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感想文の書き方はシンプルに as/998.html
森川林 2010/08/21 12:27 



 例年、夏休みになると、いろいろな方から、「感想文を見てほしい」という要望があります。

 しかし、これは原則としてお断りしています。その理由は、ひとつには小学校4年生ぐらいまで読書感想文の指導は無理があることです。もうひとつは、じっくり指導をすると上手になりすぎるからです。

 感想文が、自分の力で書けるようになる学年は、小学5年生からです。このころになると、文章を構成的に考えられるようになり、感想も一般化した形で書けるようになります。

 構成的な書き方とは、ひとつの段落の中身を文章全体との関連で考えて書くことです。一般化した感想とは、「自分がこう思った」ということだけでなく、「それは人間にとってこういうことだと思った」という感想です。

 しかし、小学5年生から書けるようになるとは言っても、意識的に上手に書けるようになるのは中学生の後半からです。ですから、感想文の宿題に意味があるのは、小学5年生以上、上手に書くことを条件にすれば中学3年生以上です。

 読書感想文の宿題を出す先生は、子供たちのこういう実態を知りません。

 小学校低中学年のほとんどの子は、感想文というと、本のあらすじを一生懸命書くか、又は、親に手伝ってもらう形で書くかのどちらかです。こういう宿題は、一言で言えば無意味です。読書感想文の宿題は、少なくとも小学校低学年では廃止すべきだと思います。

 言葉の森では、感想文の書き方は、希望があれば小学1年生から説明しますが、標準的な課題として行うのは小学3年生になってからです。それも、感想文の形を身につけるということを重点にした指導です。

 では、言葉の森では、感想文をどのように教えているのでしょうか。教え方の基本は、書き方の流れを決めて、その流れの中に内容をあてはめていくという形です。例えば、「本のはじめの部分の内容を書き」→「自分の似た話を書き」→「本のはじめの部分の内容についての感想を書く」という書き方です。これを1ブロック400字とすると、このブロックを毎日1つずつ書いていき、3日間で3ブロック1200字の感想文を書くことが出来ます。1日400字であれば、どの子も抵抗なく書けます。また、書き方の流れが決まっているので、苦手な子でもそれなりに書くことができます。

 感想文の指導のプロの人から見れば、幼稚な書き方のように見えるかもしれませんが、この書き方の利点は、考え方がシンプルなので、だれでも教えることができ、だれでも書くことができるという点です。そして、単に書きやすいだけでなく、この書き方で多くの子が感想文コンクールに入選しています。

 文章のよさのほとんどは、中身のよさです。似た話の中身が充実していれば、単純な構成であっても読み手を引きつけるいい文章を書くことができるのです。

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柚稀 20100822  
すごくいいです!私は小学校6年生ですが、毎年感想文の宿題は最後までできず、結局お母さんに手伝ってもらいます。
私も感想文の宿題は廃止して欲しいです。
作文を書くのも苦手だし、どういう風に書けば上手に見えるかも全然分かりません。だから感想文の宿題は、廃止しないなら中学校くらいからにして欲しいと思いました。

森川林 20100823  
 柚稀さん、コメントありがとう。
 感想文の宿題は、単に惰性で出されているだけです。毎年出されているから今年も出そう、ということです。工夫も何もありません(笑)。
 中学生になると、税金の作文や人権の作文の宿題を出すところがありますが、これも全然工夫がありません。せめて出すなら、書き方の説明をしてだれでも書けるように準備をしてから出してほしいですね。

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日本語教育文化と言葉の森 as/997.html
森川林 2010/08/20 20:07 


 学力の土台となるものは日本語の力です。それは、勉強として身につける以前に、家庭での日本語の生活から自然に身につくものです。家族との対話、読み聞かせ、そして読書や手紙という日本語の生活を通して、日本語を駆使する力が育ちます。

 しかし、現代の社会では、家庭での日本語教育力に大きな差が出るようになってきました。原因のひとつは、テレビが家庭での日本語の環境に大きく影響してきたことです。テレビの登場によって、家族での話し合いや読書の時間が大きく削られるようになってきたのです。

 解決策は、テレビというマイナス要因を排除することではありません。欠点を直すという発想は、わかりやすいものですが、やはり後ろ向きの考え方です。テレビが家庭生活に入ってきたのは、それなりの合理的な理由があったからですから、それを単に否定するという対応では限界があります。

 大事なことは、テレビのマイナスを排除することではなく、テレビの影響を上回る日本語の環境を作っていくことです。

 言葉の森の勉強は、こういう日本語の環境を作るきっかけとして役立てることができます。

 第一は、毎日の暗唱です。素読の勉強というものが今見直されていますが、子供が毎日四書五経を読むという練習は家庭ではまず続けられません。最初は、珍しい勉強として取り組むかもしれませんが、じきに飽きてきます。最近学校でもよく行われるようになった音読の宿題も、家庭で続けようとなると子供が飽きてやりたがらなくなるという問題に必ず直面します。そういうときでも、親が確信を持って、子供に音読を続けさせればいいのですが、子供が飽きて嫌がるようになると、親は自分が音読をした経験がないのでつい子供に妥協してしまいます。

 暗唱の場合は、毎日10分程度の時間をとるのは音読と同じように親からの働きかけが必要ですが、暗唱は音読と違ってやり遂げたあとに達成感が残ります。また、言葉の森の暗唱の自習は、担当の先生が毎週電話でチェックをします。暗唱の自習は、音読の自習と違ってやったかやらないかがはっきりわかるので、真面目に努力をした子供にとっては自分の努力が認められる機会になります。そして、何よりも、暗唱をすることによって、日本語を理解する頭の仕組みが作られていきます。

 第二は、毎日の音読です。毎週の課題の長文を音読するのにかかる時間は3、4分です。この音読をすることで身につくものは、その長文の表現と内容ですが、実はそれ以外にもっと大きな効果があります。それは、親のいる前で音読することによって、親子で長文の話題を共有できるようになることです。子供が同じ長文を何度も音読するのを聞いていると、その長文の内容をもとに、親がいろいろな話をすることができます。この親からの話が、子供がその長文で感想文を書くときの似た話の中身になります。長文をきっかけにすることで、親子の間で知的な対話をする機会が生まれるのです。

 第三は、毎日の読書です。特に、小学校高学年以上の生徒を対象にした問題集読書です。読書の大切さということは、多くの人が知っていますが、子供に本を読ませる方法に悩んでいる人もかなりいます。面白い本を目の前に置いておけば読むようになるかというと、そういうことはまずありません。また、たとえそれで読書をするようになったとしても、そこから学年相応の難しい本に移行できるかどうかということはまた別の問題です。問題集読書は、毎日の課題として難しい文章を読む機会を作ります。

 問題集読書はどのようにするかというと、問題文だけを毎日数ページ読み、その中で印象に残った部分をもとに四行詩を書きます。問題を解くような勉強はだれがやっても同じ結果になりますが、自分で四行詩を書くという勉強は創造性が発揮できるので、実力のある子ほど喜んで取り組みます。この四行詩に書いた切れ味のいい表現が、自分で作文を書くときの表現としても使えるようになります。

 第四は、毎週の作文です。今の子供たちは日常生活の中でまとまった文章を書く機会がほとんどありません。中学生になるとメールのやりとりなども盛んになりますが、そこで交わされる文章は断片的なもので、ひとまとまりの構成を持った文章を書くということではありません。しかも、学校のテストで文章力が評価される機会がないので、子供たちは、自分が文章を書けるのか書けないのか、得意なのか苦手なのかもわからないまま成長していきます。しかし、国語の本当の実力は、文章を書くことの中に表れてきます。ところが、毎週600字から1200字の作文を書く機会というのは、家庭の自主学習ではなかなか作れません。そこで、言葉の森で作文の勉強をする意義があるのです。

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家庭で育てる日本語教育文化 as/996.html
森川林 2010/08/19 18:40 


 日本語力を育てるのは家庭生活ですが、現在の問題は、家庭における日本語教育力が弱くなっていることです。

 江戸時代、寺子屋で素読や手習い(習字)が普及していたのは、その寺子屋の教育に対応する文化が家庭にもあったためです。

 例えば、子供が素読する文章を多くの親は知っていました。親自身も子供時代に同じような素読をして大きくなったからです。ちょうど、現代の九九のように、親が知っているから、学校で宿題として出されるだけでも、ほぼ全員が九九を言えるようになるというのと同じ家庭の文化があったのです。

 また、家庭生活でも仕事生活でも、手紙によるやりとりが頻繁におこなわれていました。手習いの練習は、手紙を書くための教育として普及していました。

 「インド式すごい勉強法」(ニヤンタ・デシュパンデ著)によると、インドの家庭では、親が子供に古典を朗読させるという昔ながらの教育文化があるそうです。学校や塾に行かなくても、家庭で朗読ができるというのは、親と子に共通する言葉の文化があるからです。

 ひるがえって今、日本の家庭に日本語を教育する文化があるかと考えると、残念ながらそれはほとんどありません。

 親が小さい子供に読み聞かせをするときでも、多く場合、本を用意して読んであげるという形です。このため、読み聞かせは親にとって負担の大きいものになります。しかし、もし親が自分が子供のころに聞かされたいろいろな昔話を知っていて、それを思い出しながら子供に話して聞かせるのであれば、この読み聞かせ(話し聞かせ)は、もっと楽に長い時間できるものになるでしょう。

 教室に通っている子供たちに、感想文の似た話の例として昔話を挙げると、多くの子供がそういう昔話を知りません。また、日常生活でよく使われるようなことわざも、知らない子がかなりいます。昔話は、テレビの「日本むかしばなし」で、ことわざは、学習漫画の「まんがことわざ辞典」で学ぶようになっているのです。

 また、現代の日本の社会では、手紙のやりとり自体がありません。そのため、日常的な言葉とかけ離れた形式やルールが生き残り、手紙を書くことが日常生活からますます縁遠いものになっています。家庭生活の中では文章を書く機会や必要がないため、子供たちが文章を書く場所は、学校の作文やレポートに限られています。しかし、その学校での機会も、それほど多いとは言えません。

 更に、親子の対話の時間が限られています。親と子が家庭で談話をする時間がなかなかとれないのです。それは、父親の帰りが遅いこと、母親も遅くまで仕事をしていること、そして、テレビが茶の間に主役になっていることが主な理由です。その結果、親が子に話すのは、勉強に関する小言のようなものが中心になっているのです。

 本当は、親が子供に、親の子供時代の話をしてあげるなどということが日常的にできれば、小学校低学年の子に対しても、中学生、高校生の子に対してもそれなりに中身のある対話ができるでしょう。しかし、そういう話が家庭で行われないのは、親子の間に家庭で話をするという文化がなくなっているからです。

 家庭で知的で楽しい対話の機会がなく、テレビを見ることが日本語の生活の中心になっているので、たまに親子が話をすると、成績のこと、テストのこと、受験のことになり、内容を深める話よりも表面的な掛け声のような話になってしまうことが多いのです。(つづく)

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