♪卯の花の匂う垣根に ホトトギスはやも来鳴きて、忍び音もらす 夏は来ぬ
五月の初めといえばこんな季節でしょうか。私の家はちょっとした丘陵地にあるため、朝は「ホーホケキョ」で目覚めることができます。たしか三月になったばかりの頃から、三通りほどの「さえずり」を確認しています。見事に「ホーホケキョ」と鳴くことができる名人鳥くん、「ホーホケッ」の期待の新人鳥くん、「ケキョケキョ」のまだまだ修行鳥くん、そんなメンバーです。
万葉の時代から、卯の花(ウツギ)とホトトギスはひとつの季節、歌のなかに読まれてきたようです。最近の日本の気候は、どこかどげとげしくて人をはねつける様な気がしていましたが、まだまだ風流は残っているのですね。
「鳥は木に隠れるのではなくて、自然に隠れるものだ。」
これは小学校6年生の生徒さんが、4月2週の課題作文で書いてくれた一文です。街の公園には緑がいっぱいなのに、ホトトギスが鳴かないと気がついたそうです。山の鳥は、ここには来ていないのだと思ったとき、すなおに思ったことを文にしたものでしょう。しかし、名言だと思いませんか? 私は感動しました。自然とはどのようなものか、感覚として気づかせてくれます。そして、この一文が深みのある言葉になるのには、もうひとつ理由があります。そのかたちです。
「○○とは△△ではなく、□□なものである。」
これは「名言」をつくる公式のようなものです。たとえば、名言集にもある
「家とは、外から見るためのものではなく、中で住むためのものである。」
のようなものです。このとき、○○には、話題にしていることのキーワードを入れます。△△には、世間一般にふつうに考えられているようなことを入れます。そうして□□には、自分なりにひねりをきかせた意見を入れてみます。すると、名言ができるというわけです。じつは、これは高校生のみなさんの課題の項目に「自作名言」として登場しています。この春からワタスゲの級に進んだ人たちは、果敢に挑戦中です。みごとな名言がぞくぞく誕生しています。
この「自作名言」がすらすらできるようになるための準備として、「たとえの表現」があり、さらに「ことわざの引用」「名言の引用」があります。いきなり最終目標にジャンプしたのでは、文章の中味がついていけません。ホップ ステップ ジャンプで、すばらしい小論文のくくりができるように進んでいくのです。
ですから、小学生のみなさんは作文を書くときに、ひとつでも「まるで・・・のような」を見つけていきましょう。最初はむずかしいと感じるかもしれません。そんなときは、お父さんお母さんとできごとを思い出すときに、「まるで」をつかうゲームのようなことをしてみるのもいいと思います。たとえること、言い換えをする力が、豊かな文章の底流になっているように思います。
いま、高校生に進級された生徒さんも、小学校の頃の作文があったなあと思い返すにつけても、徐々に形成されていく表現力のあることを実感しています。今の課題にていねいに取り組んで、ひとつひとつ積み上げていきましょう。
きら
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枝 6 / 節 11 / ID 11132 作者コード:kira
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