貝原益軒は、「空によみ空にかく」という暗唱の仕方を提唱しました。文字どおり指で文字を空中になぞるような書き方で書いたのだと思います。
この「空にかく」というやり方を、作文指導に生かすことができます。というのは、段落や読点や文のつながり方など、読むことは普通に読めても、正しく書くことができないという子が多いからです。これは、読書好きな子が、漢字は読めるが必ずしもその漢字が書けないということと似ています。
900字の暗唱は、長さとしてはひとまとまりの文章です。600字以上の文章になると、一つのまとまりのある内容が書かれているという印象を受けるからです。
そこで、600字から900字の文章を丸ごと暗唱し、それを暗写する学習というものを考えました。暗写というのは造語で、元の文章を見ないで書き写すという意味です。
読む力は、書く力に支えられています。読む力が土台となってその上に書く力が成長します。しかし逆に、書く力は読む力を規定しています。英語でも、自分がいったん口に出した単語は言語として耳に入ると言われています。つまり、言葉として言った経験がないと、言葉として聞けないということです。日本語の文章も、自分で書いたあとに読みが深まります。つまり、書き手の立場を了解しながら読めるようになるということです。
しかし、書く練習が大事だといっても、自分の好きな文章書くだけでは、同じレベルからなかなか抜け出せません。そこで、いい文章を書き写す、それも見ながら書く視写ではなく、暗唱したものを書く暗写という形で書くという勉強を考えています。
(この文章は、構成図をもとにICレコーダーに録音した原稿を音声入力ソフトでテキスト化し編集したものです)
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「……それ、フセンじゃなくてフーセンですけど」
読書は、再読によって、生きた知識になります。
しかし、ほとんどの人は、一度読んだらそれでおしまいという本の読み方をしています。それは、本に傍線を引いたり書き込みをしたりする習慣がないからです。これは本を汚すということに対する気持ちのブレーキがあるためです。もちろん、図書館から借りた本では、当然傍線や書き込みはできません。
そこで、言葉の森では、付箋読書という方法を考えました。付箋を貼りながら読んでいくというやり方は、傍線を引くよりもずっと手軽です。またフォトリーディングと組み合わせた付箋読書であれば、10分から20分で1冊の本を読み終えることができます。そして読み終えたあと、付箋の箇所を再読することができます。この再読できる点が付箋読書のいちばんの長所です
ところが、付箋読書には、付箋を貼って捨てるというのがもったいないという感覚がありました。そこで、はがせるスティックのりを使って自作の付箋用紙を作ってみました。A4用紙1枚で200から300の付箋ができます。これなら、使い捨てでももったいなくありません。
付箋読書は、付箋の部分を再読したあと、重要な本はさらに読書図にまとめることができます。この読書図というのはマインドマップのように本に沿ってまとめるものではありません。自分の関心に沿ってその本に書かれている内容や自分の感想を図示していきます。
本によって違いますが、1冊の本を読書図にまとめるのに30分から1時間かかります。ですから、すべての本を読書図にまとめる必要はありませんが、読書図まで書き上げた本は、1冊の本の中身が確実に自分のものになると思います。
(この文章は、構成図をもとにICレコーダーに録音した原稿を音声入力ソフトでテキスト化し編集したものです)
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素読の反復による学習効果は歴史的にすでに実証されています。
しかし、理論的な裏付けがないので、音読や暗唱は、形式的、権威主義的なものになりがちでした。例えば、四書五経、憲法前文、平家物語、寿限無、枕草子などの暗唱は文化的な暗唱であって、決して教育的な暗唱ではありません。なぜならば、その暗唱によってどういう力がつくかということが明らかになっていないからです。
暗唱については、二つの理論が考えられます。
第一は、左脳の言語処理機構に流入する言語情報の多様性が増すことです。通常の文章の読み方では、入力される言葉は、目で見える範囲の数語のつながりだけです。ところが、暗唱では、目に見えないところから言葉を持ってくるのでその言葉が持つ意味の広がりが増えるのです。暗唱で入力される言葉は、主にイメージやメロディーを処理する右脳からやってくるので、言葉の持つ多様な意味がそのまま言語処理機構に流入してきます。このため、暗唱を続けていると発想が豊かになるのです。
第二は、同じ文章を反復することによって、神経細胞に入る情報が重複する機会が増えることです。重複した情報は強化されるので、反復によって定着度が高まります。これが、反復すればだれでもできるようになるという暗唱の方法論を支えています。
また、暗唱を繰り返していると、入力される情報が重複するだけでなく、ある神経細胞に情報が入力される直前にその神経細胞が発火するという状態が生じます。このことによって、入力情報を受け取る受容センサー自体が強化されます。この結果、短い文章を何度も反復することによって、物事の理解力そのものが高まるのです。
しかし、短い文章を単に覚える目的を超えて反復し続けるという勉強は、現代の社会では子供たちが飽きて実行することができません。そこで、言葉の森では、10分間で簡単にできる300字暗唱を進めつつ、記憶術のノウハウを身につける練習も兼ねてその300字暗唱を900字暗唱につなげていくというような勉強の仕方を考えています。
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7月下旬に、サーバーの文字コードをEUC-JPからUTF-8に変更しました。
その際、HPの検索機能のところだけ、EUC-JPのまま残っていたようです。
先ほど検索してみて、検索機能が使えないことに気がつきました。
今直しました。
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中1の保護者の方から、「国語の問題の解き方を直接説明してもらえるか」というご質問をいただきました。
以下は、そのご質問に対してのお返事で、父母の広場に掲載したものです。
国語の選択問題は、その子のまちがえたところを中心になぜその答えではないかを説明すると急速に力がつきます。
学校や塾でも、そういう説明の仕方ができる先生がいると思います。全員に共通の問題を説明するならば、そういう一斉指導でもできます。
しかし、いちばんいいのは、家庭で父親か母親が実際に問題を解きながら、その消去法の考え方を説明することです。なぜかというと、実際に模擬試験などの問題を解きながら説明すると1時間ぐらいかかるからです。
その際、親が理詰めで説明できない問題は、もともと解けなくてもいい問題だと割り切っておくことが大切です。
大事なことは、子供がそういう発想で問題を解くのだと理解することですから、必ずしも全部が全部できなくてもいいのです。
この消去法の発想は、下記のページなどをごらんください。。
センター試験の解き方1/
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中1の保護者の方から、「暗唱をしないと力がつかないか」というご質問をいただきました。
以下は、そのご質問に対してのお返事で、父母の広場に掲載したものです。
暗唱をしなくても力はつきます。
しかし、どのような勉強もそうですが、学力はかけた時間に比例するところがあります。
特に、作文力と国語力は、読む量と質に関係が深いので、音読や暗唱や読書の時間をとればそれだけ学力がついていきます。
以前は、長文の音読ということでやっていましたが、音読だけではチェックが不十分になるので、今は暗唱にしています。
しかし、中学生のころになると、これまで何かを暗唱するという勉強をしていない人がほとんどなので、この新しい勉強の仕方にとまどうようです。
やりにくい勉強を無理にやるよりも、あまり抵抗なくできる勉強を中心にして実力をつけ、余裕ができてから新しい形の勉強に取り組むということでもいいと思います。
中学生でいちばん抵抗なくできる勉強は、読書又は問題集読書ですから、まず読む時間を確保するというところから始めるようにしてください。
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中1の保護者の方から、「作文を書くときの時間がかなりかかっているが」というご意見をいただきました。
以下は、そのご意見に対してのお返事で、父母の広場に掲載したものです。
作文を書く時間は、中高生以上になると、一般にかなりかかります。社会人になると、毎回3時間ぐらいになる人もかなりいます。
それだけよく考えているからだとも言えますが、やはり書くことにまだ慣れていないために時間がかかるというのがいちばんの原因です。
中高生は、1200字に1時間半ぐらいかかるのが普通です。
しかし、試験などのことを考えると、1200字60分以内を目標に書く力をつけておくといいと思います。
早く書くコツは、
1、早く書くことが大事なのだと自覚し、そう心がける(作文は、納得いくまで時間をかけてじっくり書くのがいいのだと考える人が多い)
2、1200字の作文を、長くても90分以内、できるだけ60分以内で書くことを目標にする(題名を書いてから全文を書き終わるまでの時間。メモなどの時間はいれずに)
3、消しゴムを極力使わない、パソコンの場合もできるだけ書き直さない、書いている途中で考えたり読み返したり調べたりしない(考えたり読み返したりするのは、最後の仕上げの段階で)
4、構成図で、最初に全体を考える。作文を書いている間に書くことに詰まったら、構成図に戻って書き続ける
すぐにはできないと思いますが、取り組む気持ち次第でかなり時間は違ってきます。
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