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記事 5006番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2024/11/21
未来の子育て、未来の学力(その4)――人から与えられた目標で生きるのではなく、自分の目標で生きる子供を育てるための教育 as/5006.html
森川林 2024/03/08 05:26 

ノゲシ



 子育てで、親がいちばん迷うのは、小学3、4、5、6年生でどういう選択をするかということです。
 それは、親の選択によって、子供の今後の生活が左右されるからです。

 中学生になれば、勉強の方向はほとんど決まってきます。
 高校受験をする子は、受験を目指せばいいし、受験をしない子は、そのまましっかり中学校生活を送っていけばいいからです。

 高校生になると、選択肢は多様になりますが、基本の方向は変わりません。
 自分の個性と実力を見て、進学先を決めればいいからです。

 しかし、小学3~6年生は、親の考え次第でどういう選択も可能です。
 中学受験をすると決めれば、それはそれで一貫した教育方針になります。

 ところが、今の中学受験のための勉強は、かなり不自然なところがあります。
 小学5、6年生は、自分の意思があるように見えて、本当はまだ勉強や人生に対する自覚のない時期ですから、環境に左右される度合いが強いのです。

 中学受験のマイナス面を言えば、勉強のしすぎによって、たとえ合格してもしなくても、その後、勉強に飽きてしまうことがあります。
 また、勉強を自分自身の向上のために行うというよりも、点数のために行うという発想になりがちなところがあります。

 この発想は、大学生になっても、社会人になっても続くので、就職も、よりよい偏差値のところを目指すということになることがあります。

 よりよい偏差値のところへという圧力は、本人よりも親の方が強いことがあります。
 「せっかくいい大学を卒業したのだから、その経歴がもったいなくないような選択をしなければ」という発想になるのです。

 大学入学までがゴールで、その先を考えていなかったので、自然にそういう世間的に通用する選択になってしまうのです。

 これからの世の中は、大企業で安定しているから一生困らないというようなことはなくなります。
 その一方で、何をしても生活するには困らないだけの社会基盤ができるようになります。
 だから、若者には、冒険できる余地が多い社会になっています。

 子育ての方向は、子供が社会人になるときに、自分らしい冒険を目指すような子に育てることです。
 もちろん、結果として、別に冒険はしなくてもいいのです。
 既成の枠組みに入ることだけが選択肢ではないという生き方を目指していけばいいのです。

 そのために、小学生からどういう教育をしていくかということです。

 ここからは、言葉の森の紹介になりますが、私は、小学生からの教育で大事なものは、読書、作文、親子の対話、そして創造発表の学習になると思っています。

 創造発表の学習の目標は、「個性を学問に、学問を創造に」です。

 学校や塾で、先生から与えられた目標を目指して努力するだけでなく、自分の好きなことを目標にして努力するような生き方をするのです。

 与えられた目標というのは、勉強に限りません。
 スポーツでも、音楽でも、ほかの人から与えられた目標があり、そこに競争や勝敗が加わると、人間は自分が本当に何をしたいのかということよりも、その目標を達成することが自分自身の目標になります。

 もちろん、そういう面はあっていいのです。
 しかし、それとは別に、自分の本当にしたいことを目標とするような生き方もしていく必要があります。

 ところが、自分の本当にしたいことは、多くの場合、誰からも認められません。
 特に、お父さんやお母さんや学校の先生は、「そんなことして、どうなる」という見方をしがちです。

 そういう周囲の無視や無理解に負けずに、自分のしたいことを追求するには、同じような個性のある仲間との出会いと交流が必要です。

 その個性ある子供たちの出会いと交流の場が、創造発表クラスの学習です。

 創造発表クラスの学習は、小学1、2年生では、まだ無理があります。
 小学1、2年生は、自分のことしか関心がないので、他の生徒の発表に共感したり感動したりする交流がまだないからです。

 創造発表クラスの学習が交流に結びつくのは、もっと学年が上になってからです。
 しかし、学年が上がり、それぞれの子供たちの個性が際立ってくると、逆に話が合わなくなる面も出てきます。

 だから、大勢の子供たちが、自分の興味関心に応じて、いくつもある多様な創造発表クラスを選択できるようできればいいのです。

 いずれ、この創造発表的な学習が、教育の主要な教科になる時代がきます。
 その端緒はすでに、高校の探究学習や、大学入試の総合選抜などに表れています。

 小学5、6年生は、受験勉強に取り組まない場合、その生徒の持っている意欲や能力を学校の勉強だけでは十分に発揮できません。

 その余っている力を、スポーツや音楽やゲームという与えられた枠組みに費やすのではなく、創造発表的な学習に生かすようにすることが、これからの子育ての重要な柱になるのです。

この記事に関するコメント
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森川林 20240308  
 「今は、勉強が大事なのだから、自分のしたいことは大学に入ってからゆっくり考えればいい」と言う人もいます。
 しかし、人間の生き方は、子供時代から作られています。
 「あとでゆっくり考えればいい」と生き方は、いくつになっても続きます。
 とりあえず、今ここで考えていくことが大事なのです。

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未来の子育て、未来の学力(その3)――小学3、4年生は多読と遊びの時期。小学5、6年生は中学受験という選択肢もあるが、その先のどういう大学に入り、どういう社会生活を送るかまで考えておく必要がある as/5005.html
森川林 2024/03/07 06:31 




 小学3、4年生は、多読と遊びの時期です。
 遊びは、多くの子にとって、冒険的な遊びも意味します。

 スポーツに参加するようなことも含めて、新しい冒険を通して、子供たちは生きるたくましさを身につけていくのです。

 この遊びによって、困難や競争に負けない力が育ちます。

 人間社会には、さまざまな摩擦があります。
 その摩擦をはねのける力がたくましさです。

 言葉はよくないかもしれませんが、「やられたらやり返す」というような生きる姿勢は、人生にはある程度必要です。
 その姿勢は、不正なことに参加しないとか、弱い者を助けるとかいうたくましさにつながります。


 そのためには、子供に自由裁量の余地を持たせることが必要です。
 小学3、4年生の時期の子供は、秘密基地を作るような遊びを好みます。
 それは、それまでの親の指示から離れて、自立して生きてみたいという意識の表れです。

 小学2年生まで、親や先生の言うことを素直に聞いていた子が、小学4年生のころから、自分の意見を主張するようになります。

 自立心を持つようになった子と新しい親子の関係を築くためには、小学1、2年生のころから、できるだけ子供の自主性を尊重する習慣をつけておくことが必要です。
 小学1、2年生のころは、どうしても親がコントロールする面が多くなりますが、できるだけコントロールしないことを心がけていく必要があります。


 小学5、6年生になると、子供に向上心が出てきます。
 友達が、中学受験をすると聞くと、自分も負けずに受験に挑戦したくなります。
 苦しくてもがんばるということに生きがいを感じられる年齢になるのです。


 ここで難しいのは、今の中学受験にどう対応するかということです。

 中高一貫校に入ることには、大学入試に有利になるという利点があります。
 それは、勉強の先取りができるので、公立高校の生徒より1年早く受験勉強に取り組むことができるからです。

 もちろん、今は、書籍でもネットでも、学習の材料は容易に手に入りますから、公立高校であっても本人が自覚して1年間先取りの勉強をすることはできます。
 しかし、若い時期は周囲の雰囲気に左右されるので、実際にはなかなかひとりだけ勉強の先取りをすることはできません。
 だから、中高一貫校、受験勉強の先取りという点で有利なのです。


 ところが、最近の大学入試は、総合選抜が主流になりつつあります。
 これまでのような知識の成績だけで1点差を競うような入試ではなく、個性と創造性を問うような入試が増えています。
 すると、高校時代にどういうことをしたかということが大事になるので、勉強の1年間先取りは、今後あまり意味を持たないようになります。


 一方、公立中学は、地域によっては荒れている学校もあります。
 小6から中2のころは、年齢的にいじめやさぼりなどが多くなる時期です。
 中学3年生になれば、ほとんどの子はもっと人間的に成長しますが、それまではいろいろな問題が残るのです。

 そのため、学校では、管理を厳しくすることによって生徒を従わせようとする面が出てきます。
 こういう息苦しさが、今の不登校の増加を生み出している面があります。


 こういう問題に対しては、次のように考えていけばいいと思います。
 周囲がどういう環境であっても、勉強は自分でするものだから、勉強面は、家庭学習をしっかりやっていけばいいということです。

 また逆に、公立中学は、今の社会の縮図とも言えますから、そういう環境で生活することは、将来自分が仕事をして人の上に立つときにプラスになるということです。

 不登校になっても、毎日の生活習慣をきちんとして起床時間を守るようにすれば、かえって学校に通うよりも充実した生活が送れます。
 友達関係は、ネットでも、地域でも、自分の趣味に応じて自由に探すことができます。
 だから、不登校という選択肢も、今はおおらかに考えていけばいいのです。


 さて、中学受験をする小学5、6年生と、受験を選択しない小学5、6年生では、日々の生活が大きく変わります。

 受験勉強で成績を上げるためには、時間をかける必要があります。
 受験勉強は、結局知識を詰め込む勉強ですから、時間と成績は比例しています。
 しかし、そのために、読書の時間が減ったり、自由な趣味の時間が減ったりするのは、子供の成長を歪めます。

 1年間だけの集中した受験勉強であれば、むしろ集中力が育ち、弊害はありません。
 しかし、今は小学3、4年生からの先取りの受験勉強で、しかも集団一斉指導で一律の宿題やテストに追われる勉強ですから、子供の生活に偏りが出てきます。


 また、夜遅くまで通塾する受験勉強で、家庭での親子の団欒の時間がなくなるという面もあります。
 小学5、6年生の時期は、親子が最もよく対話のできる時期です。
 この時期の作文の課題で、子供が両親に似た例を取材する機会があることは、子供の成長に大きなプラスになります。
 中学生になると、親子の対話はだんだん少なくなりますから、小学5、6年生の時期こそ、親子が自由に話のできる時間を確保しておく必要があるのです。


 ところが、中学受験をしない小学5、6年生は、どういう生活になるかというと、学校で仲のいい友達の多くが受験の塾に通っているとなると、放課後に遊ぶ相手がいなくなります。
 すると、ゲームをしたり、YouTubeを見たりして時間を潰すしかなくなるような生活になることがあるのです。

 だから、家庭によっては、子供の生活時間を規律あるものにするために塾に通わせるというところもあります。
 確かに、子供が家庭で暇を持て余しているよりも、塾で勉強している方がいいとは思いますが、その時間は中途半端な時間とも言えます。


 では、どうしたらよいかというと、本人の趣味の分野を極めるような生活に切り替えていくのです。
 その趣味の分野は、スポーツや音楽のようなものよりも、学問的なものがいいと思います。

 スポーツや音楽の分野は、いくつかのメジャーな枠組みがあるので、その分野で何かを創造するよりも、枠組みの中で競争したり上を目指したりする方向に向かいます。
 スポーツや音楽の競争の過程で、さまざまな努力や出会いや交流があることは確かですが、その分野で将来プロになる子はいません。

 学問の分野は、多様性に富んでいるので、メジャーな枠組みというものはありません。あるとしたら、受験勉強ぐらいです。

 さかなクンの趣味は、魚でしたが、魚を研究してどうなるかという見通しがなかったから自由に魚について調べることができました。
 だから、その分野で日本一になったのです。

 小学5、6年生は、向上心がわく時期なので、その向上心を生かして、子供の個性を生かす学問的な分野を探していくことができます。

 男の子の場合は、電車オタクという子がよくいます。
 そういう子は、不思議なことに、勉強もよくできるし、意欲もあるという子が多いのです。
 そのほかに、料理やファッションに興味があったり、生き物を飼うことが好きだったり、昆虫の採集や、化石や鉱物の収集に興味があったり、プログラミングが好きだったりする子もいます。
 そういう熱中する趣味を持つ子は、みんな勉強がよくでき、いい大学に進んでいます。
 大事なことは、熱中するものがあることで、それが大学入試の場合も勉強に熱中する力として生きてくるのです。


 子供の興味は、さまざまに変化しますが、小学5、6年生から、自分の好きな分野に取り組む生活をしていると、それは、中学生になっても、高校生になっても継続させることができます。

 その趣味の学問の延長で、大学入試の総合選抜に進むということが、これからの子供の教育設計として考えられます。

 趣味の学問の分野が突出していれば、学校の成績はオール4でよく、そのかわり東大でも、京大でも、東北大でも、早稲田でも、慶應でも、どこでも自由に受けられるようになります。
 東北大は、2024年度から、総合選抜入試100%になりました。


 しかし、大事なのは、その先です。
 これまでは、子供たちの進路は、大学入試がゴールでした。
 それは、大学入試に合格するための勉強してしてこなかったからです。

 大学に入ったあとは、することがないから、大学生活を楽しむことしかありません。
 そして、卒業するときは、大学入試と同じように、企業の偏差値を見て、偏差値の高いところに就職するようになります。

 偏差値の高い企業は、給与もよく、厚生施設も充実して、それなりにやりがいもあります。
 しかし、本当のやりがいは、自分が好きだったことを社会生活の中で実現することです。


 これからは、人生100年時代です。ほんとか(笑)。
 大学卒業後、又は大学院卒業後の20代で方向が見えてしまう人生ではなく、その後の自分の努力と工夫次第でどうにでもなる人生を歩むことが、これからの子供たちの未来になってきます。

 そういう長い展望を意識しながら、今の小学生や中学生の勉強を考えていく必要があるのです。

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森川林 20240307  
 かつて、三井三池炭鉱は、日本のエネルギー産業の花形で、安定した職業として魅力的な就職先でした。
 そのころ、まだ成長前の自動車会社を就職先に選ぶのは、むしろ成績が二番手以下の学生たちでした。
 福沢諭吉の兄は優秀で、諭吉に、四書五経をしっかり読むことを勧めました。
 しかし、諭吉は、西洋の学問に興味を持ち、脱藩して西洋の医学や経済学や哲学を学ぶことを始めました。
 大人の考える未来の予測は、変化の激しい時期には大きくはずれます。
 だから、どういう変化が来てもいいように、子供たちの意欲を育てておく必要があるのです。

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