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森リン点の解説(3)――高得点の作文はどのようにして書くか as/4528.html
森川林 2022/09/10 02:55 


●動画:https://youtu.be/OTXzy2V2TGs

 森リン点の学年ごとの推移を見ると、小6よりも中学生が、中学生よりも高校生が、高得点になります。
 その主な差は、思考語彙と知識語彙の差です。

 思考語彙が、なぜ学年が上がるほど高くなるかというと、書いている作文のテーマと構成の仕方が違うからです。

 小学6年生の場合は、身近な複数の実例をもとに一般化した感想を書く書き方です。
 それに対して、中学生では、複数の理由や複数の意見といった構成を重視した書き方になります。だから、自然に考えるための語彙が増え、思考語彙の点数が高くなります。

 高校生の場合は、作文の課題自体がより抽象的なものになります。そのため、考える要素が増え、その結果思考語彙の点数が高くなるのです。

 しかし、小学生でも、思考語彙を高める方法はあります。
 それは、感想の部分を長く書くことです。
 感想の部分とは、それぞれの段落のまとめとなる感想と、作文全体の最後の感想です。
 この感想を意識的に書くと、思考語彙が高くなります。

 小6の課題の構成を図解すると、次のようになります。
 印のところを充実させることで、思考語彙の点数が高くなります。
┏━━━━━━━━┓
┃第1段落の要約 ┃
┗━━━━━━━━┛
┏━━━━━━━━┓
┃第2段落の実例 ┃
┣━━━━━━━━┫
┃第2段落の感想
┗━━━━━━━━┛
┏━━━━━━━━┓
┃第3段落の実例 ┃
┣━━━━━━━━┫
┃第3段落の感想
┗━━━━━━━━┛
┏━━━━━━━━┓
┃第4段落の感想
┗━━━━━━━━┛

 実例がよく書けていて、その感想があっさりしている場合、作文自体は面白くなりますが、森リン点の思考語彙は高くなりません。

 よく、清書のときに、これまで書いた作文に手直しをして、実例の部分をより詳しく書き字数も長くすることがあります。
 このとき、感想の部分がそのままであれば、思考語彙の割合が相対的に低くなります。
 そのために、長く詳しく書いたのに、かえって森リン点が低くなるということがあるのです。
 実例をより詳しく書くのと並行して、感想も更に書き込む必要があるのです。

 例として示した作文の第4段落は、次のような文章になっています。
人間にとって、プレゼントとは『心』を伝えることができる手段なのではないかと思った。言葉よりも伝わりやすいものではないかとも思う。人間が成長していく中で「プレゼント」という習慣ができたのは、心を伝えたいからなのではないかと考える。感謝の気持ち、祝いたい気持ち、共感する気持ち、、、たくさん人間には感情がある中で、その感情をうまく出せない!そんな時に贈り物という手段を使っていたのではないかと思った。言葉で伝えるより、思いのこもった「プレゼント」を父に贈りたいと思った。


 「プレゼント」というテーマで、これだけ感想の部分をじっくり書けるのは考える力があるからです。

 よく、低学年の作文で、感想の部分を、「とても○○でした。また○○したいと思います。」とまとめる書き方がする例がよくあります。
 小学6年生でも、そういうまとめ方で感想を書く人はかなりいます。
 しかし、この書き方では、思考語彙は高くなりません。

 森リン点の思考語彙が低い場合は、第4段落の感想を充実させることを考えていってください。

 また、第2段落の結びの感想、第3段落の結びの感想も大事です。

 例としてあげた作文の第2段落の感想の部分は次のようになっています。
……私はこのお話が大好きだ。このお話では2人とも心のこもったプレゼントをしたからこそ、心温まる結末になったのではないかと思った。相手のことを考えて買ったものだからこそ、特別嬉しい気持ちになるし、相手のことも大好きになる。そんな物語が「プレゼント」という存在でできているのだと感じた。

 実例だけで終わらずに、その実例に対する感想を書いています。

 第3段落の感想も同じように詳しく書けています。
……例えば、個人の意見だが、私はブランド物のバッグや宝石よりも家族と旅行に行ったりしたいと思う。お金をたくさんかけてもらうより、心のこもったプレゼントの方が倍以上嬉しいと思う。


 第2段落の感想、第3段落の感想を簡単に書き、次の段落に続けても、作文自体はうまく書くことができます。
 実例が面白く書けていれば、それで十分に上手な作文になります。

 しかし、そういう作文で森リン点の思考語彙が低い場合、人間の読み手の感覚としては、「よく書けているが、ちょっとものたりない感じがする」という感じ方になるのです。

 第2段落、第3段落に、それぞれ自分の感想を書くというのは、実はかなり大変です。
 実例だけでつなげるのであれば、長く書くのは比較的簡単ですが、そこに自分なりの感想を付け加えると、書くのに時間がかかります。
 しかし、だからそういう感想の加わった作文は、読み応えのあるものになるのです。

 では、この感想を書く力をつけるためには、どうしたらいいでしょうか。
 ひとつは、国語読解の問題集読書や、説明文の本の読書に力を入れることです。
 もうひとつは、親子で話をすることです。

 低学年の作文でも、感想を長く書ける子は、お父さんやお母さんといろいろなことをよく話しています。
 子供が子供どうしで話をする場合、思考語彙はほとんど必要としません。しかし、大人と話す時間が増えると、自然に思考語彙のある話を聞き、本人も思考語彙のある話をするようになります。
 子供の作文の感想の部分がものたりない場合は、親子で話をする時間を増やすといいのです。

 親子で話をするときの材料は、子供の書く作文です。
 子供の書く作文の実例に合わせて、お母さんやお父さんが自分の小さいころの似た話をしてあげるのです。

 もうひとつは、子供の書く作文の表現です。
 子供と一緒に、作文の中に入れるたとえやダジャレを考えてあげるのです。
 また、子供が長文の音読をしているときに、その長文の内容に沿って、似た話をしてあげるという方法もあります。

 また、総合学力クラスでの発表の時間や、創造発表クラスの発表の時間を利用して、親子で理科実験や調査研究に取り組むと、その過程で自然に知的な対話が増えます。

 親子の対話は、読書と同じように子供の考える力を育てるのです。

 この親子の対話ができるのは、大体小学6年生までです。
 中学生や高校生でも、親子の対話をしている生徒はいますが、ほとんどの子は、中学生になると、自立のために親から離れようとします。
 だから、小学6年生までの間に、親子の対話にじっくり取り組んでいくといいのです。

森リン点の解説(1)――高得点の作文はどのようにして書くか
森リン点の解説(2)――高得点の作文はどのようにして書くか
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