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中学生、高校生の暗唱のコツ as/744.html
森川林 2010/01/20 21:48 


 中学生、高校生の暗唱は難しいと思います。一つの理由は、中学生のころからちょうど単純記憶から理屈で理解する記憶に移り変わる時期になるからです。しかし、それよりも大きなもう一つの理由は、暗唱する文章が説明文だということにあります。説明文のために、文章の流れがつかめないというのが、中学生、高校生の暗唱が難しい大きな原因になっています。

 事実文は、自然に暗唱の順序が頭に入ります。例えば、こういう文章です。

「あるところに、おじいさんとおばあさんがいました。おじいさんは山へ柴刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。すると、川上から大きな桃が……」

 このような事実中心の文章は、内容がすべて時系列の映像になるので、順序を間違えることはまずありません。

 ところが、説明文は違います。例えば、次のような文章です。

「わずか一粒の種から一万個以上もの実をつけたトマトの巨木がある。遺伝子組み換えなどの新しい技術により、このようなトマトができたのかと想像されるかもしれないが、そうではない。このトマトは、一本の根幹から何千もの枝が分かれて、トマトの実を結ぶ。」

 このような説明中心の文章は、それぞれの文の前後が入れ替わっても意味が通じます。文の前後に厳密な必然性がないのです。

 しかしこういう説明的な文章でも、歌の歌詞としてならば比較的容易に覚えることができます。それは、文の流れを音の流れとして把握できるからです。

 このため、暗唱は、黙って覚えようとするのではなく声に出して自分の耳で聴いて覚えるということが大事です。説明文であっても、何度も反復して音声を聞いていると、自然に覚えることができるようになるのです。

 説明文の暗唱を早くできるようにするもう一つのコツは、出だしの言葉をイメージ化して覚えておくことです。

 まず、体の一部に順番をつけます。「1番=頭、2番=おでこ、3番=左目……」といった具合です。または、自分が家から学校に行くときの道順でも構いません。「1番=玄関、2番=信号、3番=コンビニ……」という感じです。

 あるいは、順番のすでに決まっているものに結びつけることもできます。言葉の森の課題の名前は、植物名のアイウエオ順になっているので、それに結びつけることもできます。

 「アカシア、イバラ、ウツギ、エニシダ、オリーブ、カキ、キンモクセイ、クリ、ケヤキ、コブシ、サツキ、シオン、ススキ、セリ、ソテツ、タラ、チカラシバ、ツゲ、テイカカズラ、トチ、ナツメ、ニシキギ、ヌルデ、ネコヤナギ、ノギク、ハギ、ヒイラギ、フジ、ヘチマ、ホオ、マキ、ミズキ、ムベ、メギ、モモ、ヤマブキ、ビワ、ユーカリ、ベニバナ、ヨモギ、ライラック、リンゴ、ルピナス、レンギョウ、ローレル、ワタスゲ、ピラカンサ、プラタナス、ペンペングサ、ポプラ、ガジュマロ、ギンナン、グミ、ゲンゲ、ゴムノキ、ザクロ、ジンチョウゲ、ズミ、ゼニゴケ、ゾウゲヤシ」

 言葉の森の広場の名前は動物名になっています。

 「アカトンボ、イワツバメ、ウズラ、エミュー、オオムラサキ、ガチョウ、カッコウ、キビタキ、ギンヤンマ、クサヒバリ、グンカンドリ、ケイマフリ、ゲンゴロウ、コオロギ、ゴリラ、サイチョウ、ザリガニ、シジュウカラ、ジラフ、ズグロカモメ、スズムシ、セセリチョウ、ゼブラ、ゾウガメ、ソウシチョウ、タマムシ、チドリ、ツグミ、テントウムシ、トキ、ナイチンゲール、ニイニイゼミ、ヌートリア、ネオンテトラ、ノビタキ、ハナムグリ、ヒグラシ、フラミンゴ、ヘラジカ、ホタル、マツムシ、ミツバチ、ムクドリ、メジロ、モンシロチョウ、ヤマバト、ビーバー、ユリカモメ、ベニシジミ、ヨシキリ、ライチョウ、リス、ルリタテハ、レミング、ロバ、ワタオウサギ、ピパ、プレーリードッグ、ペリカン、ポインター」

(や行は「やびゆべよ」、わ行は「わぴぷぺぽ」としています)

 順番をつけたら、文の出だしをその順番にイメージ的に結びつけます。先ほどの「わずか一粒の……」の文章を体に結びつける例で言うと、「輪(「わずか一粒」の「わ」)が頭につきささった」「イノシシ(「遺伝子」の「い」)がおでこにぶつかってきた」「木の実(「このトマトは」の「この」)が左目に入ってきた」などと、イメージ化した言葉を体の一部に結びつけると、出だしの部分をすぐに覚えることができます。

 出だしの部分さえわかれば、あとの文は音の流れとして覚えているので自然に口から出てきます。これが説明文の暗唱のコツです。

 暗唱のように一見敷居が高そうに見える勉強は、このような方法で「簡単にできた!」という感覚をつかむことが大事です。簡単にできるようになると、おもしろさが分かってきてさらに続けてみようという気になります。(ただし、小学生の事実文はこのような工夫はあまり必要ありません。事実中心の文章はただ音読を繰り返すだけでも覚えることができるからです)

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暗唱(121) 

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暗唱をしていると作文がよく書けるようになる as/743.html
森川林 2010/01/19 19:43 
 暗唱にどういう効果があるのでしょうか。

 暗唱していると、発想が豊かになるという実感があります。書こうとすることに関していろいろな言葉が浮かんでくるので、文章がどんどん書けるようになるのです。

 読書にも同じような効果があります。なかなか書けないとか、書くことがないという人がときどきいますが、そういう人に共通するのは、あまり本を読んでいないということです。普段本をよく読んでいる人でも、たまたまある期間本を読まないと、その間は文章を書きにくくなるようです。

 字数と作文の実力との間には相関があり、長く書ける子は、書くことが苦にならず次々に書くことが浮かんでくるという傾向があります。もちろん例外はあり、短くても密度の濃い作文を書く子もいます。しかし、全体の傾向としてみると、字数と実力には深い関係があります。

 なぜ暗唱をすると文章を書きやすくなるのかという理屈はまだわかっていませんが、暗唱によって、言葉が持っている意味の手足が活性化するので、次々に言葉がわいてくるという状態になるのだと思います。

 実際にそういうことがあるということを、言葉の森の生徒の調査で調べてみました。それが下にあるグラフです。

 12月1週から新しい暗唱法で暗唱の自習を始めました。この暗唱はオプションなので、暗唱をする人も暗唱をしない人もいました。しない人は、受験などで多忙だったり、暗唱の時間が取れなかったりした人です。

 暗唱の自習オプションを選択した人は、12月4週までに900字を暗唱できるようにすることを目標にしました。約920名の生徒のうち3分の1の290名が暗唱の自習を選択し、暗唱を選択した人の2分の1の130名が900字の暗唱をほぼ完璧に言うことができました。グラフの中で、暗唱をした人となっているのは、この900字の暗唱ができた人です。

【暗唱の練習と作文の字数の関係】



 12月1週12月2週12月3週1月1週
暗唱をした生徒の作文平均字数842字768字759字872字
暗唱をしなかった生徒の作文平均字数829字689字675字735字
字数の差12字80字84字136字


■グラフの説明

・11月4週から暗唱を始めました。
・12月1週は作文の進級テストなので、どの生徒もたくさんの字数を書きました。
・12月2週はテストが終わってほっとしたので、字数が少なくなりました。
・12月3週は感想文の課題で難しいため、字数が少なくなりました。
・12月4週は清書なので集計していません。
・1月1週は新学期の最初の課題で新鮮なので、どの生徒もたくさん書きました。
・12月1週は、字数の差がほとんどありませんでした。
・しかし、その後はどの週も、暗唱をした生徒の方が字数が多くなりました。
・ただし、これは暗唱の自習をしている期間、子供が作文の勉強に対して特に意欲的になったということもあると思います。
・まだ期間が短いので確定的なことは言えませんが、暗唱をしていると作文がよく書けるようになるという傾向はあるようです。

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