ログイン ログアウト 登録
 新しい教育と学校の展望 Onlineスクール言葉の森/公式ホームページ
 
記事 906番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2024/12/4
新しい教育と学校の展望 as/906.html
森川林 2010/05/18 11:11 



 今日は、ちょっと大きな話です。

 言葉の森は、作文教室としてスタートしました。国語教室や学習塾のようなものではなく、作文教室として始めたのは、作文以外の勉強というものはほとんどが独学で可能だと思っていたからです。

 音楽やスポーツなどの分野は独学が難しい面がありますが、作文も同様に独学がかなり難しいという面があります。その要因はまず、自分では自分の書いた文章が評価できないということです。また、文章を書くというのは、あらたまったものになると大きな精神的エネルギーが必要になります。しかも、文章を書くということについての方法論が、「三多」や「起承転結」のようなもの以外にあまりありませんでした。

 しかし、その後、いろいろな試行錯誤の結果、現在その最も難しい作文指導で、基本的な道筋ができたと思います。まだ、意欲化という点で不十分なところがありますが、作文指導の大きな流れはもう既にできています。

 そこで、このあと考えているのは、作文以外のトータルな教育についてです。

 教育というものを大きく考えると、四つの分野に分けられると思います。

 第一は、科学的なものです。ここには、現在の勉強の多くが含まれます。特に、理科や社会の関係の勉強は、テキストを読んで内容を把握することが学習の基本になります。現在の無駄の多い、重箱の隅をつつくような教材を廃して、もっと精選された教材で能率よく吸収する方法があると思います。

 第二は、哲学的なものです。これは、現在の作文を発展させたもので、数学のようなものも一部に入る、考える力をつける勉強になります。

 第三は、工学的なものです。ここには、技術、美術、音楽、語学、プログラミングなどが含まれます。つまり、手足や道具やシステムを自分の意志と一体のものとして自由に動かす技能を身につける勉強です。これも、現在は、一部の才能ある人だけがその分野を楽しめるような狭い世界になっていますが、だれでも日常的にできるものにしていく必要があります。音楽も、絵画も、日曜大工も、料理も、プログラミングも、気ままに自由にハイレベルでできるようになるというのが、工学の教育のイメージです。

 第四は、心身的なものです。ここには、保健、体育、倫理、道徳などが含まれます。これは、人間の健康、幸福、愛、美、楽、笑などの分野です。

 これらの四つの分野で、今最も未開拓の分野が、心身の教育だと思います。

 心身の教育の目的は、ひとことで言えば、願ったことを実現する力を育てることだとも言えます。自分がもっと健康で、幸福で、美しく、楽しく生きたいという願いを実現する力を育てる教育です。それをファンタジーのレベルではなく、教育的な方法論をもって成立させることが、今後の課題です。

 人間というものは、考えてみると、不自由な存在です。それは、身体と言語と感情と感覚に制約されているからです。しかし、同時に、その制約が人間の創造性の源になっています。だから、それらの制約をうまく組み合わせるシステムとしての文化が必要です。

 生物の世界では、何十万年という歴史の中で、現在見られるようなほぼ完成された生態系が作られてきました。目に見えないようなバクテリアも含めて、地球上の生物が大きなシステムの中で多様に生きているのです。

 その生態系が、人間にあっては文化にあたります。今、欧米文明というひとつの文化的生態系の限界が明らかになりつつあります。それは、単に、環境保護の心構えや工夫だけで済む問題ではなく、欧米文明が立脚している根本的な哲学そのものに問題があるのではないかと思います。

 その欧米の哲学に対置できるのが、この島国で数千年に及ぶ平和と英知の文化を築き上げてきた日本の存在です。しかし、それを単に、日本のローカルな自慢にとどめるのではなく、日本文化を世界的なレベルにまで抽象化する必要があります。日本文化の特徴の一つは、言挙げをしないことでした。しかし、阿吽の呼吸というような世界は、すぐには普遍的な文化にはなりません。

 これからの新しい学校の目的は、トータルな教育に加えて、日本、それもローカルな日本ではなく、抽象化された日本を世界に伝えることにもなると思います。

 以上、やはりちょっと大きくなりすぎたか。(^^ゞ



同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
教育論文化論(255) 

コメント欄

コメントフォーム
新しい教育と学校の展望 森川林 20100518 に対するコメント

▼コメントはどなたでも自由にお書きください。
へほまみ (スパム投稿を防ぐために五十音表の「へほまみ」の続く1文字を入れてください。)
 ハンドルネーム又はコード:

 (za=森友メール用コード
 フォームに直接書くよりも、別に書いたものをコピーする方が便利です。
同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
教育論文化論(255) 
コメント1~10件
読解問題の解き Wind
面白かった 10/11
記事 4027番
長文の暗唱のた たろー
この世で一番参考になる 9/30
記事 616番
「桃太郎」を例 匿名
役に立った 8/15
記事 1314番
日本人の対話と 森川林
ヨーロッパの対話は、正反合という弁証法の考え方を前提にしてい 8/6
記事 1226番
日本人の対話と よろしく
日本人は上に都合がよい対話と言う名のいいくるめ、現状維持、そ 8/5
記事 1226番
夢のない子供た 森川林
「宇宙戦艦ヤマトの真実」(豊田有恒)を読んだ。これは面白い。 7/17
記事 5099番
日本人の対話と 森川林
 ディベートは、役に立つと思います。  ただ、相手への共感 7/13
記事 1226番
日本人の対話と RIO
ディベートは方法論なので、それを学ぶ価値はあります。確かに、 7/11
記事 1226番
英語力よりも日 森川林
AIテクノロジーの時代には、英語も、中国語も、つまり外国語の 6/28
記事 5112番
創造発表クラス 森川林
単に、資料を調べて発表するだけの探究学習であれば、AIでもで 6/27
記事 5111番
……次のコメント

掲示板の記事1~10件
Re: 標準新 森川林
 これは、確かに難しいけど、何度も解いていると、だんだん感覚 12/2
算数数学掲示板
標準新演習算数 あかそよ
3の1はできました。 2は、答えを見るとなんとか理解できま 11/23
算数数学掲示板
2024年11 森川林
●サーバー移転に伴うトラブル  本当に、いろいろご 11/22
森の掲示板
現在森リンベス 森川林
このあとの予定。 ・森リンベストを直す(直した) ・森リ 11/20
森川林日記
Re: 入会手 言葉の森事務局
 お世話になっております。  弟さんのみご入会が1週間 11/15
森の掲示板
入会手続きにつ やすひろ
お世話になっております。 個別掲示板を開けませんので、ここ 11/15
森の掲示板
Mr. 1
1 11/14
森の掲示板
Mr. 1
1 11/14
森の掲示板
Mr. 1
1 11/14
森の掲示板
Re: 項目の 1
> いつもありがとうございます。 > > こすほ 11/14
森の掲示板

RSS
RSSフィード

QRコード


小・中・高生の作文
小・中・高生の作文

主な記事リンク
主な記事リンク

通学できる作文教室
森林プロジェクトの
作文教室


リンク集
できた君の算数クラブ
代表プロフィール
Zoomサインイン






小学生、中学生、高校生の作文
小学1年生の作文(9) 小学2年生の作文(38) 小学3年生の作文(22) 小学4年生の作文(55)
小学5年生の作文(100) 小学6年生の作文(281) 中学1年生の作文(174) 中学2年生の作文(100)
中学3年生の作文(71) 高校1年生の作文(68) 高校2年生の作文(30) 高校3年生の作文(8)
手書きの作文と講評はここには掲載していません。続きは「作文の丘から」をごらんください。

主な記事リンク
 言葉の森がこれまでに掲載した主な記事のリンクです。
●小1から始める作文と読書
●本当の国語力は作文でつく
●志望校別の受験作文対策

●作文講師の資格を取るには
●国語の勉強法
●父母の声(1)

●学年別作文読書感想文の書き方
●受験作文コース(言葉の森新聞の記事より)
●国語の勉強法(言葉の森新聞の記事より)

●中学受験作文の解説集
●高校受験作文の解説集
●大学受験作文の解説集

●小1からの作文で親子の対話
●絵で見る言葉の森の勉強
●小学1年生の作文

●読書感想文の書き方
●作文教室 比較のための10の基準
●国語力読解力をつける作文の勉強法

●小1から始める楽しい作文――成績をよくするよりも頭をよくすることが勉強の基本
●中学受験国語対策
●父母の声(2)

●最も大事な子供時代の教育――どこに費用と時間をかけるか
●入試の作文・小論文対策
●父母の声(3)

●公立中高一貫校の作文合格対策
●電話通信だから密度濃い作文指導
●作文通信講座の比較―通学教室より続けやすい言葉の森の作文通信

●子や孫に教えられる作文講師資格
●作文教室、比較のための7つの基準
●国語力は低学年の勉強法で決まる

●言葉の森の作文で全教科の学力も
●帰国子女の日本語学習は作文から
●いろいろな質問に答えて

●大切なのは国語力 小学1年生からスタートできる作文と国語の通信教育
●作文教室言葉の森の批評記事を読んで
●父母の声

●言葉の森のオンライン教育関連記事
●作文の通信教育の教材比較 その1
●作文の勉強は毎週やることで力がつく

●国語力をつけるなら読解と作文の学習で
●中高一貫校の作文試験に対応
●作文の通信教育の教材比較 その2

●200字作文の受験作文対策
●受験作文コースの保護者アンケート
●森リンで10人中9人が作文力アップ

●コロナ休校対応 午前中クラス
●国語読解クラスの無料体験学習