構成図の役割は、考えることです。書こうとするテーマに関する材料並べると、自分が書こうと思っている内容の全体構造が見えてきます。
それに対し、書きながら考える従来のやり方では、すでに全体像が分かっているものなら書けますが、そうでないものに関しては、暗闇を足元の近くだけを照らすライトを頼りに走るようなものです。その結果、途中まで書いて方向が違っていることに気づき、これまでのものを消して書き直すという結果になることもよくあります。
構成図があると、ゴールまでの道筋が見えるので安心して走ることができます。
構成図のこのような効用を生かすためには、作文を書く前に書こうと思っていることを網羅することが大事です。
子供によっては、書くことが分かっているから構成図なしですぐに書き始めたいという場合もあります。しかし、その結果、途中で書くことがなくなり書き続けられなくなることもよくあります。最初から構成図を書いて始めた方が、結局は長く速く書けたということも多いのです。
構成図があると、書こうと思っていることの作文化がすぐに始められます。
しかし音声入力の場合は、構成図と音声入力の間にもう一つの過程が必要になります。
これは、構成図に接続詞や助動詞を追加することです。例えば、構成図で「構成図があれば作文化が簡単→音声入力にはもう一つの過程が必要」と書いたとしたら、そこを「構成図があれば作文化が簡単(になります)→(しかし)音声入力にはもう一つの過程が必要(です)」などと編集するということです。編集する過程で順序を変えたり、省略したりするところも出てきます。
この方法によって、音声化が途中で止まることなく滑らかにできるようになります。
800-1200字の作文を書く場合にかかる時間は、構成図が5-10分、構成図の編集も5-10分、音声入力も5-10分というところです。
※構成図は、現在、通信教室の中学生以上、通学教室の小3以上の生徒を対象に行っています。
構成図は、10月から通信教室でも小3以上の生徒を対象に行う予定です。
※音声入力は、現在、通学教室の中学生以上の生徒を対象に行っています。
(この文章は、構成図をもとにICレコーダーに録音した原稿を音声入力ソフトでテキスト化し編集したものです)
50字の暗唱は、すぐにできます。100字の暗唱は、十数回でできます。早い人は数回できるでしょう。時間としては大体5分から10分です。
300字になると、暗唱は急に難しくなります。しかし、それでも、2、30回で覚えられます。
ところが900字になると、暗唱はさらに難しくなってきます。これも、本当は回数を反復して暗唱できるようにしたほうがいいのですが、あまり壁が高いと挫折してしまう人も多くなります。
音読や暗唱の大切さは、シュリーマン、本多静六、湯川秀樹などの例を挙げて、多くの人によって紹介されています。しかし、ほとんどの人が実践できないのは、長い文章になると急に難しくなってくるためです。
そこで、長文の暗唱に、記憶術を併用して覚える方法を提案することにしました。
900字の暗唱でいちばん難しいのは、文の出だしです。先生が生徒の暗唱チェックをするときも、出だしの一、二語を言えば、すぐに続きが出てくる子が多くいます。そこで出だしの一語を記憶術で覚えるようにしてみます。
まず
第一に、身近なもの、例えば自分の身体などを使って順番を決めます。そのほかに、家の中の部屋、家から学校までの道筋なども使えます。
1、頭のてっぺん
2、おでこ
3、左目
4、右目
5、鼻
6、左耳
7、右耳
8、口
9、のど
10、左肩
11、左ひじ
12、左手
13、右肩
14、右ひじ
15、右手
16、左胸
17、右胸
18、おへそ
19、左のおしり
20、左ひざ
21、左足
22、右のおしり
23、右ひざ
24、右足
などと順番をつけていきます。
900字の暗唱であれば右手ぐらいまでに終わるものがほとんどです。
第二に、出だしの言葉を、最初に思いついた連想でイメージ化します。あれこれ考えずに最初の思いつきを生かすことが大事です。
第三に、順番をつけた身体の部分に、そのイメージをできるだけオーバーに結びつけます。長い文のときは出だしの言葉のイメージと次のキーワードのイメージを結びつけてもいいでしょう。
なお、900字の暗唱が終わり、新しい900字の長文を覚えるときは、古いイメージは外しておきます。その方が混乱しません。
実例を元に説明してみましょう。
次の文章を覚えるとします。長くなるので最初の300字だけにしますが、同じ要領で900字まで覚えられます。
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現代文明が、石油、石炭、天然ガスなどの化石燃料に依存し、化石燃料を利用して成り立っているのに対して、江戸文化は、太陽エネルギーだけを使って成り立っていた。
具体的にいうなら、徹底的に植物に依存し、植物を利用した時代だった。
もちろん、植物以外の資源を利用する漁業や、鉱物を加工して金属や陶磁器を作る産業も発達したが、中心になるのはさまざまな形での植物の利用だった。
植物を育てる重要な作業にも、人力とわずかな家畜の力しか使わなかったが、考えてみると、人間は去年の太陽で育った穀物などを食べて動いているし、馬や牛も去年か今年の太陽で育った穀物やわら、草などで生きているから、結局は、産業も過去一、二年の太陽エネルギーだけを利用して成り立っていたことになる。
今のように石油で暖めるハウス栽培をすれば、真冬でも胡瓜やトマトを出荷できるし、大きな船で遠洋漁業に出れば、日本では獲(と)れない魚を獲(と)って来ることもできる。
ところが、太陽エネルギーだけを利用して植物栽培や漁業をやっていた当時は、それぞれの土地柄に合った作物を育て、季節の海産物を利用するほかなかった。
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四つの文のそれぞれの出だしの言葉は、「現代文明が」「具体的に」「もちろん」「植物を」「今のように」「ところが」です。
これらの言葉を最初の思いつきでイメージ化し、そのイメージをできるだけオーバーに、リアルに、感覚的に、実感をこめて身体に結びつけます。
「現代文明が」→げ……→ゲンゴロウ→ゲンゴロウが頭のてっぺんをかじっている。「ガリガリ」。
「具体的に」→ぐ……ラーメンの具のシナチク→シナチクがおでこにペタリとくっついた。「あちちち」。
「もちろん」→もち……→おもち→おもちが左目にくっついた。「わあ、とれない」。
「植物を」→植物……→そのまま植物で→ベランダにあるゼラニウムの植木鉢が右目にぶつかって、葉っぱが目に入った。「いたたた」。
「今のように」→いま……→今川焼き→今川焼きが鼻の穴にささって、あんこがぐにゅっと出てきた。「ふがふが」。
「ところが」→ところ……→トコロテン→トコロテンが左耳につるりと入ってきた。なんだか冷たくて気持ち悪い。
このようにイメージを使って感覚的に覚えた記憶は、忘れようとしても簡単に忘れられません。
そこで、新しい記憶を開始するときは、前の記憶を一つずつ外していきます。
「頭のてっぺんのゲンゴロウが飛んでいった。やれやれ」「おでこのシナチクを取った。ああ、よかった」「左目のおもちも取った。これで安心」などというように、外すときもイメージを使っていきます。
いったんこのやり方を覚えれば、勉強にも生活にも、いろいろなところに応用できます。
(この文章は、構成図をもとにICレコーダーに録音した原稿を音声入力ソフトでテキスト化し編集したものです)