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言葉の森の受験作文指導 as/709.html
森川林 2009/12/16 05:27 


 例年、今ごろの時期になると、駆け込みで受験作文小論文の指導を頼まれます。本当は、受験で困っている人は全部引き受けたいのですが、臨時に指導できる人数は限られているので、大学入試であと数ヶ月というような場合はお断りせざるをえないことがほとんどです。

 しかし、単に断るのではかわいそうなので、1回だけ書いたものを見て、今後の勉強の方向をアドバイスしてあげるということは極力するようにしています。


 言葉の森の作文指導の特徴は、そのまま受験作文にもつながることです。しかし、言葉の森に小学校低中学年で来る人は、受験というものを意識しているわけではなく、趣味で作文を書きたいという人がほとんどです。

 それらの子供たちは、小学校高学年になり受験するころになると、ちょうど作文の入試があったので使えたというケースが多いようです。中学受験だけでなく、高校入試でも、大学入試でも、作文小論文の試験があるところを受験することになったので、たまたま言葉の森に入っていてよかったというケースがかなりあります。


 言葉の森の受験作文指導の特徴は、志望校の傾向や過去問にあわせた問題で作文を書くことです。その学校の傾向に合わせて10本ぐらい作文を書いておくと、そこで書いた主題や表現や実例が試験の本番でも使えます。

 この場合、ただ書くだけでもよいのですが、言葉の森では、構成的に書くように指導しています。例えば、「こういうテーマの場合、第一段落はこうで、第二段落はこうで、第三段落はこうで、第四段落はこういう形で書くといい」といった説明です。

 実際の試験では、もちろんこのようにきれいに書けるわけではありませんが、構成的に書く練習をしていると、試験のときも自然に全体の構造がしっかりした文章を書くことができます。作文の試験というと、普通は書きながら考えていくような人が多いのですが、言葉の森の生徒は最初に考えてから書くという書き方ができる人が多いようです。予備校などの小論文模試を受けると、言葉の森の生徒は構成力の点数が際立って高いという特徴があります。


 さて、赤本などで大学入試の小論文の模範解答をときどき見ることがありますが、それらの模範解答は、合格ラインぎりぎりの文章だと思います。いずれも表面的に当たりさわりのないことを書いているので、欠点もないが長所もない文章になっています。受験生の多くがこういう文章を模範的な文章だと思って書いていると、採点するために読む方も大変です。

 受験の小論文でよく「具体例を挙げて書きなさい」という指示がついているのは、受験生の中に模範解答と同じように理屈だけで書いている人が多いためだと思います。


 森リン(言葉の森が開発した小論文自動採点ソフト)にこれらの文章をかけてみると、理屈だけで書いた文章は、語彙の多様性が低下していることが多いので、読んだ感じとして味気ない文章という感じが残ります。理屈だけで書いて、しかも語彙が多様である書き方ができるのは、かなり実力のある人だけです。


 言葉の森では、文章には理屈の裏づけとしての実例をいつも入れるように指導しています。しかし、受験の場合はちょっとしたコツがあります。それは、特に大学入試の場合、体験実例を入れるとよほど文章力のある人でないかぎり、文章が幼稚に見えてしまうことがあるということです。

 したがって、大学入試の場合、体験実例よりも社会実例を入れるような書き方を指導しています。しかし、本当は論説文であっても裏づけとなる実例に体験実例を入れた方がずっと面白い文章になることが多いのです。大学入試の問題を出す人は、「体験実例を入れて書きなさい」という指示をしてくれるといいのかもしれません。

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物語文の国語力は、共感して読む力 as/708.html
森川林 2009/12/14 22:27 


 ときどき、国語の成績のことで相談を受けることがあります。先日も、子供の国語の成績が悪いというお母さんから、悪かったというテストのファクスを送ってもらいました。そのテストを分析して、電話でお母さんに話し始めると、「実は、私はまだその問題を読んでいないのです」という話でした。

 このように、ほとんどのお母さんが、テストの点数だけを見て、中身を見ていないということがあります。模試などでは、分野別に漢字が何点、物語文が何点、説明文が何点などと分けて表示してくれるものもありますが、そういう表面上の分析よりも、まず親が中身を自分の目で見る必要があります。

 これは、国語に限らずほかの教科についても言えることです。また、入試についても、模試の偏差値などよりもずっと確実にあてになるのは志望校の過去問の出来具合です。点数のように加工されたデータに左右されるのではなく、もともとの生のデータに直接当たってみることが大切なのです。

 さて、ほかの教科はよくできているのに国語だけがおもわしくないという場合、意外と多いのが時間不足という原因です。前半がよくできているのに後半に×が多いという場合は、明らかに時間不足です。

 国語力のある子は、問題文を気合いを入れて一回だけ読み、設問にも一発で答えるような解き方をします。国語力のない子は、何度も繰り返し読むような読み方をするので、どうしても時間が不足してくるのです。

 問題文の読み方には、コツがあります。一つは傍線を引きながら読むことです。印象に残ったところに線を引いて読んでおくと、再読する必要があったとき必要な箇所がすぐに見つかります。
 もう一つは、特に物語文を読むときのコツですが、その物語に没入し状況をありありと実感しながら読むことです。こういう読み方をすると、微妙な設問に対しても問題文にいちいち戻らなくても答えることができます。

 速く読む力、共感して読む力は、国語の勉強によってではなく、読書の経験によって作られます。小学校の中学年までは、勉強よりも読書を優先した方がいいというのはこうした理由からです。
 大学入試センター試験などでも、説明文の読み方と物語文の読み方はちょっと違います。説明文は、知的に理解して読んでいけばいいので、ある意味で内容を要約しながら読むような読み方で読んでいけます。

 しかし、物語文はあらすじをまとめながら読むものではありません。その物語が描いている場面に入り込み、自分もその物語の中を生きているような感じで読むものです。そのような読み方をすると、登場人物の微妙な心情も手に取るようにわかってきます。そして、この読み方は、まさしく読書によって培われる読み方なのです。

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