●動画:https://youtu.be/6VKpHfCY38o
日本の教育問題を語る人は多いのですが、それらの人々の共通の弱点は、これまで自分が受けてきた教育の延長で改善点を考えていることです。
だから、よい教師を採用するとか、よい教材を利用するとか、あるいはこれまで無意味に受け継がれてきた宿題の強制やテストによる競争をやめるとか、そういう提案が出てくるのです。
それらの提案は、いずれも正しいものです。
しかし、そこで改善されるのは、その学校だけとか、その地域だけとか、又は、そこの教育長や校長のリーダーシップがあるところだけとかいうことになってしまうのです。
では、どうしたらいいかというと、根本的な解決策は、江戸時代の寺子屋のように、少人数の生徒を、それぞれの生徒の全体像が把握できる範囲で、固定した先生が見ることなのです。
勉強の基本は簡単です。
先生があれこれ教えることは最小限で構いません。
充実した教材があれば、生徒は自学自習で勉強を進めていけます。
先生は、その生徒の勉強の進め方をアドバイスし、躓(つまず)いたところだけを見てあげればいいのです。
しかし、この少人数の生徒指導という授業の仕方は、今の通学式の学校や塾ではまずできません。
たまたま少人数の授業になることはあるかもしれませんが、システムとして少人数を維持することはできないのです。
しかも、その少人数の生徒は、同じぐらいのレベルである必要があります。
通学式の教室で、同レベルの少人数の生徒を集めるシステムはどこにもありません。
だから、新しい教育は、全国ネットのオンライン教育である必要があるのです。
オンライン教育の欠点は、リアルな交流ができないことだと言われていますが、その問題は既に解決されています。
4~5人の少人数のオンライン学習では、通学式の教室よりもはるかにリアルな生徒どうしの交流があります。
また、場合によっては、年に何回かの遠足や合宿によって、いくらでも実際の交流の機会を作ることができます。
大事なことは、学習という教育の基本のところで、充実した授業ができることなのです。
言葉の森のオンラインクラスの中には、作文がよく書ける子だけが同じ学年で集まったクラスがあります。
作文以外にも、国語や算数数学や英語やプログラミングや創造発表で、よくできる子が自然に集まったクラスがあります。
こういうクラスでは、自然に授業の中での切磋琢磨が生まれます。
逆に、作文を書くことが苦手な子だけが集まるクラスも、理屈の上では可能です。
こういうクラスでは、その苦手さに応じた充実した授業ができます。
しかし、苦手な子だけのクラスというのは、まだありません。
いずれ、そういうクラスもできるようになると思います。
つまり、オンラインクラスでは、同レベルの少人数の生徒が4~5人で交流しながら学ぶ仕組みができるのです。
これが、システムの力です。
よい先生、よい教材、よいリーダーは、こういうシステムの上でこそ、本当の力を発揮することができます。
日本の教育界は、遅れているので、ここで述べたような改革はまずできないと思います。
だから、言葉の森が、新しい教育の先鞭をつけていこうと思っています。
そのために、今後、保護者との個別連絡や、クラスごとの発表室連絡などを生かして、多くの方の意見を集め、よりよい教育を作っていきたいと思います。
●動画:https://youtu.be/vZ6zE0lDjyw
保護者から、時々「うちの子は発達障害で……」と言われることがあります。
これまで、そういう子の作文指導をしてきて感じることは、発達障害という診断は全く気にする必要がないということです。
子供たちは、もともとやんちゃで、個性があり、一律の集団生活になじめないことが多いものです。
それは、子供の普通の成長の姿です。
学校で集団一斉指導をしているとき、その一斉行動に合わないことをする子を、先生が別の枠に入れたいというだけのことではないかと思います。
むしろ、私は、発達障害と簡単に診断すること自体の方に問題があると思います。
集団の一斉行動に合わない子をどうしたらいいかということは、発達障害という診断とはまた別のことです。
その方法は、3つあると思います。
第一は、気にしないことです。
年齢の成長とともに、人間は、周囲の状況と自然に合わせるようになっていくからです。
第二は、他人との接触や親子の対話の機会を増やすことです。
集団生活で問題があるように思われる子の中に、人の話を聞かないとか、人の話に対応した行動や言動をとらないとか、自分の言いたいことやしたいことだけをするという子がいます。
子供はもともとそういうものなので、それ自体は問題はないのですが、周囲と協調するためには、相手の意向に対応した行動をとる必要があります。
その練習のいちばんの方法が、他人と接することです。
昔は、子供たちは、戸外で一緒に遊ぶことが多かったので、その中で、他人とのいろいろな摩擦を経験し、自然に集団行動になじんできました。
今は、子供はひとりで遊ぶ機会も多いので、他人とのわずらわしい関わりを経験する機会が少なくなっています。
自然の遊びの代わりに、集団で行動するスポーツなどに参加するという方法があります。
ただ、問題は、今の日本の子供スポーツは、勝ち負けにこだわることが多いとことです。
勝ち負け自体は悪いことではないので、大事なのは、指導者の姿勢だと思います。
親子で対話をする場合、親が子供の意向を汲み取って話をすることが多いので、子供は他人との関わりに伴う摩擦を経験する機会がありません。
だから、親子が友達どうしのように話す機会を増やすといいのです。
その方法のひとつが、親子が協力して理科実験などの共同研究をすることです。
私は、その機会として、創造発表クラスを利用することもいいと思っています。
そのほかに、親子でゲームをしたり、親子でキャンプに出かけたりするのもいいと思います。
そのゲームやキャンプに、ほかの家族にも呼びかけて、複数の子が参加するようになれば、更にいい経験ができると思います。
第三の、集団行動になじむための方法は、言葉の力をつけることです。
そのための手段は、対話と読み聞かせと読書です。
私は、これがいちばん大事だと思います。
問題行動を起こしがちな子の中に、言葉のやりとりが苦手という子がよくいます。
言葉を通して状況を理解し、言葉を通して自分の行動を方向づけるということができないので、たとえは悪いですが動物的な行動をとってしまうことがあるのです。
子供の頭に言葉を入れるというのは、口で言うほど簡単なことではありません。
日常のいろいろな機会を通して気長に言葉を入れ続ける必要があります。
毎日、読み聞かせや読書を続けて、子供に変化が見られるようになるのは、半年ぐらいかかると思います。
ダイヤモンドonlineに、関連する記事があったので紹介します。
「発達障害の子どもが「13年で10倍に急増」の裏事情、ベテラン小児科医が解説」
https://diamond.jp/articles/-/319170