先生は大学1年の夏休みに、北海道を旅しました。寝袋(ねぶくろ)やテントを持ち、駅や山に寝泊りしながら、北の大地を一周したのです。小樽(おたる)の赤岩(あかいわ)というところには、絶壁(ぜっぺき)がありました。私は、そこで茶色にさびたハシゴを使い、断崖(だんがい:がけのこと)をソロリソロリと降りていたのですが、「ふわり」と、体が風に揺(ゆ)さぶられ、一瞬(いっしゅん)、命を落としそうになったのです。生まれて初めて「あ、今、命があぶない!」ということを肌で感じました。その時から、「今、命が“ある”ことは、不思議だな。」と思うようになったのです。
でも、私達の生活は、毎日「危険」を感じるわけではないですね。それは同時(どうじ)に、「安全」であることへの感謝(かんしゃ)もわすれてしまうということでもあります。
高校一年の春、地学(ちがく)の先生に「みんなぁ。家から学校まで、土を踏(ふ)んで来た者はいるかー?」と、質問されました。その時、私は「あれ? 土を一回も踏まずに学校に来ちゃったな。」と気付かされました。手を上げた人がまばらで驚(おどろ)いたのを覚(おぼ)えています。
みなさんはいかがですか? あ、ぼくも(私も)と、思った人もいるのではないかな? 土や、でこぼこ道を踏むことなく、アスファルトの上だけを歩いて、どこまでも行けてしまうのが、「今の日本」ではないでしょうか。
しかし今、世界ではいたましい事件が数多くおこっています。テレビでは悲しいニュースが毎日のように報(ほう)じられています。家族の人も「なぜこんなことが?」、「ひどいなぁ、かわいそうに・・・・・・・」と、テレビを見ながら口々に言っておられることでしょう。
日本での生活はとても安全で、本当に感謝なことです。でも、「私達の幸福が、ほかの人々の不幸に支えられているのであってはならない」という名言があるように、みなさんもぜひ、世界の出来事(できごと)を「自分のことのように思いやる心」を見つけていってほしいなと思います。(先生もまだまだです。)
作文を書くことがなぜいいのか。それは、そういう「やさしい心」を耕(たがや)し、色々なことを考えるきっかけをみなさんにプレゼントしてくれるからです。感じたこと、思ったことを書いてみることで、どんどん心は豊かにされていくのです。みなさんの毎日が一日、一日と足されることをときには深く感謝して、これからも、一つ一つの作品を書いていきましょう。きっと毎日が感動(かんどう)の連続になることでしょうから・・・・・・!(^v^)
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枝 6 / 節 6 / ID 6966 作者コード:inoro
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