3月最後の日曜日、家族でダーウィン展(上野)に行ってきました。そこで思いがけず、ゾウガメを見ることができました。このカメ、ゾウという名がつくくらいですからとにかく大きい。体重は約100キロ。じーっとしているので、初めハクセイかと思っていました。ところが、エサ係がバケツを持って登場すると、巨体に似合わぬすばやさで向きを変えるではありませんか。エサは、細長い草です。カメは、それを次から次へワッシワッシとほおばります。よく「カメ!」(笑)とつっこみを入れたくなりました。
ところが、ガラスケースに釘付けになっているうちだんだん奇妙な感覚がわきおこってきました。口元だけ見ているとまるで牛か馬が草を食べているような感じなのです。何か変。テレビのドキュメンタリー番組で「イルカが陸に上がって犬の祖先になった」という話を聞いたときと、よく似た感覚です。ふだんは似ても似つかないと思っているハ虫類のカメからほ乳類の牛や馬を連想する、また、海に住むイルカと陸の犬のルーツが同じ。こういう事は、いつのまにか常識にまみれてカタくなっている私の脳には、違和感としか受け取れないのでしょう。みなさんだったら、どんなふうに感じるでしょうね。
このカメさん、ガラパゴス諸島の中でも島によって形が少しずつ違うらしいのです。ダーウィンは、そこに目をつけました。たとえば、甲羅(こうら)部分が鞍(くら)のようにまくれあがっているカメがいる島があります。ここでは、きっとサボテンの葉や花を食べるのに都合のいいように甲羅が変化したのでは?と考えたのです。これはほんの一例ですが、ダーウィンは、5年間の探検旅行で抱いた疑問や推論にヒントを得てさらに研究を重ね、後年進化論へとまとめていきました。
これが研究?というようなユニークな展示もありました。口をとがらせて怒ったサルの写真。その隣にはサルと同じ表情の人間。あるいは笑い顔のサルと人間の笑顔をくらべたものなど。何枚も。全部ダーウィンの資料です。サルの方が人間らしかったりして(?)、おもしろかったです。「サルまねだ!」「サルのふり見てわがふり直せ」と茶化してはいけません。サルと人間の表情を比較して観察することも、ダーウィンにとっては大まじめの試みだったのです。
博物館の暗い展示室を出ると、上野公園は桜が満開でした。ビニールシートを敷いて花見の場所取りをする人たち、散歩中の犬、鳩の群れ…。一見全然関係のない人も動物も、みんな先祖をたどっていけば細胞レベルでつながっているなんて。やっぱり私には「なんとも不思議なSF的な世界」としか言いようがありません。
(ダーウィン展は6月22日まで科学博物館で開催中。大阪にも巡回予定。)
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枝 6 / 節 11 / ID 12353 作者コード:utiwa
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