オイルショックが生じた時 |
アジサイ | の | 峰 | の広場 |
武照 | / | あよ | 高2 |
ある夜、一機のUFOが地球に降り立とうとしている。異星人との接触の時 |
かもしれないのだ。その様子は電波に乗せられ、世界中の人々が注目した。し |
かしそのUFOの飛ぶ様子がおかしい。ふらふらしたかと思うとそのまま墜落 |
した。そこから耳の尖った青い宇宙人が出てくる。そして息絶え絶えに言う。 |
「私は忠告するためにやってきたのだ。このままでは地球は破滅する・・・…。 |
」宇宙人は「このままでは」と言った。しかし何が原因で破滅するかは一言も |
言わなかったのだ。各国は団結し、地球環境を修復し、戦争をやめ、道徳の乱 |
れをなくし、地球は見違えるような星となったのである。 |
これは星新一の作品の一つであるが、一つの脅威が集団の結合力を高めると |
いうことは言えるであろう。日本人にとって身近なところで言えば、オイルシ |
ョックは日本の企業を省エネ化という点において団結させ、後に日本の経済的 |
な地位を押し上げた。しかし時にこの意識は集団間の争いに発展することも事 |
実であろう。語弊があるかもしれないが、戦争が国家の結束力を高め、秩序を |
再び取り戻す上で重要な働きをしてきたことは確かである。西郷隆盛等が主張 |
した征韓論などその良い例であろう。これが正しいか否かは別として、一つの |
脅威は集団の保持のために重要な役割を担ってきたのである。 |
しかし現在の社会は巧妙に「脅威」を作ることによって社会の秩序を保って |
いるように思える。一つはキリスト教においてユダがそうであったように内部 |
に「裏切り者」を想定することである。新聞やテレビニュースなどを見ている |
と、周期的に社会問題が起こっていることに気付くであろう。一種の流行のよ |
うに一つが消えるとまた一つが生まれる。これはそれが本物の社会問題ではな |
いことを示しているように思われる。顕微鏡の発明により細菌が発見されたが |
、それは細菌がその時生まれたことにはならない。注目されて人の目に映る機 |
会が多くなることが、人々に最近生まれた「社会問題」として認識されるので |
ある。しかし重要なことはこの「裏切り者」が社会の「脅威」として受け取ら |
れ、社会を引き締める役割を担っていると言うことである。ニュースには個人 |
としては知る必要のない事件や問題が報道されるが、それも同様の働きをして |
いるはずである。 |
そしてまた現在の資本主義がそこそこ社会を維持することに成功しているこ |
とにも、この「脅威」が大きく絡んでいるはずである。資本主義は常に競争で |
あり、その中で「こちら側」と「あちら側」という意識が働いている。「あち |
ら側」が常に脅威となりうる点で「こちら側」は結束を保っているのである。 |
これを「共犯者意識」と表現する人もいる。 |
確かに「脅威」がなくても主体的に結束はし得るとの考えもあるだろう。イ |
ンターネットなど自主的に集団が生まれた良い例であろう。しかしながら結束 |
することはできてもそれを維持することは非常に難しい。インターネットがこ |
れから空中分解していく可能性もあると私は考えている。前に書いた星新一の |
小説は次のように続いている。 |
人間は宇宙探査をしていた。すると前方に新たな星を発見した。降りてみる |
と、かつて見た尖った耳と青い顔をした宇宙人の星であった。隊長は宇宙人に |
聞く「以前君の仲間が言っていた地球の破滅とはなんだい。」宇宙人は答える |
。「それはご迷惑をおかけしました。そいつは訳もなく破滅、破滅と騒ぐほら |
ふきもので、我々はそいつを宇宙船に乗せて宇宙に飛ばしたのです。」隊長は |
地球に報告すべきか迷った。事実を知ったとき人類は本当に破滅への道を進む |
ことになるかもしれない。 |
脅威をいかに無害な形で作り出せるか、それがその社会の質を決定するはず |
である。 |