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学力と年収の調査でさらに調べてみるべきこと as/605.html
森川林 2009/08/22 09:55 


 以前、学力と年収の関係を調べた調査がありました。グラフはきれいに相関(比例)していました。しかし、これは、相関関係があるということであって、因果関係があるということでは必ずしもありません。多くの人は、親の年収(A)が原因で、子供の学力(B)が結果だと考えていますが、実はその間に、A→C、C→Bという流れがあるのです。

 このCを調べることが、今後の調査に求められることです。学力と年収の間に相関関係があるということがわかったところまでは、まだ物事の半面で、なぜそういう相関関係が生まれているのかを調べなければなりません。では、そのためには、どのような調査をしたらよいのでしょうか。

 一つは、(1)年収は低いが学力が高いという子の調査です。もう一つは、(2)年収は高いが学力が低いという子の調査です。(1)がわかれば、(2)は補助的な調査になると思います。


 私が考えている仮説は二つあります。

 一つは、親から子への会話の量と質と楽しさが学力に関係しているのではないかということです。

 もう一つは、それに加えて、読書の習慣が学力に関係しているのではないかということです。


 年収と学力の相関関係が問題になってきたのは最近です。昔は、貧しい家庭から多くの優秀な子が生まれていました。逆に、裕福な家庭の子は、「売家と唐様で書く三代目」というような言われ方をされるようなことも多かったのです。

 年収の少ない家庭は、昔も今も変わりなく存在します。問題は、その質が変わっていることです。

 昔と今の社会環境の違いを考えると、次のことがわかります。

 まず、親が貧しければ、子供の教育にお金をあまり使うことができません。これは、昔も今も変わりません。だから、これが学力格差の原因ではありません。

 次に、親が貧しければ、余裕がなくなり、夕方子供とゆっくり接する時間がとれません。しかし、これは、一部は合っていますが、一部はそうではありません。豊かな家庭でも、親が多忙ということもあるからです。だから、これは学力格差の要因の一部だと思います。

 第三は、勉強以外の生活時間です。これが、昔と今とでは大きく違っているのです。小学生のころは、生活時間の大半が遊びです。勉強時間は全体から見れば限られています。だから、小学生のころは、勉強によって頭脳が成長するのではなく、勉強も遊びも含めた生活時間全体の中で、頭脳も身体も成長していきます。


 昔の貧しい子供は、勉強以外の時間を、友達と遊ぶか親の仕事を手伝うかという形で過ごしていました。そして、友達や親から離れてひとりでいるときは、することがないので本を読んでいました。しかも、本の数自体が少ないので、同じ本を何度も繰り返し読むような読み方をしていました。だから、貧しい家庭でも、子供は自然に成長していったのです。

 しかし、今は、そうではありません。子供が友達や親から離れてひとりでいるときは、テレビもビデオもゲームもインターネットもマンガも携帯電話も豊富にあります。これらのメディアに比べると読書は全く魅力がありません。

 勉強以外の時間の過ごし方が、今と昔では大きく違っています。これが、学力格差の原因になっていると思います。


 では、どうしたらよいのでしょうか。

 第一は、親子の対話の時間を増やすことです。親が子供に話しかけることは、子供にとっては読書と同じ効果があります。

 第二は、テレビやビデオやゲームやインターネットやマンガや携帯電話を一定の制限のもとで行うようにコントロールすることです。時間の制限でも回数の制限でも曜日の制限でもいいと思います。

 しかし、親は、自分が子供のころに経験したことには対処できますが、自分が子供のころに経験しなかったことにはなかなか対処できません。ほとんどの家庭は、コントロールということをせずに、子供が小さいときは全面禁止に頼ろうとします。全面禁止にすると、親も子供も試行錯誤の中で軌道修正しながら成長するということがないので、やがて子供が大きくなると自由放任になってしまいます。全面禁止と自由放任は、同じことの両面なのです。教育費に余裕のある家庭は、家庭内でコントロールできない分を、塾や習い事などの外部の機関に頼ることができます。しかし、それはもちろん真の対応ではありません。

 第三は、家庭での読書の時間を確保することです。今は図書館などを利用すればたくさんの本を読むことができますが、必ずしもたくさん読むのがいいというのではありません。むしろ、同じ本を何度も繰り返し読む方が、子供の頭脳の成長にとってはプラスになります。その点では、本の数が少ない家庭の方が学力が上がる可能性が高いのです。

 第四は、新しい方法ですが、暗唱の練習をすることです。言葉の森のHPに書いてあるやり方で900字の暗唱を練習すると、対話や読書と同じ効果があります。また、暗唱には、それ以上の効果もあります。


 以上の勉強法は、もちろん年収の多い家庭にもあてはまります。要するに、工夫の仕方さえわかれば、学力と年収などは何も関係なくなるのです。


(この文章は、構成図をもとにICレコーダーに録音した原稿を音声入力ソフトでテキスト化し編集したものです)

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教育論文化論(255) 

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小6で計算は得意だが、文章題ができないという相談 as/604.html
森川林 2009/08/21 09:19 


 以前、言葉の森を体験学習だけをした小6の生徒のお母さん方から質問がありました。体験学習のときは、小6の子が、課題が難しくてよくわからないと不満を言ったので、そのままで終わってしまったそうです。

 作文を書いているときにわからないことが出てきたら、すぐに教室にお電話をくだされば、追加の説明をできたと思います。



 お母さんは、まだ言葉の森の勉強をさせたいと思っているそうです。というのは、その小6の子が、算数の計算は中2のレベルまで進んでいるのですが、小5の文章題で解けないものがあるのだそうです。一度やると、答えは覚えてしまうのに、解き方がわからないというのです。

 しかし、これは国語力の不足という程の大げさな話ではありません。そういう面ももちろんありますが、それよりも単に算数の考える問題ができていないというだけです。

 中学生の勉強でいちばん差がつくのは数学です。そして、高校入試で差がつくのは、図形と文章題です。計算問題は、普通の計算力があれば十分です。しかし、文章題が解けなければ、これから数学は苦手教科になってしまいます。

 そこで、この小6の子の今後の勉強法をアドバイスしました。


 まず、教科書よりも少し難しいレベルの市販の問題集を1冊購入し、できなかった問題だけを反復して解くようにします。教科書の問題は易しすぎるので勉強になりません。

 そして、その問題集のできなかった問題について、子供が自分で解法読んで理解します。解法を読んでも理解できなかったところだけ、親が一緒に解法を見て考えてあげます。

 親が子供の勉強を見てあげるときに大事なことは、同じことを何度聞かれても決して怒らずに気長に同じように説明するということです。できなかった問題を一度で理解する子は、まずいません。二度や三度ではなく、四度も五度も同じことを説明して初めてできるようになるのが普通です。

 この、できなかったところの反復が数学の勉強の要ですが、この勉強は子供にとっては苦痛の多い勉強なので、なかなかひとりでは続きられません。そして塾でも、このような反復の勉強をするよりも、解ける問題と解けない問題を取り混ぜて次々と解いていく方が教えやすいので、子供ができなかった問題だけ反復するという勉強はなかなかしないのです。したがって、これは家庭でやっていく勉強になります。

 英語の勉強については、教科書の暗唱です。1ページを20回から30回音読すると暗唱できるようになります。これも、家庭でなければなかなかできない勉強です。

 国語については、高校入試の問題文を繰り返し読んでいくことです。これも、家庭でやる方が能率よくできる勉強です。更に余裕があれば言葉の森で作文の勉強をしていくといいと思います。

 つまり、中学生の勉強は、塾に行ってももちろんいいのですが、家庭で取り組む方がずっと密度濃く能率のよい勉強ができるのです。


 この小6の子の下に小2の子がいるそうです。この子も今、算数の計算の勉強をしているそうです。

 しかし、小学生で算数の先取りは不要です。その学年の算数が人並みにできていればそれで十分です。

 その代わり、国語力だけは学年に関係なくつけておく必要があります。国語力さえついていれば、数学や英語は、中学生や高校生になってやる気が出たときにいつでも上げることができるからです。


 なぜこういうことが自信を持って言えるかというと、実際にそういう例をいくつも見ているからです。

 小学校低学年から、算数の計算問題を学年より先取りしてやっている子供たちがいます。漢字の書き取りも学年より先にやっています。小学校高学年になると、英語の勉強も先取りします。

 その一方、小学生のころは、本をよく読むだけで、算数は学校でだけ、漢字の書き取りも学校でだけ、英語はもちろんやらずに中学生になってから初めて教科書で勉強するという子供たちがいます。

 その両者の子供たちを見ていると、小学生のころは勉強を先取りしている子供たちの方がよくできるように見えます。また、中学1年生の最初のころまでは英語を先取りしていた子の方が英語の成績が上です。しかし、中学2年生になる前に、英語の先取りの差はなくなってしまいます。そして、高校生になると、勉強を先取りしていた子供たちよりも、読書が好きだった子供たちの方が、英語も数学も国語もぐんぐん成績が上がっていくのです。

 小学生のころの勉強が無駄だというのではありません。小学生のときに勉強をすれば、そのときには確かに成果が上がります。しかし、その学力がそのまま中学、高校と自動的に続くわけではありません。

 小学生のときに勉強の先取りしていた子供たちで、引き続き中学生や高校生になってもよくできる子がいます。しかし、それは、先取りしたからではなく、中学生や高校生になったときに努力したからです。

 大事なのは先取りすることではなく、それぞれの学年でその学年にふさわしい勉強をすることです。そして、そのときに、いちばんの土台になるのが、対話と読書によってつけた国語力なのです。


(この文章は、構成図をもとにICレコーダーに録音した原稿を音声入力ソフトでテキスト化し編集したものです)

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