「勉強脳をしつける勉強法」の著者石田勝紀さんは、大学受験の浪人時代に、それまで読まなかった難しい本を読むようになると、40ぐらいだった国語の偏差値が20以上アップした、と述べています。また、国語の成績が上がるのと並行して、英語や数学も勉強を特にしたわけでもないのに成績が上がったという体験談を書いています。
私も、高校3年生のときに、総合月刊誌を何冊も読むようになると、不思議なことに国語の点数が上がったという経験があります。当時の総合月刊誌は、学園紛争の影響で新左翼的な難解な文章が流行していました。そういう文章を読んで、自然に読解力が伸びたのではないかと今は思っています。
私が大学を卒業するとき、学生時代の四年間にあまり勉強をした感じがしなかったので、古今の名著と呼ばれるものなるべくたくさん読もうと決心して、数年間いろいろな本を読みました。
そのときに読んだ本のひとつがケインズの「雇用利子及び貨幣の一般理論」です。内容は難しかったので十分に理解したとはいえませんが、こういう古典と言われる名著を読むと、作者が、考えている道筋を自分も一緒にたどって読むという感じがあります。古典を読むことが大切なのは、こういう経験ができるからです。「ケインズ入門」のような教科書や入門書では、すでに完成した答えが死んだ知識として並べられているだけなのに対し、原典には、作者が思索をしているその現場を自分も一緒に思索しながら読み進められるという利点があります。
当時読んだ本の中に、デカルトの「方法序説」がありました。書名は難しそうでしたが、書かれている内容はわかりやすく、デカルトが自分の考え方の道筋をできるだけわかりやすく読者に知らせようという情熱の感じられる本でした。その後、言葉の森で高校生を指導しているとき、高校生ぐらいで読むにはとてもいい内容のものだと思ったので、高校生の感想文課題に「方法序説」を取り入れました。当時は長文ではなく、本のひとつの章を読んで感想文を書かせる課題でした。4人ぐらいいた高校生に本を配って、同じ章を読ませていると、数分後、全員が寝ていました。
(つづく)
(この文章は、構成図をもとに音声入力した原稿をamivoiceでテキスト化したものです)
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大学入試の英語の問題は、かなりの部分が国語力です。英文で書いてある内容自体が難しくなるので、難しい文章を読む国語的な力がないと、英文も当然読みきれなくなります。また、英語の選択肢の問題も、現代文の選択肢の問題と同じように、消去法で必ずしもそうとは言えないものを×にして残ったものが○となるというような選択の仕方になります。従って、大学入試のような問題になれば、国語力がなければ英語の力があっても得点が取れなくなります。
同じようなことは、古文や漢文についても言えます。古文には、古語の文法や単語の力が必要ですが、難しい問題になると最後は国語力が物を言います。選択式の問題も、現代文の選択式の問題を解く力がなければ解けなくなります。
数学の問題は、やさしい問題をいくらたくさん解いても、難しい問題が解けるようにはなりません。難しい問題を解けば、易しい問題を解く力もつきますが、難しい問題を解かずに易しい問題だけ解いても数学の実力はつきません。だから、問題集は解くことに意味があるのではなく、できなかった問題を解けるようにすることで初めて勉強の意味が出てきます。
数学の勉強が何の役に立つかというと、一つは、合理的な世界像が形成されることです。数学の得意な子は、世界には答えがあり、それは努力すれば解明できるというような世界観を持っています。こういう世界観があると、困難なことに直面しても最後までがんばろうという気持ちを自然に持つようになります。数学の好きな子は、仕事をするときでも忍耐強いようです。
数学のより現実的な意義は、形のあるものを作る仕事に携わるときには必ず数学が必要になってくるというところにあります。例えば、橋を作ったり、道路を作ったり、車を作ったりするときには、どこかで数学が必要になります。また、プログラムを作るというような仕事でも、数学が必要になってきます。形のあるものを作るときには、その形に応じて数学が必要になります。それが物理的な形であればあるほど、数学の必要性は増していきます。
社会人になると数学はあまり必要なくなるというのは、物を作る作業に直接タッチしていないからであって、決して社会生活で数学が必要ないからということではありません。
このように考えると、勉強でいちばん大事なのは、国語と数学ではないかと思います。
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文章採点ソフトを利用すれば、そのソフトに対応した文章の勉強法が生まれ、その勉強法に対応したソフトの改良が進み、文章力とソフトが相互に発展していきます。
これをスポーツの場合に当てはめてみると、わかりやすいと思います。どのスポーツも、ルールが決まっています。例えばサッカーでは、足は使えるが手は使えないという制約があります。その制約の中で、足を使った技術が発達します。すると、その技術に対応してまた新たなルール、例えば危険なプレーはしないなどというものが出てきます。ルールという制約があり、その制約に対応した方法が生まれ、制約と方法が相互に影響しあって物事が発展していくというのが物事の進歩の姿です。
このように考えると、文章を採点するソフトを人間味がないと批判するのではなく、その文章採点ソフトをうまく利用して文章力をつけるという発想をしていくことが大事だと思います。
では、ソフトを利用した将来の小論文はどのようになるのでしょうか。
現在は、人間が採点することだけを前提にしているので、小論文の試験は600字から1200字のものが1本だけという形がほとんどです。しかし、試験で小論文を1本だけしか書かせないとなると、受験生はある程度書くことを準備してくるので、ヤマを当てるような勉強法もできるようになります。
ソフトによる採点ができれば、1日の試験で異なるテーマの小論文を数本書かせるということもできます。受験生の負担は大きくなりますが、実力のある生徒は、むしろ実力が正しく反映される複数の小論文試験の方を喜ぶでしょう。
また、小論文の構成も、書き手の自由に任せるのではなく、ある程度方向性を指示するような形になると思います。漠然と自由に書かせるよりも、書き方に条件をつけた方が、書く方も読む方も取り組みやすいからです。例えば、全体の字数は800字で、4つの段落に分けて、問題点と原因と対策と反対意見に対する理解を書くというような指示です。構成の仕方や表現の仕方に条件をつけることで、人間による評価も容易になります。
現在の作文小論文の学習のいちばんの問題点は、評価が大変なので、指導が少なくなるというところにあります。指導の回数を増やすためには、ソフトを利用した評価をもっと取り入れていくことだと思います。
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小学生のころは、作文を書く機会が豊富にあります。特に小学校低学年のころは、毎日日記を書くという宿題も多く、書く機会に恵まれています。
しかし、小学校高学年から中学生になると、作文を書く機会はかなり減ってきます。高校生になると、学校で文章を書く機会というのものがほとんどなくなります。大学入試の小論文に対応するために、高校でも書く時間をふやしているところがありますが、共通している問題は、採点と講評に負担が大きいのであまり頻繁に指導することができないということです
そこで、言葉の森が考えたのは、大まかな評価をソフトが採点し、細かい部分を人間が見ていくという方法です。
言葉の森が開発した作文小論文の自動採点ソフト「森リン」は、人間の評価との相関が高く、使い方を工夫すれば十分に実用にたえるものになっています。作文検定試験も、この森リンの採点を中心に行っています。
森リンで採点すると、人間が読んで内容が濃いと感じられる文章が高得点になります。しかし、内容の判断をソフトがしているわけでありませんから、奇抜な内容であっても高得点を取れる場合があります。しかし、あまり不自然な内容の文章は、語彙の分布にも不自然な面が出てくるので、その不自然さをチェックすることによって、人間の評価と似た評価になります。
ここで、大事なことは、森リン以外の他のソフトでも、似たような得点の傾向になるということです。ということは、今後、機械による採点が普及すれば、その機械による採点に対応した文章の勉強が行われるようになるという予測ができます。
これは現在の入試問題と勉強法の関係と似ています。最初は、常識的な学力に対応した入試問題ですが、その入試問題に対応した勉強の仕方が行われるようになると、その勉強法を上回る入試問題が出されるようになります。そして、入試問題の傾向と勉強の方法がスパイラル状に発展して学力が進歩していくのです。これがときに、学力の本質をはずれた瑣末な入試問題につながる可能性はありますが、それをチェックすることができれば、評価と方法が相互に影響しあう形で物事が進んでいくのはいいことだと思います。
(つづく)
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小1・2・3年生の3.4週と4.1週の長文は、そのほかの週の長文よりもやや難しい内容になっています。
暗唱がしにくいときは、字数を少なくするなど工夫してやってくださるようお願いします。
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英数国の勉強法(その2)
国語の勉強はコツがわかると点数が上がる面がありますが、コツだけで土台の力がないとやはり限界はあります。その土台の実力をつけるための方法は、やはり難しい文章を読むことです。
私が高校生のときの話です。当時、学園紛争が盛んで、政治や社会を論じる総合月刊誌が多数出ていました。「展望」「自由」「世界」などという名前からして硬そうな雑誌です。高校3年生のころは、こういう総合月刊誌を毎月何冊か買って読んでいました。すると、それまでも国語は比較的得意な教科でしたが、さらに国語の成績がよくなったという経験があります。現在そういう硬い雑誌には触れる機会があまりないので、やはり全国の入試問題の問題文を読書代わりに読むということがいちばん能率のいい勉強になると思います。
難しい文章を繰り返し読むという勉強法は、一見あてのない勉強のように見えます。それよりも、国語の問題集を解いていた方が、勉強をしているような感じがします。しかし、問題を解くための時間は、ただ文章を読むだけの時間の数倍かかります。問題を解くよりも文章を読むだけの方が密度の濃い勉強ができるのです。
また、全国規模の模擬試験があれが、その試験の選択問題を理詰めに解く練習もやっておくといいと思います。
英語の選択の問題は、国語の選択の問題と共通しています。特に、大学入試の英語の問題については、選択問題は半分以上国語力と言っていいと思います。
日本の高校教育は優れているので、高校時代は受験に関係のない科目でも満遍なく勉強しておくことがあとで役に立ちます。私が高校生のとき、物理の先生と相性が悪く、物理の勉強をあまりしませんでした。いま考えると、先生の好き嫌いと教科の好き嫌いを混同してもったいなかったと思っています。そのかわり、政経のおじいさんの先生が好きで、受験に関係のない科目でしたが、いちばん熱心に勉強をしていました。
高校時代に勉強したことは、社会人になると忘れてしまいますが、何かの拍子に必要になったときにそのころの教科書や参考書を読むと、すぐに内容を思い出します。
大学生の勉強のいちばんのポイントは、古典を読むことです。高校の社会科の教科書に出てきたような有名な人の本で、岩波文庫などに収録されているようなものを読んでいきます。もちろん岩波文庫以外にも古今の名著はいろいろなところから出ています。大学生のころは、古典のような遠回りの勉強よりも、入門書や概論書で手軽に幅広く勉強したいと考えがちですが、古典を読むことは、ものの考え方の骨格を作る上でとても役にたちます。社会人になると古典を読むような時間はなくなりますから、大学生の間にできるだけ原典と呼ばれる本を読むようにしていくといいと思います。
話が前後しますが、中学生の勉強法でおすすめの本は、「中学生の自宅学習法」(内藤勝之)です。これを読むと、読むだけですぐに成績が上がるような気がしてきます。勉強の基本が載っているので、高校生にも役立ちます。
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マインドマップ風構成図
記事のもととなった構成図です。
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小学生の勉強で大事なことは三つあります。一つは読書です。本を読むことが楽しいという気持ちを小学生のうちに育てることです。もう一つは漢字の書き取りです。小学校の中高学年のころに習った漢字を間違えて覚えている大人がかなりいます。(私もそうでした^^;)小学校の6年間で覚える漢字は千字程度ですから、小学校時代の間にその千字の書き方をしっかり覚えておくと、あとで役に立ちます。三つめは算数です。速く正確な計算力をつけておき、少なくとも算数が苦手にならないようにしておくというのが目標です。
小学校時代は、勉強よりも大事なことがあります。それは楽しい人生を送る姿勢を身につけるということです。これはまたいつか述べたいと思います
中学生高校生の英語、数学、国語の勉強のコツを説明します。
英語は、受験がまだ差し迫った課題にならないころに、単語をしっかり覚えておくとあとが楽です。基本は単語帳で覚える覚え方で、4回ぐらい繰り返して覚えると定着するというルールがあります。受験までまだ時間がある長い休みの時期に、単語帳を1冊覚える勉強しておくと、その後の英語の勉強が能率よく進みます。いちいち単語を調べずに勉強していけるからです。
また、単語は文章の中で覚えると確実に定着します。教科書には必要な単語がバランスよく使われていますから、教科書の文章を丸ごと暗唱してその文章の中で単語の意味を覚えるというような覚え方をすれば、文法も単語も読解力も身につきます。
中学生のころまでは、課題となる文章がやさしいので単語の意味がわかればだいたい内容が把握できます。しかし、高校生になると、英語の文章自体が難しくなってきます。また間違えやすい文章が問題としてでてきます。そこで、単語をつなげて理解するだけでなく、文法的に読むことが必要になってきます。例えば、「ここは複数形だから、この動詞の主語はこっちではなくあっちだ」というような読み方です。この文法的に読む勉強の仕方で私自身が参考になったのは、「ビジュアル英文解釈」(伊藤和夫 駿台文庫)という本でした。英文を理詰めに読む読み方が載っていました。自分自身の高校時代にはこういう読み方をしていなかったのでとても参考になりました。
入学試験では、英語の長文を読む力が必要になってきます。難しい長文を読む力というのはやはり実際の入試問題の長文を読むのがいちばん能率的です。全国の入試問題の英語の長文を読む勉強していくと長文の読解に慣れてきます。
次は数学です。数学では、教科書に載っている問題は、一般に易しすぎ解説が少なすぎるようです。入試問題の難問が載っている問題集を1冊百パーセントできるようになるまで解くことが数学の勉強の中心になります。私が高校生のころは、数学の問題でできない問題があると1時間も2時間もひとりで考えていました。しかし、そういうやり方ではなく、できない問題は解法を見て理解するというやり方で問題を解く能率を上げていくのがいい方法です。解法見てもわからない場合は、すぐにわかる人に聞くという勉強法をしていきます。これで、数学は得意になります。
国語の勉強法は、田中雄二氏の「センター試験国語1・2」(三省堂)がとてもわかりやすい参考書でした。現代文については理詰めに解くことの大切さが書かれていました。古文と漢文については、必要最低限の文法と単語とルールを覚えておくという非常にシンプル内容でした。私がこの参考書を読んでセンター試験を解いてみると、実際にすぐに満点が取れました。この理詰めに解く現代文という解き方を教えると、ほとんどの子の成績が上がります。この本は教室に5冊ぐらいありましたが、高校生の生徒に貸出をしているうちに1冊もなくなってしまい、現在アマゾンの古本で18000円もします。
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プログラミング言語では、関数の組み合わせからさらに発展して、複数の関数で作られたひとまとまりの機能をひとつの大きな部品として取り扱うようになっていきます。自動車を作る例にたとえると、一本ずつのネジのような小さな部品から自動車を作るのではなく、ひとまとまりの大きな部品であるエンジンやシャーシやボディなどをレゴのブロックのように組み合わせていくという作り方です。現在の自動車産業は、内燃機関としてガソリンエンジンを使っているので、レゴのように部品化することは難しい面がありますが、これが将来電気自動車になると、今のパソコンのようにいくつかの部品を組み合わせばだれでも作れるというようなものになると言われています。
関数を組合わせた大きな部品を使えるようになる段階が、数学では、個々の問題について解法のパターンを理解するという勉強に相当します。
国語では、より大きな思想を身につけるという勉強に相当します。つまり、哲学や済学などで古典といわれる本を読むことによって自分の思想の枠組みを作っていくというのがこの段階です。
この段階なると、理解すること自体に時間がかかるので、理解できなくはないが十分には理解していないという人も増えてきます。さらに、理解はできるが、自分では使えないというような人はもっと増えてきます。この理解度と習熟度が学力の差となって表れています。
思考力というのは、物事を構成する力です。人間個人の物事を構成する力というのは限られているので、あまりたくさんの関数を組み合わせるようなことはできません。それは、手足や目鼻の数が限られているのと同じで、ある程度以上の組み合わせになると人間の能力ではコントロールできなくなるからです。そこで、いくつかの大きな関数を組み合わせてさらに大きな関数のようなものをつくり、大きな仕事に対応できるようにするというのが、仕事を発展させる形になります。
このように考えると、勉強のできるできないの差には、いくつかの段階があることがわかります。一つは理解できるかできないかという差です。それは、やり方次第で誰でもできるようになります。
問題は、理解はしているが、使えるようにまだなっていない段階です。つまり、大事なことは、理解すると同時にその理解を反復して、自分で自由に使えるようにすることです。
そして自分で自由に使えるようになったあとに、さらに大きな理解に進んでいくという形で勉強が進んでいくのです。
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