メジロ
●動画:https://youtu.be/VNJ6Ru9a-CA
私は、前回も書きましたが、人を批判するのは好きではありません。
しかし、間違ったことが公にされていて、それを多くの人が知らないというのは、世の中の進歩にとって、特に教育の分野においてはマイナスになると思うので、あえて批判的なことも書くことにしました。
「ブンブンどりむ」の監修者である齋藤孝さんの作文指導の骨格に、穴埋め作文という方法があります。
ただし、斎藤さんは、そういう言葉で述べているわけではありませんから、穴埋め作文というのは、私が作った造語です。
この穴埋め作文というのは、作文指導に慣れていない人が行いやすい方法です。
「最初にこういうことを書いて、次にこういうことを書いて、最後はこういうふうにまとめてみよう」と、構成の仕方を穴埋め式に指導する方法です。
学校教育でも、作文の授業で、作文指導に慣れていない先生が子供たちに構成メモを書かせるやり方をすることがあります。
作文を書く前に、構成メモを書かせ、そのメモをもとに作文を書かせるという指導法です。
こういう授業を受けた生徒のほとんどは、「直接作文を書いた方が簡単なのに」と言います。
特に、作文力のある生徒は、構成メモを書くことを面倒に思います。
逆に、作文力のない生徒は、構成メモを書いても、それで作文がよりよく書けるようにはなりません。
構成メモは、ただ遠回りするだけの勉強になっているのです。
それは、なぜかというと、子供たちの物事に対する認識の仕方には、学年による違いがあるからです。
年齢で言うと、構成的に考えることのできる学年は小学5年生からです。
小学4年生までは、作文を書く前に全体の構成を考えるということ自体に無理があります。
だから、小学2、3年生までの生徒に、最初にメモを書いてから作文を書くという指導をするのは、子供にとっては途方にくれるだけで、何のプラスにもなりません。
しかし、小学5年生以上、特に中学生や高校生に、思いついたままに書いていいというのでは作文指導になりません。
思いついたままに書いていいのは、自由な日記だけです。
日記を書くときに構成メモを考える人はまずいません。
ところが、近年の中学入試、高校入試、大学入試では、作文小論文の課題が出ることが増えています。
作文の試験で、受験生が思いつくままに書いたのでは、当たり外れを大きくなります。
また、書き出す前に、どう書こうかと考える時間が長くなります。
だから、学年が上がったときには、構成を考えてから書くことに慣れておく必要があるのです。
しかし、その構成の仕方は、シンプルなものである必要があります。
いちいち先生に、「最初にこう書いて、次にこう書いて、最後はこうまとめて」と教えてもらっているのでは実際の試験では使えません。
自分の中に、構成の枠組みがいくつかあり、それに当てはめて考えていくようにするのがいいのです。
言葉の森では、この構成の仕方に、小1から高3まで学年別の構成法を割り当てています。
例えば、中学1年生であれば、是非の主題(良いか悪いかを明確にした意見)のあとに複数の理由を展開するというのが、中1の作文の構成の大枠です。
例としては、「宿題は良いか悪いか」「漫画は良いか悪いか」「嘘は良いか悪いか」というような課題です。
何が正しい意見かというのではなく、自分の述べる意見に、裏付けとなる複数の理由が書けることが大事です。
小学生の作文も、小学生だけの作文指導にとどまるのではなく、将来、中学生や高校生になったときの作文指導に結びつけるかたちで構成を考える必要があります。
しかし、小学5年生までは、子供たちに物事を構成的に考えるという意識がまだないので、構成は、言葉の項目を中心に組み立てています。
例えば、「題材」としては会話を思い出して書こう、「表現」としてはたとえを入れて書こう、「主題」としては自分の思ったことを長く書こう、初歩的な「構成」としては、お父さんやお母さんに似た話を聞いて話を立体的にして書こう、というような書き方です。
この書き方を身につければ、題名ごとに穴埋め式の構成メモを考える必要はありません。
また、先生に教えてもらわなくても、自分で構成的な作文を書くことができます。
構成的に書くという発想ができると、大学入試の小論文でも、すぐにどういう切り口で書くかという考え方ができるようになります。
「これは、社会問題の主題で、原因と対策というかたちで書いていこう」とか、「これは、生き方の主題で、複数の方法というかたちで書いていこう(この場合の複数の方法のひとつは人間的な方法、もうひとつは社会的な方法という形で拡げることが大事です)」などという考え方ができるのです。
齋藤孝さんの穴埋め作文では、このようなところまでは考えていないはずです。
だから、穴埋め式の作文指導は、子供たちに実際に作文を教えたことがない人が思いつきで作文の書き方を教えるときによくやるやり方と似てくるのです。
それを、添削をする講師が、熱心に添削するとしても、もともとの方法論がない状態での添削ですから、添削も雰囲気的なものにならざるを得ません。
添削する人はそれぞれに一生懸命やっていますが、大事なことは、現場の熱心さではなく、大きな方針があるかどうかということです。
更に言えば、作文教育に関して、何らかの理念的な柱があるかどうかということが大事なのです。
作文教育を含めた言葉の森の教育の理念については、下記のページに載せています。
「日本の教育を根本的に改善するオンライン4人クラス――対面式教育とオンライン式教育を超えた新しいオンライン教育のプラットフォーム 」
https://www.mori7.com/as/4582.html
====(一部を引用)
言葉の森の教育理念は、子供たちの思考力、創造力、共感力を育てることです。
他の通信教育や学習塾は、受験競争に勝つことが教育の目的です。
言葉の森は、思考力、創造力、共感力を育てる結果として、受験競争にも勝つということで勉強を進めています。
だから、言葉の森は、成績を上げるための無理な詰め込みはしません。
しかし、小学校高学年や中学生ぐらいになると、ほとんどの子はがんばって勉強するようになります。
普通に育っていれば、子供たちは中学3年生になるころには、自然に自分の意思でがんばるようになります。
大事なことは、知識の詰め込みを先取りすることではなく、子供たちの自然な成長を育てることです。
今は、人為的な環境が多いので、自然に育てることをまず意識的に行っていく必要があります。
自然に育てるということは、楽しく遊び、楽しく学ぶ環境を作るということです。
将来、現在のような受験競争を中心とした勉強はなくなります。
それに代わって登場するのは、子供たちの個性を伸ばし創造性を育てる教育です。
大人は、今の価値観で子供の教育を考えるのではなく、子供たちが成長する時代の価値観を想像して子供の教育を考えていく必要があります。
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シジュウカラ
●動画:https://youtu.be/FGC9VlyuKJQ
私は、他人を批判するのは好きではありません。
批判は、何も生み出さないからです。
大事なことは、よいものを褒めること、自分で創造することの2つで、悪いものを批判することではありません。
しかし、悪いものが出回っていて、それを多くの人が知らずに使っていたとすると、それはもったいないことだと思います。
なぜかというと、その悪いものを通して、自分がしようとしていたこと自体が意味のないものだと思ってしまうことがあるからです。
例えば、作文教育が大事だと思っても、勘違いした作文教室に参加すれば、子供は作文嫌いになります。
少なくとも長く続けようという気にはなりません。
作文力は、小学校時代だけではなく、中学生、高校生になってから更に伸びる学力です。
それを、小学校時代に、勘違いした作文教育を受けることによって、作文の勉強から離れてしまったとしたら、それはせっかくの機会を活かせなかったことになるからです。
作文通信教育講座「
ブンブンどりむ」の監修をしている齋藤孝さんが、「
こども文章力」という本を出しています。
ブンブンどりむは、「作文特化の教材で身につける『自分で考え、表現する力』」をうたっているので、作文教育がメインです。
その作文教育を監修している齋藤孝さんが書いている本なので、どういうことが書いてあるかと思い読んでみました。
たぶん、言葉の森の作文教育法と同じようなことが書いてあるのだろうと思いましたが、中身は全然違いました。
作文教育に全くの素人の人が、国語の問題集のような感じで、作文の書き方の説明を書いているだけの本でした。
この本を読んで、作文の書き方がわかったり、作文が書けるようになる人はまずいないと思います。
ブンブンどりむは、「30年の実績 作文添削」ということを広告で書いています。
本当に30年前に何をやっていたか知りたいところですが、30年も作文指導をして、このレベルの作文指導では、何を指導していたのかわかりません。
たぶん、ブンブンどりむは、現場の添削の講師が赤ペン添削をがんばって書いているだけで、作文指導の根本の方法論がないのだと思います。
ちなみに、言葉の森の作文指導は、40年以上の実績で、40年以上前に指導していた経過も事実として残っています。
法人化する前から数えれば、50年近い実績です。
40年前には、作文教室という概念自体がない時代でしたから、言葉の森が日本で最初に「作文教室」の名称を使った教室です。
言葉の森は、そのころから、すべて手作りの試行錯誤で作文指導の方法を積み重ねてきました。
だから、小学1年生から高校3年生までの作文指導ができます。
私(森川林)のうちの子2人も、小1から高3まで言葉の森で作文の勉強をしました。
当時は通学の作文教室があったので、子供の小学校の友達も来るようになり、その子たちは、やはり小学生から高校生まで勉強を続けた子が多かったです。
高3になるころには、みんな立派な文章を書けるようになっていました。
さて、齋藤孝さんの作文指導で何が問題かというと、指導の根本が穴埋め式の作文指導になっていることです。
「最初にこういうことを書こう」「次にこういうことを書こう」「最後のこういうまとめを書こう」となっていますから、枠の中にそのとおりに穴埋めをした子は、作文を書くの前の箇条書きができます。
しかし、箇条書きは、すべてつなげても100字から200字程度です。
その100字から200字の箇条書きを、600字から1200字の作文にする方法はありません。
箇条書きを作文にできる子は、もともと書く力がある子だけです。
「なにを書けばいいかわからない」という子は、親が引っ張らなければ書けません。
しかし、親が引っ張る状態は、何年も続けられるわけではありません。
だから、ブンブンどりむは、小学生までの間の指導になっているのです。
親が引っ張る形では、中学生、高校生までの作文の指導はできません。
そして、かろうじて、600字の作文を書き続けた子がいたとしても、そのときの指導法の中心は、赤ペン添削です。
赤ペン添削が返ってくると、子供は、先生がいろいろ書いてくれたと言って喜びますが、その赤ペンの意味を理解しようとする子はまずいません。
そのうち、赤ペン自体を読まなくなります。
だから、毎回同じような作文を書いて、毎回同じような赤ペン添削が続くのです。
赤ペン添削は、集団一斉指導の時代に、そういう方法しかなかった時代の名残(なごり)です。
今は、ネットワーク技術によって、少人数のクラス指導、個別指導ができます。
これからの作文指導は、赤ペン添削以外の方法を生かしていく必要があります。
言葉の森の作文指導の特徴は、第一に、全体の構成を考える指導です。
この構成指導は、小1から高3まで系統的に組まれています。
だから、小1で書いた構成の延長で、高3までの作文学習ができます。
小学生までは、主に複数の実例です。
中学生からは、意見と複数の理由や方法という構成になります。
高校生は、原因や対策という構成が加わりますが、それ以上の感想文のもとになる文章が難しい論説文になります。
言葉の森の作文指導の特徴の第二は、表現の仕方の項目指導です。
どういう表現やどういう実例やどういう感想を入れればいいかということを項目として指導します。
ここで、作文をふくらませることができます。
また、保護者が子供にアドバイスをする場合も、漠然と「もっと長く書きなさい」などと言うのではなく、「この項目を入れるためにどうしたらいいか、一緒に考えよう」というアドバイスができるのです。
例えば、「どうやってたとえを入れようか」とか、「どうやって会話を入れようか」などということを考えることができます。
中学生や高校生の場合は、更に発展して、「どうやってデータ実例を入れようか」「どうやってことわざの加工をしようか」ということに発展します。
言葉の森の作文指導の特徴の第三は、題材(実例)の指導をすることです。
小学生の場合は、似た例を保護者に取材するという項目があります。
ここで、保護者に取材した子は、実例だけでなく語彙が増えます。
特に、小学5、6年生の抽象的な課題の出てくる作文では、両親の取材だけで子供の考える力が伸びます。
語彙が増えるということは、感想の部分を自分らしく書けるようになることです。
「こども文章力」に載っていた小3の生徒の例文では、感想のところを、「……とよろこんでくれて、うれしかったです。」という書き方になっていました。
これが悪いというのではありませんが、「うれしかった」「たのしかった」「またやってみたい」だけで終わってしまう感想は、語彙の不足から来ています。
だから、作文と通しても親子の対話が必要になるのです。
言葉の森作文指導の第四の特徴は、主題の指導があることです。
小学生の場合は、感想を長く書こうとか、作文の中に思ったことをところどころに入れようとか、結びの感想を自分らしく書こうという指導です。
中学生高校生の場合は、感想や意見の部分をしっかり書くことで、森リン(自動採点ソフト、特許取得)の点数が上がります。
森リンの点数を見るために、小学5年生からは、パソコンで作文を書くようにするといいのです。
受験で作文を使う場合は、3か月から半年まに手書きに戻せば大丈夫です。
この主題の指導が、客観的な数値として見えるということが、言葉の森の指導の特徴です。
今回は、「こども文章力」の本の内容についてはあまり引用しませんでしたが、次回からは、本の内容に沿って、どうしたらもっとよい指導ができるかということを説明していきたいと思います。