先日、『思い出の少年倶楽部時代』(尾崎秀樹・講談社)という本を読みました。
『少年倶楽部』というのは、太平洋戦争前後、子どもたちに大人気だった雑誌です。今で言うと、『少年ジャンプ』みたいな感じでしょうが、違っているのは、中身がほとんど「物語」だったことです。
この頃は、『少年倶楽部』だけでなく、どの雑誌も読み物中心で、大人気だったそうです。もちろん、少女向け雑誌もありました。
そんな時代の人気作家たちと作品を紹介している本です。たとえば、『ああ玉杯に花受けて』『敵中横断三百里』『花物語』などという物語だったそうで、みなさんのおじいさんおばあさんなら、なつかしく思われる方もいるでしょう。
その中で、驚いたのが、「少年詩」が人気を集めていたということ。
詩ですよ、詩! 今でいうと、もちろんポップス系やラップ系の歌の歌詞が好きという人もいるでしょうが、歌なんかついていない、目で読む詩ですよ。
その第一人者が「有本芳水(ありもとほうすい)」という人だそうです。明治19年から昭和51年まで生きてきた人で、この人の『芳水詩集』は、なんと三百版近く再版されるという超ベストセラーになったそう!
例としてあげられている詩のごく一部(一連)を書き写してみます。(本文P18)
「粉河寺」
馬の背にしてかへり見る
春暮れ方の紀伊の国
松原かげに旅人の
すげ笠あまたゆきかひて
赤き夕日は橘(たちばな)の
花咲くへに匂ふかな
・・・みなさん、いかがですか?
「ことばのひびき」と「内容のロマン」に感動していた時代。
想像できるかな?
私は田辺聖子さんという作家の本が好きなのですが、この方の作品にはたくさん知らない珍しいことばが出てくる・・・と思っていたのですが、そのことばも『少年倶楽部』の作品の中にはよく使われていることもわかりました。「獰悪(どうあく)」とか「剽悍(ひょうかん)」とかね。本を読んだり、音楽を聴いたりするとき、こうした「ことば」そのものも愛して、味わってみるのも、楽しみの一つだと思います。
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枝 6 / 節 7 / ID 10184 作者コード:takeko
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