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教育は家庭の文化の中から——対話を阻害するテレビ as/443.html
森川林 2009/04/04 09:24 
 昔、といっても四、五十年前ですが、そのころは家庭にテレビがなかったので、1台のラジオを家族全員が聞いて、そのあと家族でおしゃべりをするというような生活がありました。ところが、今はテレビが茶の間を占領していて、そのテレビを見るだけで家族の団欒の時間が済んでしまうようなところがあります。家庭の文化のかわりにテレビの文化が日本の社会に広がっているのです。
 子供が小さいころにテレビの文化に浸り、家族の対話がない状態が続いていると、やがて子供が大きくなり各自が自分の部屋でインターネットを見るような生活になると、ますます家族の対話は乏しくなります。
 テレビの問題点は、惰性で見てしまいがちなところにあります。ニュースや何かの番組が終わったあと、考えたり話し合ったりする時間がなく、すぐに次の画面が始まりその画面に流されていきます。読書でも、深い読み方をしているときは、途中で本をたたんで数分考えてからまた読み出すという読み方をします。そういう考える時間が取れないというのがテレビの弱点です。
 しかし、逆に言えば、このテレビのような媒体を有効に使えば、新しい文化を形成することにも大いに役立ちます。独裁国家では、海外からのテレビ電波受信を禁止したり、インターネットの特定のサイトを禁止したりすることがよくありますが、それはテレビやインターネットのプラスの影響力を恐れているからです。
 話は少し変わりますが、よく途上国への支援で学校を建設するということが行われますが、学校のような支援で効果があるのは、途上国の中でもある程度の豊かさが保障されている都市部に限られるのではないかと思います。人口密度の薄い農村部で、草原の真ん中に学校が突然建っても、その学校を維持するコストのわりには周辺に与える効果はあまりありません。これは、図書館の建設のようなことについても言えます。日本の社会に住んでいると、学校や図書館という形がすぐに身近な例として思い浮かびがちですが、世界の実態はそうではないのではないかと思います。貧しい国の教育に必要なのは、学校や図書館のような入れ物よりもむしろ、その国の家庭生活の習慣に根ざした文化形成で、その文化形成のためにテレビやインターネットは有効に活用できると思います。ただし、その使い方には、教育支援としてテレビやインターネットを活用するという独自の工夫が必要になりますが。

 さて、家庭での文化力を高めるためには、テレビに流されない家庭生活が大事ですが、それと同時に、学習塾に流されない家庭生活ということももっと考えていいのではないかと思います。(つづく)

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教育は家庭の文化の中から——家庭での対話が学力の基礎 as/442.html
森川林 2009/04/03 09:43 
 浪人時代に難しい本を読むことによって国語の成績が上がったという石田さんは、自分の経験から、難しい内容の文章をやさしく解説することによって子供たちの読む力がつくと考えました。そこで、子供たちに、わかりやすい解説をすることによって難しい本を面白く読めるようにするという形の勉強を進めたそうです。
 言葉の森でも、高校生の課題は長文自体が難しくなってくるので、その難しい課題をわかりやすい例で説明すると、子供たちは興味深く聞いています。ただ、事前に自分なりに読んでくる子は力がつきますが、自分なりに読まずに面白い解説だけ聞いていると力はなかなかつきません。
 この難しい内容のものをやさしく解説するということは、高校生だけでなく、小中学生にもそれぞれの学年に応じてあてはまります。そして、その役割はもっぱら家庭の中にあるのではないかと思います。
 全国の学力テストで、学力の高い県を調べてみると、意外なことに学習塾が盛んでないところほど全体の学力は高い傾向があるようでした。つまり、家庭生活の中での文化的な力が、学力の土台になっているのではないかと思われるのです。
 家庭の中で、難しい話を子供の理解力に応じてわかりやすく説明するような機会があれば、子供たちの学力は向上します。学力は、問題集を解くような形の勉強によってではなく、家族の知的で楽しい対話の中でこそつくのです。
(つづく)

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