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コンクールに入選する作文、読書感想文の書き方 as/512.html
森川林 2009/06/05 11:03 


 なぜコンクールの入選を目指すかというと、第一に、入選によって作文に自信がつくからです。
 特に小学校の3、4年生のころはコンクールに入選したり褒められたりすると、それが一生のいい思い出につながります。

 これに対して、小学校2年生以下では、コンクールなどに入選するということの価値がまだよくわかりません。また、小学校5年生以上では、恥ずかしさの方が先に立ち無邪気に喜べないようになってきます。しかしもちろん大きな賞であれば、恥ずかしさよりも喜びの方が大きくなります。

 入選を目指す意味の第二は、力のある子は腕試しをする場を欲しているからです。作文や感想文を書く機会は、子供たちの日常ではあまり多くありません。文章を書くことが好きな子は、自分の書いた文章を発表する場を求めています。大人であれば、発表の場としてブログのようなものがありますが、子供にとってはいろいろなコンクールに応募することが発表の場になります。


 作文でも感想文でも、大事なのものは、その文章の材料となる部分です。言葉の森では、この材料のことを題材や実例という言葉で呼んでいます。テーマに合ったぴったりの材料があれば、作文や感想文の八割はうまくいったと思っていいでしょう。では、その実例にどのようなものがよいかというと、それは、個性のある実例、挑戦の感じられる実例、感動のある実例、共感のある実例、などです。(これは、また別の機会に述べます)

 ぴったりの実例があれば、次は、構成です。全体の流れを明確に指示しておくと、子供たちは楽に作文を書き出します。物事を構成的に考える力は、小学校5年生以降に徐々に育っていくものですから。小学校4年生のころまでは、親や先生がある程度の方向づけをしてあげる必要があります。方向づけをする指導の仕方で、どんな苦手な子でも言葉の森に来ると作文を書くことができるのです。

 題材と構成のあとは、表現と主題です。しかし、入選する作文や感想文で、表現力はあまり重要ではありません。大事なことは、読みやすく書かれているか、無駄な重複がないかという程度です。そして更にその上に、切れ味のいい表現が一言入っていれば、作文の全体の印象は大きく向上します。

 切れ味のいい表現とは、個性的なたとえや自分で作った名言のことです。名言とは、「○○はAでなくBである」というような形で書ける発見や創造のある見方や考え方です。この切れ味のいい表現は、作文感想文の全体の主題につながります。

 このあたりの説明は、やや複雑に感じられるかもしれませんが、それは、この切れ味のいい表現というものが文章のセンスのようなものと幾分関係しているからです。


 さて、コンクールの入選を目指すことは意味あることですが、入選するよりも大事なことは決して子供に無理をさせないということです。例えば、親や先生が子供にいい表現を教えてそれを書かせるような形で作文を書いた場合、その作文が評価されても子供は喜びません。

 したがって、言葉の森では、コンクールに出す作文の添削を頼まれることがありますが、表現には一切手を加えません。

 では、大人の役割は何かというと、それは四つあります。以下は、主に小学生ぐらいの子に対するアドバイスですが、基本的な考え方は、中学生や高校生にもあてはまります。

 第一は、こういう流れで書いたらいいという構成の方向をアドバイスしてあげることです。全体の構成は、子供の力ではなかなかできないからです。構成がはっきりしていれば、子供は自分の力でその中身を書いていくことができます。

 第二は、実例に対して協力してあげるということです。テーマに合わせた経験ができるように協力する、又は、その子の面白い経験を思い出させるように協力するということです。

 第三は、不要なところを削るということです。作文の中には、書かなくてもいい無駄なところや、同じようなことが書かれている重複したところが必ずあります。それは、大人でも同じですが、本人にはなかなかわかりません。第三者が作文を見て、要らないと思われるところを削ってあげると密度の濃い文章になります。これは、大人の表現を押しつけることではないので、子供を傷つけることにはなりません。

 第四に、いちばん大事なことは、もう少しいい表現をしてほしいというようなところに対するアドバイスです。これは、大人が、こういう書き方をしたらいいと答えを教えるのでありません。

 言葉の森では、よく感想文コンクールに提出する作品のアドバイスを頼まれることがありますが、そのとき、もう一言いい表現がほしいという部分には、「ここはもう一工夫」と書いておきます。すると、必ず本人が自分の力でもっといい書き方をしていきます。もし本人がそれ以上いい書き方にできないとすれば、それはそれでいいという立場です。入選することも大事ですが、それ以上に大事なことは、子供が自分の力で入選することだからです。



 以上、入選するような作文や感想文の書き方をまとめて言うと、書く前に全体の構成を指示してあげる、つまらない実例になっているところはもっと面白い実例を書くように注文する、無駄なところはカットしてあげる、切れ味のよさが求められところについては「もう一工夫」と言ってあげる、ということになります。


 夏休みにはいろいろな作文コンクールがあります。言葉の森のホームページにある作文・感想文の書き方を参考に、皆さんもぜひコンクールに挑戦してください。


この記事に関するコメント
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あああ 20120816  
ぼくもやってみたいです

森川林 20120817  
やってみてねー。ヽ(`▽´)/

陽炎 20150819  
大きな賞を取りたいですね!

ゆん 20170810  
内閣総理大臣賞取った事ありますっ!

森川林 20170810  
ゆんさん、すごいね!

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中学受験の学力の土台を作る家庭学習と作文 as/511.html
森川林 2009/06/04 11:23 


 あるお母さんから相談がありました(生徒の保護者ではありません)。

 子供に何かを言っても、その子が話を聞いていないようだというのです。学校でも、先生がみんなに言ったことを、その子一人だけ聞いていないようだと言います。しかし、こういうことはだれでも多かれ少なかれ経験のあることです。それほど大した問題ではないと思います。

 しかし、見方を変えてみると、話がすぐに理解できないという問題の根は実は深いところにあるのではないかと思いました。


 教室で、生徒に一斉に同じような説明することがあります。みんな、先生の目を見て熱心に聞いています。しかし、話が終わるとしばらくして、「それで、何をやるんですか」と聞く子がたまにいます。その子にだけ再度同じ説明して、初めてわかるというような分かり方なのです。

 一度だけではわからない、何度か説明するとわかるというのは、最初に聞いた言葉が頭に入っていないということです。その理由は、注意力が足りないからというようなことではなく、長い文が頭に入りにくいからなのです。


 子供たちに課題の長文の説明をしているとき、中学生や高校生に対する説明は、かなり難しくなることがあります。すると先生が、その子のすぐ隣で説明をしているのに、それを聞きながらこっくりと居眠りをしてしまう子がいます。先生の説明が難しく長いので、聞いているうちに眠くなってしまうのです。しかし、そういうときでも、理解力のある子はずっと最後まで興味深く聞いています。

 学校でも30人ないし40人の生徒に先生が同じように説明して、何人かは先生の話が一度では理解できないという子がいるはずです。だれでも小学生のころは、先生の話をぼんやりとしか聞いていないことがよくありますから、先生の話を聞き忘れたということはそれほど大きな問題ではありません。しかし、これがいつも続くとなると、例えば中学受験のテストで設問の意味が読み取れないというような問題につながります。さらに、社会人になれば、社会や周囲の情勢の変化が読み取れないということにもつながってきます。


 理解力の根本にあるのは、長い複雑な文を読む力です。現在の社会では、子供たちは短い言葉の多い環境に取り囲まれています。短い言葉とは例えば、「面白い」「つまらない」「ドガーン」「バギューン」「ウグググ」などという言葉です。この短い言葉にビジュアルなアニメが組み合わされた環境に長くいると、脳が長い文を読まないことに慣れてしまうのです。


 では、長い文を読む力はどこからつくのかというと、それはまず親子の対話の中からだと思います。子供にとって、両親は自分の生きる命綱のようなものです。子供は、親のしていることを真剣に真似しながら育ちます。特に小学校2、3年生は、自分の生き方のモデルを作る時期ですから、身近な両親や年上の人に自分のモデルを見出そうとします。この時期に親が子供との対話で長い文を話していれば、子供も自然にそういう文を理解する力をつけていきます。逆に、「ドガーン」「バギューン」などというテレビ番組をモデルにして育てば、長い文を理解する力は育ちません。この差は、実はかなり大きいのです。

 一般に、学力の差がつくのは、小学5年生あたりからと思われていますが、実は小学2年生ごろから既に、長い文を理解できる子と理解できない子の差が生まれています。この差は生活の中でついた差なので、その後ますます大きく開いていきます。学校や塾には、家庭の生活の中でついた差を埋める力はありません。

 そこで、長い文を理解する力をつけるために、家庭での対話と読書が大切になってきます。対話といっても、子供と深い関わりを持ちにくい多忙な父親の場合は、「勉強しているか」「うん」「ちゃんとやれよ」「わかった」というようなものになりがちです。子供の日常生活をよく知らないので、対話を深めるきっかけが見つからないのです。

 ここで、言葉の森の作文課題や長文を生かすことができます。父親があらかじめ長文を読んでおき、日曜日などの時間のあるときに、その長文に追加する話をしたり、作文の課題について父親の子供のころの似た例を話したりできるのです。子供を伸ばす家庭学習とは、問題集をやるような勉強ではなく、親と子が楽しく対話をするような生活です。

 そのためには、家庭で普段から10分間の長文暗唱の自習をしておき、日曜日に父親の前で300字の長文暗唱をしてみせるようにするといいでしょう。このような形で話をしていけば、対話は自然に知的になり、長い文で話し合う環境ができます。親子の会話がはずむ家庭であれば、テレビなどは必要ありません。子供が友達との会話をするときにテレビの話題は多少は必要になることもあるでしょうが、それ以外ほとんどの番組は、見なければ見ないで済みます。それよりも、家族の対話の方がずっと魅力あるものになるからです。

 作文の勉強は、書く力をつける意味ももちろんありますが、それ以上に、家庭学習の要にできるという利点があります。


 さて、親が子に話すときに大事なことは、その対話の中で、子供を、笑わない、からかわない、けなさない、ということです。親が自分の自慢をするのはいいのですが、その自慢の延長で子供を馬鹿にしないということです。「お父さんのときは、こんなことをしたんだよ。それに比べて今の子供は……」というような話をしそうになったら、「今は今で別のいいところがあるけど……」と方向転換をするといいでしょう。また逆に、子供を褒めるときにも注意することがあります。それは、ほかの子をけなす形で褒めないということです。


 学校や塾で行う勉強は、知識中心の表面的な勉強です。本当の知性の土台は、家庭の中で親子の対話のある生活を通して作られていくのです。


(この文章は、構成図をもとにICレコーダーに録音した原稿を音声入力ソフトでテキスト化し編集したものです)

マインドマップ風構成図

 記事のもととなった構成図です。



(急いで書いたのでうまくありません)

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