どんな理路整然とした方法論に |
アジサイ | の | 峰 | の広場 |
武照 | / | あよ | 高2 |
「大学では、某博士の精神の研究はどうだとか、某精神理論は間違っている |
とかそんなことが学生の間で議論されていて、私もその中にどっぷりと漬かり |
こんでいました。そして当然のごとく、私も自分の考え方を実地で活かしたい |
と思っていました。」身近な悩みを精神学の立場から分かりやすく解説する、 |
精神学者の香山リカはこのように言う。「しかし、ある女性雑誌の悩み相談の |
コラムを書いていて実感したのですが、読者は精神哲学になど興味を持ってい |
ないということです。それよりも、恋愛の傷をどうやって癒すかといった事の |
ほうがずっと身近な問題なのです。」 |
現在、科学はその専門化に伴ってますます我々の手に届かないものになって |
いる。科学の議論は専門知識を身に付けた学者達の狭い世界で行われ、我々の |
世界に適用される事は非常に少ない。そのために現在の科学は「学問のための |
学問」に終始する事となっているのである。ここで、「人間の社会で活かされ |
、人間のために使われる」科学のあり方を見直す必要があるのではなかろうか |
。 |
人間の社会で活かされるための物としての科学が見失われてきた背景として |
、「科学」と「科学技術」の分離があったと思われる。マイクル・クライトン |
は小説「ロスト・ワールド」で、ある技術者に「私は科学者が大嫌いだ。科学 |
者は頭で考えているだけで何も作れない」と言わせている。スペースシャトル |
を作り上げたのは科学ではなく科学技術である。たしかに科学技術は科学を根 |
拠としているが、科学だけでスペースシャトルが作り上げられなかったのも事 |
実なのである。パスツールがやったような「科学技術」その物が「科学」とい |
う時代は終わったといえるだろう。つまり現在の科学は「人間のために実用化 |
する」という役割を科学技術に肩代わりさせたのであり、それから科学と科学 |
技術との間の溝はますます大きくなる事となったのである。 |
たしかに一見人間の役に立たない研究から人間の役に立つ科学が生まれてい |
るという点も重要である。現在マーケティングや映像技術などに応用されてい |
る複雑系も、煙の形を分子の相互作用と空気の流れなどによってモデル的に描 |
こうという研究から始まったのであり、現在血管の手術への応用を考えられて |
いる尺取虫型のロボットも、どれだけ小型の自走できるロボットを作れるかと |
いう研究の産物なのである。人間の役に立たないからという理由であるその科 |
学を見捨ててしまう事は有用な科学の芽を摘み取ってしまう事にもなるのであ |
る。しかし科学が我々の手を離れて「道具」としての側面を失ってしまってい |
る現在、もう一度、人間の幸せを実現するための科学を見直す必要があるので |
はないだろうか。 |
香山リカは言う。「私が恋愛で落ちこみ、夜中まで友人と電話で話している |
のを弟が聞いて、香山リカって人が本でいいこと書いてるよ、と言われました |
。」科学と人間との溝はまだまだ深いようだ。 |