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「汝自身を知れ」と作文(その2) as/473.html
森川林 2009/05/01 10:58 
 「汝自身を知る」ことは、作文の勉強にも当てはまります。

 人間の考えは、頭の中で考えているだけではまだ不完全です。現実に文章にしたり音声にしたりすることによって、初めて現実的なものとなります。この文章化されて表に出てきたものが自分自身の一つの面です。自分の書いた文章によって、自分自身を再確認するというところに文章を書く意義があります。
 しかし、自分自身を再確認するというのは、単なる出発点です。この出発点を土台にして、新たな創造が始まるというのがいちばん大事なのです。
 これは、作文を書く前の構成図について、よりはっきりした形で言えます。構成図を書くというのは、自分の頭の中にある考えを全部出していく作業です。テーマに関連して思いついたことを次々と書いていくと、自分自身の考えが客観的にわかってきます。そして、その考えた結果としての構成図を見ていると、自然にそこから新しい考えが湧き出てきます。
 人から教えてもらった考えではなく、自分の中から湧き出てきた考えは、その真実性に確信が持てます。だから、文章を書く練習をしていると(それは日記のようなものでも言えると思いますが)、その人の考えはどんどん個性的になっていくのです。

 さて、さらに話を広げて「汝自身を知る」ということで、歴史の勉強を考えてみます。
 学校で学ぶ歴史は、世界史の勉強と日本史の勉強に分かれています。昔、私が高校生のころは、社会全体にインターナショナルな雰囲気が強く、西暦と元号を比較すると西暦の方が先進的で元号は古臭いという感覚を多くの人が持っていました。その結果、私は、受験の科目として自然に日本史ではなく世界史を選びました。たぶん、多くの人がそういう感覚を持っていたと思います。
 しかし、現在はむしろ、ローカルのよさを見直そうという時代です。西暦と元号で言えば、日本にしかない元号を大事にしようという考え方です。世界史と日本史で言えば、日本人はまず足元の日本史を学ぶべきだという考えです。
 「葉隠」という本の中に、次のような文章があります。「世界にはいろいろ歴史の本があるが、この藩の人は、この藩の歴史だけを知っていれば何も困ることはない」(意訳)。これは、ある意味で物事の本質をついています。
 世界史と日本史で言えば、日本人はまず日本の歴史をしっかり学んでいれば、それを世界の歴史にも当てはめて考えることができるということです。また、日本人の多くは、これから日本の社会で活躍するはずですから、その足場となる日本の歴史を学んでいくことが役に立つということです。
 日本史の勉強には、もう一つ大きな役割があります。それは、日本史を学んでいると、日本人のほとんどが、古事記や日本書紀の世界にまでつながる家の歴史を持っていることがわかるということです。小学生のころ、苗字によって源氏か平家かを分ける遊びが流行ったことがあります。乱暴な分け方にも見えますが、これも根拠がないわけではありません。
 世界中の民族で、この日本人のように先祖のルーツをたどれる長期の平和な歴史を持っている民族はほとんどありません。日本史を学ぶということは、単に歴史の知識を学ぶことだけではなく、日本人としての自分自身を知るということにつながります。
 そして、自分自身を正確に知れば、人間には自ずからそのよいところを伸ばし悪いところを直すという自然の力が働き出します。外国のよいところを学んで、それを外科手術や投薬治療のように外から日本の社会に当てはめようとするのではなく、日本の歴史の中から湧き上がるものによって自然によい方向に向かうという発想がこれからもっと必要になってくると思います。

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「汝自身を知れ」と作文(その1) as/472.html
森川林 2009/04/29 11:50 
 「汝自身を知れ」というソクラテスの言葉は有名ですが、この意味を深く理解している人は少ないと思います。私は、この言葉を、すべては自分の中に答えがあるということとして考えています。
 例えば、「読書百遍意自ずから通ず」という言葉があります。つまり、何度も繰り返して読んでいけば自ずからわかるということです。この自ずからわかるような能力が、人間の中にはもともと備わっているのだと思います。
 沖縄の方の水泳の教え方で、子供を船から海に落としておぼれそうになったら引き上げるというやり方があるそうです。ちょっとかわいそうですが(笑)。何度もおぼれそうになっては引き上げられているうちに、自然に泳ぎ方を覚えてしまうというのです。これも、人間にはもともと泳ぐ能力があり、それを思い出せば自然に泳げるようになるということです。
 尿療法という健康法があります。自分の尿に含まれている自分自身の情報を知ることによって、病気などが自然に治癒の方向に向かうというのです。これも人間の体の中にある自然治癒力が、自分自身を知ることによって最適の状態で活性化するということなのではないかと思います。
 Oリングテストという方法も、人間の筋肉の中に自ずから自分にとってよいものを感知する力があるということを示していると思います。
 もっと身近な例でいうと、私たちはオレンジを見れば自然に唾液が出ます。これは、努力をして身につけた能力ではなく、もともとあらかじめ自分の体の中に、オレンジという状況に対応する能力として備わっているものです。
 実際に遺伝子工学のレベルでも、同様のことが証明されています。病気などになったときに、どのようにして身体がその病気に対応するかというと、その病気を治すことに対応したDNAの情報が読み取られて必要な酵素などが合成されるのだそうです。つまり、新しく何かを作るのではなく、すでに自分の中にある情報をただ読み出すだけというやり方で、生物は外界の変化に対応しているのです。これは、身体の外から薬を与えたり手術をしたりするような方法とは180度違う発想で、もともと人間に備わっている自然治癒力を活性化するという考え方です。
 話は少し脱線しますが、声にはその人のそのときの感情が載っているそうです。これを利用して、声で感情を読み取るソフトが開発されました。ということは逆にいうと自分の声をずっと聴いていると、そのときの自分の感情が把握されて、その感情を最もよい状態に修正するような力が人間の中にあるのではないかとも思えてきます。念仏を唱えるなどということの中には(私はやりませんが)、実はこういう効果もあるのではないかと思います。しかしこれは単なる仮説です。
 さて、「汝自身を知れ」は、作文の勉強についてもあてはまります。
(つづく)
(この文章は、構成図をもとに音声入力した原稿をamivoiceでテキスト化したものです)
マインドマップ風構成図
 記事のもととなった構成図です。

(急いで書いたのでうまくありません)

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