白梅
創造発表クラスは、自由な実験や研究の発表をするクラスです。
これまでの勉強は、すでに完成されている知識を与えられ、それを覚えて、試験のときに再現するというサイクルの中で行われていました。
だから、記憶力のよい人や、長時間勉強する人が、いい成績を取れる仕組みになっていました。
確かに、知識を習得することは大切です。
しかし、今の教育は、学年が上がるにつれて、試験で点数の差をつけるために行われる面が強くなります。
そのために、試験が終わればすぐに忘れてしまうような瑣末な知識を詰め込むような学習が行われてきたのです。
現在の中学入試、高校入試あたりまでは、まだ知識の詰め込み中心の試験が続いていますが、その先の大学入試では、一足先に総合選抜型の入試が広がっています。
総合選抜で評価される学力は、思考力、創造力、発表力、作文力、面接力などです。
これに、個性、意欲、問題意識などが加わります。
高校では、2022年度から探究学習が授業に取り入れられるようになりました。
この探究学習は、大学入試の総合選抜と共通の考え方にもとづいています。
つまり、知識の詰め込み教育から、創造力と発表力の教育へと、学習の重点が大きく変わりつつあるのです。
最近でも、次のような総合選抜の記事がありました。
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「総合型へ入試をシフト」 東北大総長が語る改革、25年後の姿
https://www.asahi.com/articles/ASS1R6FQ3S1RUTIL048.html
東北大の大野英男総長は昨年、入試の一般選抜について「全て総合型選抜へ移行したい」と表明した。これまで増やしてきた総合型の枠をさらに広げ、「未来を描ける人」「多様な才能を持つ人」を世界から集めたい、と狙いを語る。
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筑波大学長「入試は面接と論文中心に」 背景に留学生と少子化
https://www.asahi.com/articles/ASS1R6DKHS1RUTIL046.html?iref=pc_extlink
どんな入試を開発したらいいかは難しいが、何年もかけてやるしかない。
海外の有名大学の入試では、筆記の難度は大学入試センター試験ぐらいだが、長時間の面接と長い論文を課す。テーマは正解のない問いで、例えば「死刑はなぜ廃止しなくてはならないのか」など。日ごろから物事を論理的に考えていることが要求される。
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東大が「推薦」出願枠を増やし、異例のメッセージを出した理由とは? 武田副学長に聞く
https://www.asahi.com/edua/article/13616568
教員側からは、推薦生について、総じて一般生より高い評価がありました。学力はもちろん、意欲や積極性、リーダーシップについては一般生より高いと。詳しく言うと、プレゼンテーション能力、表現力、社会に対する問題意識、協調性も高い。つまり5年間の評価として、推薦生は非常に優秀で、うまくいっているんだと。
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では、総合選抜型の入試には、どういう対策をしたらいいのでしょうか。
それは、作文の学習と同じです。
小学生のころから、作文の練習をしている生徒は、書くことに慣れ、文章を書くことに自信が持てるようになります。
同じように、小学生のころから、創造的な学習を行い、みんなの前で発表することに慣れている生徒は、総合選抜型の入試にも自信を持って対応できるのです。
これは、大学入試だけでなく、自己アピールを必要とする就職試験などにもあてはまります。
創造性を生かす学習をしてきた生徒は、社会人になってからも、自分らしい創造的なことに挑戦しようと思うようになるのです。
これからの教育は、知識詰め込み型の教育から、創造発表的な教育や作文的な教育へと大きく重点が変わりつつあります。
創造発表クラスでは、参加者は、自分の興味のあるテーマで、自由に実験、研究、調査、工作などを行います。
それをみんなの前で発表し、ほかの人の発表について質問や感想を述べます。
高校で行われている探究学習は、グループ学習というかたちで進められます。
グループでひとつのテーマに取り組むため、自分のあまり関心のない分野の研究を割り当てられることもあります。
また、発表もグループとして行われるので、個人が責任を持って発表をするわけではありません。
探究学習を真に意味あるものにするためには、一人ひとりが個人の関心にもとづいて、ひとりで研究を深め、ひとりで発表を工夫する必要があります。
そこで、活用できるのがChatGPTです。
研究テーマが個性的であればあるほど、相談できる人や、参考になる本は限られてきます。
すると、問題意識自体は個性的で優れたものであったとしても、それを深めることができません。
そのときに、ChatGPTに研究の方向を相談するのです。
ChatGPTは、どんな分野についても詳しい知識を持っている友達のようなものです。
いくら聞いても、同じように詳しく親切に教えてくれます。
ChatGPTのアカウントを作るには、メールアドレスが必要です。
メールアドレスは、Gmailで13歳になれば取得できますから、中学生は自分のChatGPTアカウントを作ることができます。
ついでにZOOMとYouTubeのアカウントを作っておくといいと思います。
そうすると、作品の発表を動画で作成することができるようになるからです。
ChatGPTは、無料で使えるのがChatGPT-3.5で、有料の場合はChatGPT-4になります。
有料の金額は月額2000円ぐらいですから、無料のアカウントでいいのですが、有料にすれば高機能になります。
小学生の場合は、お父さんやお母さんに作ってもらったChatGPTのアカウントを利用するといいと思います。
自分の研究したいことが決まったら、次のようにChatGPTに聞きます。
「私は、中学○年生です。今、○○について研究をして発表したいと思っています。どういう方向で研究を進めたらいいと思いますか」
自分の学年も言っておくと、その学年にふさわしい方向で話をしてくれます。
ChatGPTは、友達ですから、気軽に聞くことができます。
「それでは、具体的にどこを探せばいいの」
とか、
「それに関連するサイトや本を教えて」
などと、追加の質問を次々にしていきます。
自分の知りたいことを検索で探すのは時間がかかりますが、ChatGPTに聞けば焦点の絞られた話をすぐに教えてくれます。
参考資料や参考画像を集めて、自分の研究結果がまとまれば、今度はそれをChatGPTに聞いてみます。
「私は、次のような研究レポートを作りました。これについて、アドバイスをしてください」
そして、自分の書いたレポートを貼り付けるのです。
すると、ChatGPTは、どこが説得力に乏しいとか、どこに誤字があるとかいうことを細々と教えてくれます。
最後に、「このレポートを150字に要約して」と頼めば、レポートの梗概(こうがい)も作成してくれます。
もちろん、要約は、自分で作ってもいいのです。
こうして發表するレポートができたら、ZOOMの共有画面でそのレポートを広げながら、レコーディング機能で、動画を作成します。
カメラをオンにすれば、自分の顔も一緒に写りますが、カメラをオフにしておけば、共有画面だけが動画になります。
10分以内の動画であれば、言葉の森の発表室に送信できます。
しかし、将来、自分の動画をまとめて蓄積しておきたいと思う場合は、YouTubeのアカウントを作り、そこにアップロードしておくといいでしょう。
YouTubeにアップロードする動画は、公開、限定公開、非公開のいずれかを選べます。途中で変更することもできます。
いずれ、将来、入試で自己アピールをする際などには、この動画を見せるのが最も説得力があるということになると思います。
YouTubeのような外部のサービスにアップロードするだけでなく、SSDなどに保存しておけば、将来、YouTubeのサービスが使えなくなっても安心です。
現在1TB(テラバイト)のSSDは、9,000円程度です。
ZOOMで作る約10分の動画は35MB(メガバイト)ぐらいです。
1TBは1,000GBで、1GBは1,000MBですから、1枚のSSDで、ZOOMで作った10分の動画が28,500本ぐらい保存することができます。
現在の勉強を、多くの生徒は苦しい勉強だと思っています。
それは、将来使うあてのない細かい知識を覚えさせられたり、調べればすぐにわかることを記憶させられたり、わざと間違えやすいように工夫された計算問題を出されたりして、それを点数化して競争させられる勉強になっているからです。
本来の勉強は、自分のやりたいことがあり、それをするために必要な知識を学ぶという前向きのものです。
そして、学ぶだけでなく、更にその勉強に工夫を加えることもしたくなるのが本当の勉強です。
勉強は、もともと楽しいものであるはずなのです。
創造発表クラスは、本来の楽しい勉強をするための教育です。
こういう先取りの勉強に参加することが、自分の未来の先取りになります。
今の中学生は、退屈な勉強と楽しい部活を中心に生活していると思います。
部活動は、友達との交流があり、勝敗やコンクールという共通の目標があります。
だから、多くの子が部活に熱中しますが、その部活の方向は、既存の与えられた枠組みの中での狭い競争です。
ほとんどすべての子は、その部活の延長でプロになるわけでも何でもありません。
ただ競争と勝敗があるから、そのときだけ熱中しているという一時的なゲームの世界の熱中なのです。
もちろん、熱中したことは、人間を成長させ、生涯の懐かしい思い出になります。
しかし、これからの時代は、自分らしく生きることが大切になります。
勉強も、遊びも、自分らしいことが基本です。
人に合わせた勉強や遊びではなく、自分の中から湧いてくる勉強と遊びを育てていくことが大事になるのです。
昨日、朝日小学生新聞に、ブンブンどりむの広告が載っていたので、言葉の森との違いを知りたい人がいると思い、比較のポイントを書くことにしました。
いちばん大きな違いは、指導の質が違う点です。
ブンブンどりむは小学校の主に低中学年までの指導ですが、言葉の森は高校3年生までの作文指導を行っています。
指導の仕方は、ブンブンどりむは穴埋め作文と事後添削ですが、言葉の森は表現項目と構成法の事前指導に重点を置いています。
なぜ事前指導が大切かというと、「褒める指導」は、事前指導にもとづいて褒めることに意味があるからです。
ブンブンどりむのように「ほめて伸ばす作文添削」で、子供が何を書いても褒められるとなれば、次第に褒められることに飽きてきます。
事前に指導したことができたから褒めるという、褒められるための目標がなければ、努力することがなくなります。
では、なぜブンブンどりむに事前指導がないかというと、これはあらゆる通信添削に共通することですが、添削する人と生徒とのつながりがないからです。
添削する人は、多くの場合、固定していません。不特定の添削者です。
生徒に何かを教えて、その指導をもとに添削するわけではありません。
誰かわからない先生に、いつも褒める添削をされるという仕組みになっているのです。
これでは、作文は上達しません。
ブンブンどりむは、広告の中で「31年の実績」ということをうたっています。
しかし、31年前に、ブンブンどりむの広告というものを見たことはありません。
たぶん10年ほど前に、小学生新聞に広告を載せたのが最初だと思います。
言葉の森は、42年の実績です。
言葉の森が作文教室を始めたときには、日本には作文教室という概念自体がありませんでした。
年数が長ければいいというのではありませんが、長年の指導の蓄積があるから、どのような生徒にも対応した指導ができるのです。
ブンブンどりむの指導の仕方は、通信添削です。
通信添削の弱点は、子供が家庭で自分の意思で勉強を始めなければならないことです。
すると、結局、親に言われて勉強を始めるようになります。
また、途中で書けなくなった場合、相談できる先生はいません。
だから、子供がひとりでできるようなスモールステップの穴埋め作文が指導の中心になります。
しかし、そういう簡単な方法では、本当の書く力はつきません。
通信添削では、高度な作文指導はできません。
言葉の森では、オンラインクラスで全員が一斉に作文を書き始めます。
そして、作文の勉強のを始める前に読書紹介があり、毎回、先生による個別指導があり、月に1回作文発表の交流があります。
だから、得意な子も苦手な子も、同じように作文の勉強が進められます。
そして、学年に応じて高度な作文の学習ができるようになっているのです。
ブンブンどりむの指導法を監修しているのは、齋藤孝さんです。
齋藤孝さんは、いろいろな本を出していますが、作文教育や読解教育については詳しくありません。
斉藤さんの「こども文章力」「こども読解力」は最近の著書ですが、作文指導の方法は穴埋め作文なので、小学3年生ぐらいまでしか指導できません。
文章力のある子は、このような遠回りの練習をされるよりも、直接作文を書くことを好みます。
斉藤さんの指導法では、小学校高学年や中学生、高校生の作文指導はできないので、ブンブンどりむの主な対象年齢は小学校低中学年になっています。
しかし、作文教育が重要になるのは、考える作文の勉強が始まる小学5年生以降です。
小学3、4年生までの作文は、作文の勉強全体からすれば、助走期間にすぎません。
斉藤さんの読解指導の方法は、問題文の後付け解説です。
これは、誰もが考えつく読解の指導法ですが、これで読解力がつく子はいません。
大事なことは、問題の解き方を理詰めに解説することですが、「こども読解力」には、問題の解き方の例はひとつも載っていません。
だから、斉藤さんの読解指導で読解力はつかないのです。
齋藤孝さんの作文指導や読解指導についてのまとまった話は、こちらの記事に載せています
▼ブンブンどりむと齋藤孝さんに関する記事
https://www.mori7.com/beb_category.php?id=152
以上、もっともらしい広告を見て、勘違いした作文の勉強を始める人がいないように、あえてブンブンどりむと言葉の森との比較を書かせていただきました。