ゆた組のみなさん、こんにちは。学級新聞・2007年始め号です。
年の始めに一年の目標を掲げた人も多いと思います。達成に向けて前進し、充実した日々にしてください。
目標というほどはっきりしたものではありませんが、私は毎年テーマを決めています。今年のテーマは「想像力」。とくに現実から想像することを意識していきたいと思います。
友人が突然ぎっくり腰になったときのこと。何とか助けてもらいたいと痛みをこらえて、やっとの思いで病院にたどり着いたのに、簡単に「一時間待ちです」と言われてしまった。立っていることも座っていることも辛いのに、そんなに耐えられないと途方に暮れたそうです。
結局融通が利かず、他の病院に行ったそうですが、その話を聞いたときに私は「受付の人に痛みの想像力が足りなかったんだ」と思いました。
息子が算数のテストで間違えたときのこと。「サッカーの大会でAチームは何試合することになりますか」という問題。息子の答えを見ると公式に当てはめて計算したようなのですが、「いや、これは多すぎるだろう。そんなに試合をするわけがない」とひと目でわかる数字が書かれています。
そこで私が言ったのは、「せっかくの文章問題なんだから、自分がAチームの選手になったつもりで考えればいいじゃない。あと何勝したらベスト4入りだとか優勝できるとか、普通、選手だったら指折り数えるでしょう。ちゃんと想像しなくちゃぁ」ということでした。
さて、そういう私は果たして想像力に長(た)けているのか? いや、そうではないでしょう。病院のこともテストのことも、結果を聞いたり見たりしてえらそうなことを言っているだけです。
現実の当事者が想像しないというのは、自分の一方的な考えしかできずに他の面があることに気づいていないということです。ですから私も、あらゆる場面で他の見方に気がつかず、想像力に欠けているに違いありません。そして、それは当たり前のことであって、誰もすべてのことを想像することはできません。だから人間は誰でも、間違い、失敗するのです。
しかし、あらゆる場面で「他にさまざまな見方、考え方、事情があるのだ」と知っているということは、とても重要なことだと思います。とくに「もし私だったら……」と想像することは、簡単にできること。
「私がこの患者さんだったら……」そう思ったら「大丈夫ですか、座って待てますか?」という一言ぐらい出てきそうです。 「もし私がAチームの選手だったら……」そう考えれば、数字だけの計算よりずっとおもしろい。
「想像力」を今年の目標にしようと思った最大のきっかけは、NHKの「知るを楽しむ」という番組の中で聞いた、工学院大学教授の畑村洋太郎さんの話からです。
テーマは「だから失敗は起こる」で、失敗を生かしていく姿勢について語っていました。場所は羽田空港のJAL安全啓発センター。1985年、御巣鷹山に墜落しバラバラになった機体が展示されています。乗員乗客520名が亡くなるというとてつもない大事故で、そのときのニュース映像を私も今でもはっきりと覚えています。
墜落の原因は圧力隔壁と呼ばれる部分の亀裂だったそうですが、飛行機の開発・部品の製造・修理・点検のどこかで弱さや異常に気がついていれば、こんな大惨事は起きなかったかもしれません。
グニャリと押し曲げられた座席の前で、畑村さんは「こんなに硬い鉄の塊が一瞬のうちにこんなに捻じ曲げられた。ここには子供が座っていました。」と語りました。
「ここに来て、この客席に自分が座っていたら……自分の家族が座っていたら……もしも自分の妻が、もしも自分の子供が座っていたらと想像したら、絶対に二度とこんな事故は起こさないと思うはず。その想像力が安全な飛行機づくりを支える。そして、飛行機だけにとどまらず、さまざまな分野に影響を与える」
「もし私だったら……」と想像することが多くの人の命を守る安全につながる。反対に想像が足りなかったために、いい加減な気もちになり大事故を引き起こすこともある。「想像力」は目に見えないものだけれど、あるとないとでは大きな違いだと気づきました。
同じ経験をするにも、想像を深めれば、さらに多くのことを学べそうです。 今年のテーマは「想像力」。「もし私だったら……」を意識していきます。
|
|
枝 6 / 節 12 / ID 10748 作者コード:yuta
|