中学生になると、塾に行く子が増えてきます。小学生で20-30%、中学生で50-60%が塾に通っていると言われています。
塾の立場とすれば、早めに、たくさんの教科を、長時間やらないと勉強ができなくなる、と言いがちです。しかし、実は勉強は学校と家庭で十分です。
よく、中学生になると勉強が難しくなるから、家で親が教えることはできないのではないかという声を聞きます。そういうことはありません。英語も、数学も、国語も、理科も、社会も、答えのある教科は、答えを見ながら考えれば必ずわかります。
子供が自分で答えを見て、考えて、その上でわからないのであれば、そこで親に聞きます。親がその答えを見ながら一緒に考えてみると、親も最初はわかりません。しかし、子供と一緒になって考えているうちに、親は子供よりもだんだんとわかるようになってきます。それが年の功です。
中学生の子供の勉強で、子供がわからないところを親が一緒になって考えてあげていると、やがて親の方が子供よりも勉強ができるようになってきます。
では、家庭でどのような勉強をしたらよいのでしょうか。
英語は、教科書を音読して英文を丸ごと暗唱することが土台になります。教科書の1ページ(英文は半分ぐらい、あとは絵や写真や説明)を20回から30回音読すると空で言えるようになります。そのようにしてどんどん読んでいきます。教科書ガイドを1冊用意すると音声のCDがついているので、それを聞きながら読むのがよいでしょう。暗唱の土台の上に単語や文法を理解していきます。
数学は、学校の教科書では問題がやさしすぎるので、市販のちょっと難しめの問題集を1冊用意します。私(森川林)が家で使ったのは文英堂(シグマベスト)の「くわしい数学」でした。これが百パーセントできれば、難関校の数学の入試でも対応できます。
ひととおり問題を解き、できなかった問題はすぐに答えを見て理解して、日を置いて繰り返し解きます。できなかった問題だけを繰り返し解くというのは、実はかなり苦痛です。できる問題を解いている方が楽で面白いものですが、できる問題を解いても実力はつきません。1冊の問題集を完璧に仕上げるというのが勉強の基本です。
国語と理科は、教科書と授業だけでは問題数が少ないので十分な力がつきません。文科省は、もっと学校の教科書だけで間に合うように教科書を充実させてほしいところです。教科書の問題数が少ないので、国語の文法問題や理科の電気配線の問題などでちょっとひねった問題が出ると解けなくなることがあります。そこで、市販の薄い問題集を1冊用意して、問題量の少なさをカバーしていきます。
社会は、教科書を何度も読むのが基本です。教科書を読書がわりに読んでいれば力がつきます。
あとは、提出物をしっかり出して真面目に授業を受けていれば中学の勉強は大丈夫です。
受験が近くなった中学3年生は、夏休み以降に何度か模擬試験を受けて自分の実力を確認します。模擬試験は、塾に行っていなくても受けることができます。
中学生の定期テストの前は、最初のうち子供は自分で勉強の計画を立てることができないので、親が協力してあげます。テスト範囲を見て、1日目はどの教科をどこまでやって、2日目はどの教科をどこまでやる、という簡単な計画でかまいません。やがて、子供が自分で計画を立てられるようになります。
勉強は本来自分の力で独学で行っていくものです。中学生のときに、自分で勉強することに慣れておくと、高校生になっても、大学生になっても、社会人になっても自分の力で勉強していくことができるようになります。
このようなことを書くと、塾の営業妨害になりそうですが、塾にも役割があります。それは、勉強を手取り足取り教えるのではなく、子供に勉強の仕方を教えてあげることです。そうすれば、もっと短時間で能率のよい勉強になります。
また、子供がわからない問題に遭遇したとき、学校の先生に聞けばいいのですが、学校の先生にはわざわざ聞きにくい雰囲気があります。わからない問題だけを教えてあげるというのも塾の役割になると思います。
もっと過激なことを言うと(笑)、厚い教科書さえあれば、塾どころか学校に行かなくても十分に勉強はできます。むしろその方がずっと能率のよい勉強ができると思います。
塾や学校は、勉強をしに行くというよりも、友達と交流し、楽しい中学生生活を送るために行く場所のように思います。
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家で算数の勉強をさせるとき、たとえば、文章問題で、考え方も式もあっているのに、計算のうっかりミスや単位を書き間違えたりがよくあります。
これを直していると、「音読の間違えを直さない」と同じように、子供の意欲をなくさせたり、時間の無駄遣いをしているように感じるのですが、どうなのでしょうか?
それとも、テストになったら、×になる事は、とことん注意して指摘するべきなのでしょうか?
実力があるかないかということが大事ですから、内容的に合っていれば、細かいことは気にしません。
しかし、計算のミスがあるというのは、実は間違いやすいパターンがあるということですから、どういうときに間違えているかということを見て、それと同じパターンの問題を練習するといいと思います。
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◆暗写
貝原益軒は、「空に読み、空に書く」という指導をしました。(「和俗童子訓」より)
読むことと書くことは、同じではありません。暗唱の練習は作文に生きてきますが、より作文に生かしやすいのは暗写です。
しかし、読むことに比べて書くことは時間がかかります。そこで、中心にする勉強はあくまでも暗唱とし、暗唱した文章の一部を暗写することにしました。
現在、通学教室の中学生以上は、構成図をもとに音声入力をしています。ICレコーダーを使う形の音声入力なので、同じ機器を暗写にも使うことにしました。
まず、授業の前に、一人ずつ暗唱してきた文章を先生が聞きます。その300字から900字の暗唱が合格したあと、100字程度の一部分をICレコーダーに録音します。
その際、一文ずつ切って入れていくのがコツです。一文ずつ切っておけば、書き写すために再生するときに自然に文が終わるので、再生停止の操作をしなくて済むからです。
再生するときは、一文ずつ再生し、作文用紙などに書き写します。長文を見ずに、暗唱した音声だけをもとに書いていき、最後に長文と照合します。
書けない漢字は、ひらがなでかまいません。しかし、読点や段落は、なるべく元の原稿に合わせるようにします。
このように暗写の練習をしていると、暗唱のときも、書く文章として意識しながら読めるようになります。
◆音声入力
この暗写の練習をしていると、音声入力も全く同じようにできます。
音声入力の場合は、構成図を見ながら、自分が書こうと思う文を一文ずつICレコーダーに入れていきます。読むスピードは書くスピードの10倍以上あるので、1200字の文章でも10分もあれば楽に音声で入れられます。
全部音声で入れたあと、最初から一文ずつ聞いてテキスト化していきます。
実は、音声入力も、最初のうちは、なかなかひとまとまりのスムーズな文が出てきません。しかし、慣れてくると、手で書いたりパソコンで入力したりするのと同じように音声で入力することができるようになります。
作文は、考える過程と書く過程に分けることができますが、これまでは、書きながら考え、考えながら書くというふうに両者が渾然一体のものとなっていました。これはこれで楽しいものですが、忙しいときにはなかなか書くことができないということになります。
中学生以上の生徒が作文の勉強を続けるときに、いちばんネックになるのが、この書くことに時間がかかるということです。構成図と音声入力は、この時間的な制約をほとんどなくしてしまいます。
何しろ、わずか15分程度で構成図と音声入力を使って1200字程度の作文ができるのですから、勉強の能率はかなりよくなります。もちろん、その音声をテキスト化する作業を入れると、キーボードを打つ又は手で書くという物理的な時間は必要になります。しかし、忙しいときは音声だけで済ませておき、時間のあるときにテキストに直すということもできるようになります。
音声入力に慣れてしまうと、手で書くときに書けなくなるのではないかと心配する人もいると思いますが、そういうことはありません。逆に、文を音声で言ってから書くスタイルが身につくと、直接手で書くときにも能率がぐんと上がります。
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