと溜息(ためいき)をついた時に、トカトントンとあの音が遠くから幽かに聞えたような気がして、もうそれっきり、何もかも一瞬のうちに馬鹿らしくなり、私は立って自分の部屋に行き、蒲団(ふとん)をかぶって寝てしまいました。
====
 かってに寝てろ、と言いたくなります(笑)。
 日本の国語の教科書には、「羅生門」とか「こころ」とか、湿っぽい話が多すぎます。小学校の国語教科書でも、アンハッピーエンドの話が多すぎます。そういう暗い話が高級だと思うのではなく、もっと明るくてレベルの高い話を国語教育の中で目指していくべきだと思います。

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