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ひとこと(8月4週)
ひとりはみんなのために
アジサイの広場
ペー吉うき中2
 吉川はサッカー部のエースだった。秋の都大会では惜しい所で準優勝に甘ん
じたが、三年の夏の都大会は優勝を目指していた。そんな最中、ウィングの宗
介をはじめとする三年生のレギュラーが受験勉強を理由に部活を辞めていった
。吉川は、宗介に一度だけ愚痴をこぼした。吉川は、高校にサッカーの特待生
で入ることを夢見ていたのだ。
 
  吉川の気持ちは、私は分かる。もう一頑張りでどうにかなるのに、チーム
メイトがやろうとしない。相手には相手の事情があると、割り切れる人間は少
ないのではないか。あと一歩なのに。何故。もう少しじゃないか。そう思って
も、相手は行ってしまう。私も、学校の合唱コンクールの練習のとき、男子の
中では私と数名だけが声を出して歌い、残りの男子はサボるか歌わないかだっ
た。私が声をかけても、「塾があるから」などと言って残ってくれない。あと
一息なのに、その一息を入れてくれない寂しいチームワーク。結局、合唱では
7クラス中5位だった。
 
  かなり有名な「桃太郎」という昔話がある。「桃太郎」の中では、桃太郎
と犬と猿と雉が、チームワークを見せる。最後の一線を退かない勇気がある。
団子一つで命をかけるというのもどうかと思うが、それは関係ないので触れな
いでおこう。彼らは、「もう少し、あと一歩」ができる人間(人間ではないが
)だった。確実なチームワークがあればこそ、圧倒的に強い鬼を仕留めること
ができたのだ。
 
  「獅子は一羽の兎を仕留めるにも全力を尽くす」という諺がある。私たち
は獅子ではないのに、獅子になったような錯覚を覚える。けれど、獅子ではな
い私たちは、相手が手の届く目標と見るや、「少しくらい平気だろう」という
、若い人間にありがちな、余裕を装った油断を始める。最後まで全力は出さね
ばならない。途中が切れる全力ならば、それは全力ではありえないのだから。
「自分一人なら」「まあ、このくらいなら」その思考で、チームは崩れていく
ものである。中学生・高校生は、そういった思考が激しい。そんな時は、小学
校のときに習った言葉を、思い出す。「ひとりはみんなのために、みんなはひ
とりのために」。人間関係の基礎だからこそ、小学校で習ったのだろう。この
言葉を、私たちは大事にするべきだ。