言葉の森では、作文の上達のために、長文の音読がすすめられています。高学年になるにつれ、音読はやりにくくなりますか?
私は実は、大人がすばらしい音読をするのを聞いたことがありますよ!
まず、今年の2月3日のことですが、イランの絵本原画展という展示が渋谷であり、そこでイランの絵本を1冊読んでくれる会があったのです。『ごきぶりねえさんどこいくの?』という絵本で、読んでくれるのは、ぶたいの役者をやっている、いわば演技のプロのお兄さんと、絵本を日本語に翻訳したお姉さんです。私はこの日本語の絵本を、お姉さんからもらっていたので、楽しみに聞きに行きました。お話は、イランではみんなが知っている昔話だそうです。ごきぶりのおじょうさんが、きれいなチャドルという布をかぶり、赤いくつをはいて、まちまでひとりだちしに行くお話です。旅のとちゅうで、いろいろな人に出会いますが、さいごは町のネズミのわかものとけっこんしてしあわせにくらすという、くりかえしのことばの多いお話です。
それを、プロの役者さんと、イランに留学して、イラン人のこころをよく知ったお姉さんが読んでくれるのですから、じょうずなことといったら! 本を目で読んだときよりも、日本語なのに、目の前に、イランのふうけいがふわりとうかびあがってきました!
もう一つは、ずいぶん前、私がタイのバンコクで子ども図書館活動をしていたとき。タイの子どもの本作りをしている人たちのために、東京子ども図書館の館長さんが、いい絵本とはどんなものか、英語で教えに来てくれました。私たちも参加することができたのですが、そのとき、『おかあさんだいすき』という絵本を英語で読んでくださいました。これは、「岩波こどもの本」というシリーズから出ていて、英語の題は「Ask Mr.Bear(くまさんにきいてごらん)」といいます。実は、私が本当に本っておもしろい! とはじめて感動して、本が好きになるきっかけになったのが、小学校1年生のとき学級文庫にあった、この「岩波こどもの本」シリーズだったのです。『はなのすきなうし』『ちいさいおうち』『まりーちゃんとひつじ』そして『おかあさんだいすき』。どれも、ありふれたものは一つもなく、ほんとうのしあわせって何か、感じさせてくれる力がありました。その一つなんです! 館長さんはアメリカでもストーリーテリングの勉強をしてきた方で、長いあいだ日本で読み聞かせをして、教えてこられた方です。それは英語の読み聞かせだったのに、私たち日本人みんな、感動して涙ぐんでしまいました。そこでもお話の世界がふんわりとたちあがってきたのです。それは、テレビや映画を見るのとはまた別の感覚で、その世界につつまれるようなきもちになれたのです。
本当にしっかりと何度も練習した音読には、書いてあることをゆたかに感じさせてくれる魔法の力があります。声を出して読むって、はずかしいかもしれませんが、きもちのいいことでもあるのです。私はバンコクで8年間、のべ2000人の子どもたちの前で読み聞かせをしてきました! うまくはないですが、声に出して読む力は少しは使うことができるようになりました。みなさんもそんなことがあるのだな、と音読に挑戦してみてもらえたらと思います。
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枝 6 / 節 15 / ID 10846 作者コード:takeko
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