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読む学力、書く学力。解く学力、作る学力(その2) as/465.html
森川林 2009/04/24 08:39 
 学力には、解く学力と作る学力があります。

 作る学力というものは、大学の入学時、あるいは大学を卒業したばかりの時点では、まだはっきりとはわかりません。しかし、社会人として何年かたつうちに、次第に作る学力を持っているかどうかということがその人の成長を左右するものになっていきます。
 そのような事情を理解するためにも、子供のときから、読む学力と書く学力の二つの学力をバランスよく育てていくことが大切になります。
 読む学力、解く学力は、主にテストで評価されます。書く学力、作る学力は、もともとテストの評価には向きません。むしろ、発表する場がいちばん必要とされます。
 かつて日本では、万葉集の文化がありました。和歌を作るということは、テストで評価される性質のものではなく、ただ発表すること自体が喜びとなっているものです。テストによる評価ではなく、作る喜びによって、日本中に和歌を作る文化が広まっていったのです。
 これからの教育や学校の雰囲気は、これと同じように、作る勉強、書く勉強、発表する勉強を中心にしたものになってくると思います。これまでの勉強は、主にテストのための勉強でした。しかし、これから勉強は、自分の知的な生産性を高めるための勉強、つまり向上心に基づいた勉強になっていきます。
 教育以外の分野でも同じような変化はおきます。医療は、病気を治すための医療から、より健康でより強くより美しくなるという身体の新しい価値を創造する医療が中心になっていきます。また仕事も、我慢して取り組む必要悪のようなものから、仕事自体が喜びとなるもの、新しい商品やサービスを創造するものへと変わっていきます。つまり、社会全体の雰囲気が、教育、医療、政治など多くの分野で、必要に迫られて行うものから、興味や関心に基づいて行われるより文化的なものへ変化していくのです。
 言葉の森の作文教室も、将来の教室作りをこの展望の中で考えています。しかしもちろん、いくら発表の場が大事だからといっても、小学生中学生の時期に発表することばかりが目的になってしまうと、逆に小さな完成品しか育たないということもあります。小学校時代には、小学生らしい作文を書くことだけが目的なのではなく、将来の土台となる作文の勉強することも目的だからです。
 従って、作文の勉強でも、三つのことが重要になってきます。第一は、理解する力をつけることです。長文の暗唱などで幅広い知識を大量に高速に身につけるような学習です。第二は、考える力をつけることです。これは構成図などを利用して自分の頭の中にある材料を高度に組み合わせていくという練習です。第三はもちろん、表現することです。これには高速な音声入力のような技術も含まれますが、もっと大事なことは、感動を表現することです。絵画や音楽などの芸術活動と同じように、作文は文章によって感動に形を与えるものとして考えられるようになるでしょう。
 言葉の森の作文教室も、この考えに基づいて、知的で感動のある教室を目指していきたいと思っています。

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読む学力、書く学力。解く学力、作る学力(その1) as/464.html
森川林 2009/04/23 09:03 
 現在の社会では、学力を上げるためにテストを課すというような勉強が行われています。しかし、そのテストで十分に正しい学力が測れないと考えられる場合は、さらに正しい学力を評価できるようにテストを工夫するというようなことが行われています。しかし、もともとテストのための学力は、本質的に問題を解くための学力です。これに対して将来求められてくるのは、解く学力ではなく、作る学力ではないのかというのが今回の話です。
 学校制度が今のように整ってはいない過去の時代の勉強は、作る学力が中心でした。第三者が学力を評価するという仕組みが社会的に広がっていなかったからです。
 しかし、やがて社会が安定し、学校制度や評価制度が整うようになると、テストで評価するための学力観が登場します。そしてこの評価のための学力で高得点を上げる人、つまり受験秀才がだんだんと組織のトップに立つようになっていきます。しかし、受験秀才は必ずしも作る学力に優れているわけではないので、その組織や社会が衰退するというケースも生まれてきました。
 この解く学力、作る学力は、言葉を換えると、読む学力、書く学力ということもできます。もともと、読む学力は、書く学力のためにあるものでした。しかし今は、読む学力そのものが自己目的化しています。そのために、国語の問題では、消去法で選択問題の正解を選ぶというような問題作りが一般的になっているのです。
 解く学力、作る学力は、テストのための学力、向上のための学力と言い換えることもできます。
 テストのための学力では、勉強の動機が他人からの評価や志望校への合格になります。そのため、与えられたゴールを目指して能率よく学習を組み立てていくというのが勉強の中心的なスタイルになっていきます。そこでは、勉強は、ゴールに向かってできるだけ苦手をなくすという方向に向かいがちです。
 それに対して、向上のための学力では、その動機が自己の向上や、社会への貢献や、学問的な創造になっています。ここでのゴールは、他人から与えられたものではなく、自分で作ったゴールです。従って、ゴールに向かって自分の得意を生かすというような発想で勉強が行われる傾向があります。
 実は、このゴールに向かって苦手をなくす勉強と、ゴールに向かって得意を生かす勉強のバランスが重要です。つまり、幅広い知識を土台に、個性と得意と夢を生かすというような勉強がこれから求められてくるのです。
(つづく)
(この文章は、構成図をもとに音声入力した原稿をamivoiceでテキスト化したものです)
マインドマップ風構成図
 記事のもととなった構成図です。

(急いで書いたのでうまくありません)


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